記事内では帰省や旅行する人も多い年末年始の対策についても、お伝えしています。
患者数 前の週の2倍以上
国立感染症研究所などによりますと12月22日までの1週間に全国およそ5000か所の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は21万1049人で、前の週の2倍以上となりました。
1医療機関あたりでは42.66人と前の週より23.6人増えて、この時期としては過去10年で最も多くなっています。
1医療機関あたりの患者数を都道府県別にみますと
▽大分県が最も多く82.64人
▽鹿児島県が65.57人
▽佐賀県が61.62人
▽千葉県が60.03人
▽福岡県が59.86人
▽愛知県が56.79人
▽山梨県が55.63人 など
36の都道府県で「警報レベル」の30人を超えました。
また、すべての都道府県で前の週から増加しています。
データをもとに推計されるこの1週間の全国の患者数はおよそ167万4000人となり、9月2日以降の今シーズンの累積の患者数はおよそ335万2000人と推計されています。
日本感染症学会インフルエンザ委員会の委員長で倉敷中央病院の石田直副院長は「新型コロナが流行する前のインフルエンザの流行状況と似て、年明けにピークを迎えると考えられる。特にことしは患者数が増加するペースが非常に速い。年末年始の帰省や旅行で、さらに感染が広がりやすい状況になると考えられるので手洗いやマスクといった感染予防が大切だ」と話しています。
《年末年始 どう対策すれば? 専門家に聞く》
インフルエンザや新型コロナウイルスなどが流行する中、9連休となる人もいる年末年始を迎えようとしています。帰省や旅行する人も多い年末年始の対策について、感染症に詳しい東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅 教授に聞きました。
◇なぜインフルエンザの流行が拡大しているのか?
「いくつか理由はありますが、一番大きな理由は2020年からのシーズン以降、新型コロナウイルスの流行期にインフルエンザの大きな流行がなかったことだと思います。
手洗いやうがいなど新型コロナの対策をしていたことが、インフルエンザの対策にもつながって大きな流行がなかったことでインフルエンザの免疫がある人が少なくなっていると考えられます。
また、全国の感染者のおよそ4割が15歳未満であることから学校で感染し、それが親世代にも広がっているとみられます。
そもそも、冬は空気が乾燥することでウイルスが広がりやすくなる一方、のどや気管の粘膜の防御が弱まるので、こうしたさまざまな要因が重なって感染が広がっていると考えられます」
◇マイコプラズマ肺炎や新型コロナも流行が拡大
「マイコプラズマ肺炎も定期的に感染が広がる傾向にありますが、インフルエンザと同様に新型コロナの対策をしていたことで、ここ数年、感染が広がらず、免疫を持つ人が少なくなったことが要因だと考えられます。
新型コロナは冬と夏に大きな流行があります。
冬の場合は空気が乾燥していることや、年末年始に人の集まる機会が多いということ、あるいは、寒くなってくると暖房の効いた室内で過ごすことが多くなり、換気をあまりしなくなることが要因として考えられます」
◇年末年始の感染症対策は?
「まずは体調が悪ければ出かけることを控えることだと思います。
インフルエンザや新型コロナは高齢の方が感染すると重症化しやすいので、祖父母など高齢の方に会う機会には感染の拡大に気をつける必要があります。
具体的には出発前に体温の確認をするほか、熱が出ていなくてもせきやのどの痛みという症状がないか体調確認が必要だと思います。
そして、手洗いやうがい、消毒をこまめにする、人混みの中ではマスクを着用する、定期的に換気をする、十分な睡眠を取るといった
基本的な対策を徹底することも必要だと思います。
また、インフルエンザに関しては年末年始の対策にはやや遅いですが、1月以降も感染が続くことを考えてワクチンを接種することも有効だと思います」
◇帰省や旅行に行く前に準備しておくことは?
「年末年始は多くの医療機関が休みになることが予想されます。
自分が訪れる先で年末年始に診療している医療機関を確認しておくことが大切です。
また、すぐに医療機関を受診できないということもあるので、ある程度、常備薬を持って行きましょう。
例えば、解熱鎮痛薬であったり、あるいは市販のものでもよいのでせき止めやかぜ薬を常備しておくことが必要だと思います。
さらに『熱っぽいな』と思った時にすぐ対応できるように体温計を持って行くほか、特に持病がある方はふだんもらっている薬や治療内容を正確に医療機関に伝えるために「お薬手帳」を持参することも重要です。
健康保険証を持って行くことも忘れないでください。
マイナ保険証も一部の医療機関を除いて処方された薬の情報などの共有に一定の時間がかかりますが、持っている人は健康保険証などとあわせて持参してもいいと思います」
◇実際に帰省先・旅行先で発症したら?
「熱が出て水分もとれない脱水症状であるとか呼吸が苦しく、意識がもうろうとしているという時には、すぐに医療機関を受診した方がいいと思います。
一方で、熱はあるものの水分はしっかりとれているとか、ある程度自分で移動できるという時には常備薬があればそれを服用して1日ぐらい様子を見るということもよいかと思います。
インフルエンザの場合、熱が出てから1日ぐらいたった時の方が検査をした場合に精度が上がると言われているので症状の程度に応じて持っている薬で様子を見てみるということも選択肢の一つだと思います。
また、インフルエンザと新型コロナを同時に陽性か陰性か判別できる検査キットもあるので、それを使って自分で検査してみて、医療機関に指示を仰ぐのも有効だと思います」
◇子どもに症状が出たら?
「特に小さなお子さんは自分の症状を伝えられない時もあります。
例えば顔色が悪いとかぐったりしていて、いつもと様子が違う、水分や食事をなかなか口にできないという時は速やかに医療機関を受診した方がいいと思います。
また、夜中にお子さんが発熱したり、せきこんだりと症状が気になる場合は子ども医療電話相談『#8000』に電話すると専門の看護師や医師に相談することもできます。
相談ができる時間は都道府県によって異なります」
オンライン診療を受ける患者が急増
インフルエンザが流行する中、多くの医療機関が休診する年末年始を前にスマートフォンのアプリを使ってオンラインで診療を受ける患者が急増し、医師たちが対応に追われています。
オンライン診療のアプリを運営する東京・渋谷区の医療系IT会社によりますと、先週からインフルエンザなどの患者が増え今週は通常の2倍ほどの患者が受診を希望し、受け付けを停止せざるをえないことがあったといいます。
このアプリは、患者が症状や問診などを入力したあと、ビデオ通話機能を使って連携する医療機関の医師の診療を受ける仕組みです。
アプリでオンライン診療を行っている小児科の医師の風間尚子さんは、25日も診療に追われていました。
風間医師は「医療機関にアクセスしたが受診できないという人が増えていると感じます。インフルエンザの場合、高熱が長く続いたりと感染すると大人でもつらいですが、そういうときに医師がインフルエンザと診断することで使える薬があれば違うと思うので力になれればうれしいです」と話していました。
このアプリでは、処方された薬を患者が指定した薬局で受け取ることができるほか、地域によっては、薬の飲み方の指導をオンラインで受ければ薬の自宅への配送も行っているということです。
この会社では、年末年始も、医師の数を通常の2.5倍以上に増やして24時間オンライン診療を続けたいとしています。
アプリを運営する「コールドクター」の事業推進本部の田中亮さんは「24時間365日診療を受け付けているので夜中に熱が出ても安心して受けられると思います」と話していました。