核兵器の開発や保有、使用などを禁じる核兵器禁止条約の第2回の締約国会議は、先月27日からニューヨークの国連本部で開かれ、最終日の1日、政治宣言が採択されると、会場からは大きな拍手が沸き起こりました。
政治宣言では「核兵器の近代化や世界情勢の緊張の高まりで、核のリスクはいっそう悪化している」としたうえで、ロシアによる核の威嚇などを念頭に「核による威嚇は、国際法に違反し世界の平和と安全を損なうだけだ」と非難しています。
さらに、核抑止に頼る国も増えていると指摘し「核抑止論の正当化は核の拡散のリスクを危険なほど高めている」として、各国にそうした政策を放棄し、核兵器禁止条約に加わるよう呼びかけています。
そして「人類にとって危険な転換点で、世界が核の破局に近づく兆候を見過ごすことはできない。現在と未来の世代のために、核なき世界の実現に向けたゆまぬ努力を続ける」としています。
今回の会議には条約に参加する59の国と地域のほかに、オブザーバーとして35か国が参加し、アメリカの核の傘のもとにあるNATO=北大西洋条約機構の加盟国のドイツやベルギーなどもオブザーバーとして議論に加わりましたが、日本政府は参加しませんでした。
一方で、前回と同様、広島や長崎の被爆者が発言し、改めて自身の体験に基づいて核兵器の非人道性を訴えました。
次の締約国会議は、2025年3月に開かれる予定で、核のリスクが高まる中でも条約の締約国やオブザーバー参加国を増やしながら、核軍縮に向けた機運を高めていくことができるのかが焦点です。
中満国連事務次長「安全保障環境の危機感のあらわれ」
今回の締約国会議について、国連の軍縮部門トップを務める中満 事務次長はNHKとのインタビューで「核の使用や核による威嚇は絶対に許してはならないという強力な規範、メッセージを発信している。これは現在の安全保障環境の危機感のあらわれで、核兵器禁止条約が果たしている注目すべき役割のひとつだ」と強調しました。
また、核抑止力に頼るべきだという意見が増えていることについて「あたかも核兵器こそが究極の安全保障をもたらすものであるというような、非常に危険な言説が広がっていくことに対する危機感が、締約国にしっかりと共有されている。これは現在のような危機的な状況の中では極めて重要だ」と評価しました。
さらに、30か国以上がオブザーバーとして参加したことを歓迎し、中でもアメリカの核の傘のもとにあるNATO加盟国の一部が、今回も締約国との対話を行うために参加した点は重要だと指摘しました。
そして、今後について「各地で戦争が起き、リスクの高い安全保障環境の中で、核兵器は人類の存亡にも関わりかねないリスクを抱えた兵器だということを改めて認識しなければならない。これを廃絶していくことは国際社会の共通の目標だ。あらゆるツールを使いながら核軍縮の方向に向けてかじを切り直すため、国連としてさらに声を高くメッセージを発信し、さまざまな国や市民社会と協調しながら努力していきたい」と述べました。
サーロー節子さん「暗黒の時代に私たちを導く光」
半世紀以上にわたって核兵器の廃絶を訴え続け、核兵器禁止条約の成立にも尽力した、カナダ在住の被爆者、サーロー節子さんがオンラインで会見し「この暗黒の時代において、核兵器禁止条約は私たちを導く光だ。条約を強化し本当に機能させるために、私たちはできる限りのことをしなければならない」と述べました。
一方、記者団が核抑止論について尋ねると「核抑止が正しいとはまったく思わない。核兵器が抑止力としてどう機能するというのか。私はことばを持っていないし、議論もしたくない」と強く批判しました。