イラク戦争開戦からあすで20年混乱続く民間人20万人が犠牲 - Easy News

アメリカが国連こくれん安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいの決議けつぎを得えずにイラクへの武力ぶりょく行使こうしに踏み切ふみきった、イラク戦争せんそうの開戦かいせんから、20日にちで20年ねんとなります。

イラクでは、その後そのごも混乱こんらんが続つづき、この20年ねんでおよそ20万まん人にんの民間みんかん人じんが犠牲ぎせいになっていて、国くにの安定あんていをどう図はかっていくかが依然いぜんとして大おおきな課題かだいとなっています。

イラク戦争せんそうは、2003年ねん3月つき20日にち、アメリカ軍ぐんによる首都しゅとバグダッドへの空爆くうばくで始はじまり、独裁どくさい的てきだったフセイン政権せいけんは3週間しゅうかんで崩壊ほうかいしました。

アメリカは、国連こくれん安保理あんぽりの決議けつぎを得えないまま一方いっぽう的てきに武力ぶりょく行使こうしに踏み切ふみきりましたが、開戦かいせんの大義たいぎに掲かかげた大量たいりょう破壊はかい兵器へいきはイラクに存在そんざいせず、アメリカの威信いしんは大おおきく傷きずつきました。

アメリカ軍ぐんは2011年ねんにイラクから撤退てったいしましたが、イスラム教いすらむきょうの宗派しゅうは間かんの対立たいりつなどを背景はいけいにイラク政府せいふの統治とうちは不安定ふあんていな状況じょうきょうが続つづき、過激かげき派は組織そしきIS＝イスラミックステートが台頭たいとうすると、2014年ねんに再ふたたび派遣はけんされ、おととし、戦闘せんとう任務にんむを終おえました。

イギリスの民間みんかん団体だんたいによりますと、一連いちれんの混乱こんらんによって、イラクではこの20年ねんでおよそ20万まん人にんの民間みんかん人じんが犠牲ぎせいとなりました。

また、イラクでは、隣国りんごくイランの影響えいきょう力りょくの拡大かくだいなどを背景はいけいに政治せいじの混乱こんらんが続つづいてきたほか、世界せかい有数ゆうすうの埋蔵まいぞう量りょうを誇ほこる石油せきゆなどのエネルギー分野ぶんやも施設しせつの整備せいびが遅おくれ、深刻しんこくな電力でんりょく不足ふそくなどへの人々ひとびとの不満ふまんも高たかまっています。

さらに、ISのテロや襲撃しゅうげきもいまだ散発さんぱつ的てきに起おきていて、国くにの安定あんていをどう図はかっていくかが依然いぜんとして大おおきな課題かだいとなっています。

米べい軍ぐんに銃撃じゅうげきされた少年しょうねんの親おや「アメリカこそがテロリスト」

イラク戦争せんそうでは、アメリカ軍ぐんの攻撃こうげきやその後そのごの治安ちあん維持いじの作戦さくせんで多おおくの民間みんかん人じんが巻き添まきぞえとなりました。

首都しゅとバグダッドに住すむフセイン・アリさん（25）は15年ねん前まえ、10歳さいの時ときに自転車じてんしゃに乗のって遊あそんでいたところ、アメリカ軍ぐんに後うしろから銃じゅうで撃うたれ、大だいけがを負おったといいます。

当時とうじ、フセインさんの住すんでいた地域ちいきは駐留ちゅうりゅうするアメリカ軍ぐんに抵抗ていこうする民兵みんぺい組織そしきの拠点きょてんとなっていたため、アメリカ軍ぐんなどが繰り返くりかえし掃討そうとう作戦さくせんを行おこなっていたということです。

フセインさんは一命いちめいはとりとめたものの、銃弾じゅうだんが背中せなかから腹部ふくぶを貫通かんつうし、4回かいにわたる手術しゅじゅつを受うけたうえ、その後そのご、ことばを発はっすることが難むずかしくなり、ふさぎこむようになったといいます。

父親ちちおやのアリさん（49）によりますと、銃撃じゅうげきされる前まえ、フセインさんは外そとでよく遊あそぶ活発かっぱつな子こでしたが、その後そのごは家いえにこもるだけの生活せいかつとなり、仕事しごとを見みつけることも友達ともだちをつくることもできなくなったということです。

フセインさんは「外そとに出でてもすぐ疲つかれてしまうから毎日まいにちずっと家いえにいる。私わたしの唯一ゆいいつの友ともだちは大好だいすきな父親ちちおやだけです」と話はなしていました。

父親ちちおやのアリさんはイラク政府せいふに対にたいして補償ほしょうを求もとめていますが、申し出もうしで期間きかんが過すぎているなどを理由りゆうに公的こうてきな支援しえんは一切いっさい受け取うけとることができていないということです。

アリさんは「息子むすこは人生じんせいを奪うばわれた。なぜ、10歳さいの子こどもが撃うたれなければならなかったのか。アメリカこそがテロリストだ。彼かれらはイラクを破壊はかいし、私わたしたち家族かぞくのささやかな幸しあわせすら奪うばっていった」などと訴うったえていました。

イラクの現状げんじょう市民しみん生活せいかつの改善かいぜんは進すすまず

イラクは世界せかい有数ゆうすうの石油せきゆの埋蔵まいぞう量りょうを誇ほこりますが、イラク戦争せんそうとその後そのごの混乱こんらんで市民しみん生活せいかつの改善かいぜんは進すすんでいないのが現状げんじょうです。

アメリカのエネルギー情報じょうほう局きょくによりますと、おととしのイラクの一いち日にち当あたりの石油せきゆ生産せいさん量りょうは、世界せかい第だい6位いで400万まんバレル余あまりに上のぼり、経済けいざい的てきな潜在せんざい能力のうりょくは高たかいとされています。

おととしには、フセイン政権せいけんが1990年ねんに侵攻しんこうしたクウェートに対にたいする524億おくドルの賠償ばいしょう金きんの支払しはらいを終おえ、およそ30年ねんにわたって続つづいてきた経済けいざい成長せいちょうの足あしかせを取り除とりのぞくこともできました。

世界せかい銀行ぎんこうによりますと、去年きょねんは原油げんゆ価格かかくの高騰こうとうなどを背景はいけいに、GDP＝国内こくない総そう生産せいさんの伸のび率りつは8.7％と高たかい成長せいちょう率りつを記録きろくしています。

実際じっさい、首都しゅとバグダッドでは高層こうそうビルの建設けんせつが進すすんでいて、海外かいがいの有名ブランドゆうめいぶらんどや飲食いんしょく店てんなどが入はいる巨大きょだいなショッピングモールも誕生たんじょうし、経済けいざい成長せいちょうの一端いったんもみてとれます。

一方いっぽうで、政治せいじや治安ちあんの混乱こんらんによりインフラの整備せいびは進すすんでおらず、深刻しんこくな電力でんりょく不足ふそくが続つづいているほか、失業しつぎょう率りつは16％を超こえるなど、経済けいざい成長せいちょうの恩恵おんけいは一部いちぶにとどまっていて、多おおくの市民しみんは厳きびしい生活せいかつを続つづけています。

50代だいの男性だんせいは「アメリカ侵攻しんこう当初とうしょは、独裁どくさい政権せいけんを倒たおしていい時代じだいになるという希望きぼうがあった。しかし、戦争せんそうはアメリカの利益りえきのために行おこなわれたもので、イラクのためではなく、この20年間ねんかんで生活せいかつは悪化あっかし続つづけている」と話はなしていました。

また、40代だいの女性じょせいは「アメリカ軍ぐんの侵攻しんこうに子こどもたちがひどくおびえていたのを覚おぼえている。アメリカはインフラを破壊はかいし、今いまも電気でんきすら満足まんぞくに使つかえない。彼かれらがイラクにもたらしたのは破壊はかいでしかない」と話はなしていました。

日本にっぽん政府せいふ南部なんぶのサマーワを支援しえんも残のこる課題かだい

イラクの首都しゅとバグダッドから南みなみに200キロ余あまり離はなれた南部なんぶのサマーワには、2004年ねんから2年ねん半はんにわたって陸上りくじょう自衛隊じえいたいからあわせて5500人にんの隊員たいいんが派遣はけんされ、給水きゅうすい活動かつどうのほか、学校がっこうや道路どうろの補修ほしゅうなどの復興ふっこう支援しえんを行おこないました。

また、日本にっぽん政府せいふは、地元じもとの12万まん人にんの電力でんりょくを賄まかなうことができる火力かりょく発電はつでん所しょを建設けんせつし、2008年ねんにイラク側がわに引き渡ひきわたしました。

しかし、治安ちあんの悪化あっかや経済けいざいも混乱こんらんする中なか、修理しゅうりのための部品ぶひんが調達ちょうたつできず、4年ねん余あまりで発電はつでんを停止ていししました。

サマーワのあるムサンナ県けんでは別べつの発電はつでん所しょも稼働かどうしていますが、電力でんりょく需要じゅようが高たかまる夏場なつばは今いまも深刻しんこくな電力でんりょく不足ふそくが続つづいているということです。

発電はつでん所しょでは去年きょねんから復旧ふっきゅう作業さぎょうを本格ほんかく化かさせていて、数すうか月かげつ以内いないの稼働かどう再開さいかいを目指めざしているということです。

発電はつでん所しょの所長しょちょうは「とにかく資金しきんが必要ひつようです。支援しえんしてくれた日本にっぽんには感謝かんしゃしているし、使つかえなくなっていて申し訳もうしわけなくも思おもっている。早はやく修復しゅうふくを終おえたい」と話はなしていました。

一方いっぽう、日本にっぽんが修復しゅうふくなどを手てがけた水道すいどうの浄水じょうすい施設しせつは今いまも稼働かどうを続つづけているほか、JICA＝国際こくさい協力きょうりょく機構きこうは新あたらしい浄水じょうすい施設しせつの建設けんせつを円えん借款しゃっかんで支援しえんする計画けいかくを進すすめるなど引き続ひきつづきサマーワでの支援しえんを続つづけています。

JICAイラク事務所じむしょの米田よねだ元もと所長しょちょうは「日本にっぽんの協力きょうりょくによって状況じょうきょうが変かわっているというところを理解りかいしていただけるとありがたい。公共こうきょうサービスをしっかりとさせていくことによって国くにの安定あんてい化か、ひいては地域ちいきの安定あんてい化かにつながっていけばと思おもう」と話はなしています。

サマーワのあるムサンナ県けんの地元じもと当局とうきょくによりますと、人口じんこう90万まんのうち半数はんすう以上いじょうの50万まん人にんが貧困ひんこん状態じょうたいにあるということで、生活せいかつの改善かいぜんが引き続ひきつづき課題かだいとなっています。

サマーワの26歳さいの男性だんせいは「日本にっぽんはイラクに対にたいしてたくさんのことをしてくれました。今いままで日本にっぽんがイラクにしてくれたことは、目めで見みることができ、感謝かんしゃしています」と話はなしていました。

一方いっぽう、77歳さいの男性だんせいは「日本にっぽんが来きて会社かいしゃをつくるなど何なにかをしてほしい。日本にっぽんは支援しえんをしてくれたかもしれないが、私わたしたちは飢うえています。日本にっぽんが何なにかプロジェクトを提供ていきょうしてくれることを望のぞみます」と訴うったえていました。

イラク戦争せんそうとは米べいブッシュ政権せいけんが武力ぶりょく行使こうし

イラク戦争せんそうは、2003年ねん3月つき20日にち、アメリカ軍ぐんによる首都しゅとバグダッドへの空爆くうばくで始はじまりました。

アメリカのブッシュ政権せいけんは、イラクのフセイン政権せいけんが大量たいりょう破壊はかい兵器へいきを保有ほゆうしているとして、国連こくれん安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいの決議けつぎを得えないまま一部いちぶの同盟どうめい国こくとともにイラクへの武力ぶりょく行使こうしに踏み切ふみきりました。

そして、圧倒的あっとうてきな軍事ぐんじ力りょくによってわずか3週間しゅうかんで首都しゅとバグダッドを制圧せいあつし、フセイン政権せいけんを崩壊ほうかいさせましたが、戦争せんそうの大義たいぎとされた大量たいりょう破壊はかい兵器へいきは見みつかりませんでした。

一方いっぽう、アメリカの武力ぶりょく行使こうしを支持しじした日本にっぽんは、南部なんぶのサマーワに2年ねん半はんにわたって陸上りくじょう自衛隊じえいたいのあわせて5500人にんの隊員たいいんを派遣はけんし、復興ふっこう支援しえんにあたりました。

しかし、アメリカの占領せんりょうに反発はんぱつする旧きゅうフセイン政権せいけんの支持しじ者しゃや国際こくさいテロ組織そしきアルカイダ系けいの武装ぶそう勢力せいりょくなどが活動かつどうを活発かっぱつ化かさせて、爆弾ばくだんテロや襲撃しゅうげき事件じけんが相次あいつぎます。

復興ふっこう支援しえんにあたっていた国連こくれん施設しせつも爆破ばくはされ、国連こくれんの代表だいひょうらが犠牲ぎせいになったほか、日本にっぽんの外交がいこう官かんや民間みんかん人じんが殺害さつがいされる事件じけんも起おきました。

アメリカの占領せんりょう統治とうちをへて、2005年ねんには正式せいしきな政府せいふを選えらぶ初はじめての議会ぎかい選挙せんきょが行おこなわれ、旧きゅう政権せいけん下かで抑圧よくあつされてきた多数たすう派はのイスラム教いすらむきょうシーア派はの勢力せいりょくが圧勝あっしょうし、シーア派は主体しゅたいの政権せいけんが誕生たんじょうしました。