この結果、両大会の招致を目指してきた札幌市が選ばれる可能性はなくなりました。
IOCは29日、パリで理事会を開き、今後のオリンピック・パラリンピックの候補地や来年夏のパリ大会の準備状況などについて話し合いました。
このなかで、10月開かれたインドでの総会で、2大会同時に決定する案が承認された2030年と2034年の冬の大会の候補地について、2030年はフランスのアルプス地域に、2034年はアメリカのソルトレークシティーにそれぞれ一本化することを決めました。
また、2038年冬の大会については、スイスと優先的に対話を進めるということです。
2030年と2034年の開催地は、来年夏のパリ大会にあわせて開かれる総会で正式に決定される見通しです。
両大会の招致を目指してきた札幌市は、おととし夏の東京大会の汚職・談合事件の影響などで市民の理解が広がらず、
将来開催地委員会のカール・シュトス委員長は「大会のローテーションの原則から言えば2038年以降に開催地はまたアジアに戻る。日本がより明確に、より深くIOCとの対話に臨む準備ができたときには扉は再び開かれるだろう」と述べました。
しかし、札幌市やJOC=日本オリンピック委員会が招致活動を続けるには、東京大会の教訓を生かした運営の透明性の確保や、巨額の開催費用への対策といったことが求められ、札幌市などの対応が問われることになります。
◆2030年 フランスのアルプス地域とは◆
フランスで2030年大会の招致を目指しているのは、東部のオーベルニュ・ローヌ・アルプと南東部のプロバンス・アルプ・コートダジュールのともにアルプスの地域圏で、アルプス山脈の最高峰モンブランのふもとに位置する県を擁することから、ヨーロッパでも有数のスキーリゾート地が数多くあります。
このうち、オーベルニュ・ローヌ・アルプ地域圏では、過去に3回、冬のオリンピックが開催されていて、今回の招致計画では2つの競技拠点が設けられ、アルペンスキーやクロスカントリースキーなどの競技が行われる予定です。
また、プロバンス・アルプ・コートダジュール地域圏はアルプスに面する県がある一方、南側は地中海に面していて、ラグビーやサッカーが盛んな地域としても知られます。計画ではこちらにも2つの競技拠点が設けられ、ニースではフィギュアスケートやカーリングなどが実施されて選手村も設けられる予定です。
フランスアルプスでは、温暖化の影響で雪資源や氷河の減少が進み、比較的標高の低い場所にあるスキー場が相次いで閉鎖されるなど深刻な問題となっていて、招致計画のビジョンには「地球温暖化の課題を考慮し、山岳地域とスポーツの避けることのできない革新を加速させる持続可能な大会」と環境問題への配慮が掲げられています。
フランスでは、夏は1900年と1924年のパリ大会を開催しているほか、来年には3回目となるパリ大会を予定しています。
冬は、1924年に最初の冬のオリンピックとして開催されたシャモニー大会、1968年のグルノーブル大会、1992年のアルベービル大会の3回開催されています。
◆2034年 アメリカのソルトレークシティーとは◆
アメリカのソルトレークシティーはロッキー山脈の西側に位置する内陸のユタ州の州都です。鉱業や農業が盛んで、海抜1300メートルを超える高地にあり、冬場はアメリカでも人気のスキーリゾートとして賑わいます。
2002年の冬のオリンピック・パラリンピックの開催地であることから、招致活動では大会運営の実績とともに、既存の施設を活用した低コストな大会を前面に押し出してきました。また、地元メディアが行った世論調査でオリンピック開催に対する住民の支持がおよそ80%に上るなど、機運の醸成が進んでいることも追い風となっていました。
一方で、アメリカ国内では2028年に夏の大会がロサンゼルスで開かれることからアメリカのオリンピック・パラリンピック委員会は「スポンサー集めや商業活動が複雑になる」として2030年大会だけでなく34年大会の開催も視野に入れて招致活動を進めてきました。
アメリカでは、夏は1904年のセントルイス大会、1932年と1984年のロサンゼルス大会、1996年のアトランタ大会を開催しているほか、2028年には3回目のロサンゼルス大会を控えています。
冬は、1932年と1980年のレークプラシッド大会、1960年のスコーバレー大会、2002年のソルトレークシティー大会をそれぞれ開催しています。