シリア アサド政権せいけんが崩壊ほうかい “大統領だいとうりょうはロシアに亡命ぼうめい”

シリアでは11月つき下旬げじゅん以降いこう、反はん政府せいふ勢力せいりょくが一気いっきに攻勢こうせいを強つよめ、8日にち、大統領だいとうりょう宮殿きゅうでんを抑おさえるなどして首都しゅとダマスカスを制圧せいあつし、国営こくえいテレビで「独裁どくさい者しゃアサドを打倒だとうした」と発表はっぴょうし、親子おやこ2代だい、半はん世紀せいきあまりにおよんだアサド政権せいけんは崩壊ほうかいしました。

ロシア外務省がいむしょうの発表はっぴょうによりますと、アサド大統領だいとうりょうは辞任じにんすることを決きめ、平和へいわ的てきに政権せいけんを移譲いじょうするよう指示しじした上うえでシリア国外こくがいに去さったということです。

ロシア国営こくえいタス通信たすつうしんは8日にち、アサド大統領だいとうりょうが家族かぞくとともにロシアの首都しゅとモスクワに到着とうちゃくしたと伝つたえ、ロシア大統領だいとうりょう府ふの情報じょうほう筋すじの話はなしとして、政府せいふがアサド大統領だいとうりょうと家族かぞくの亡命ぼうめいを認みとめたとしています。

一方いっぽう、反はん政府せいふ勢力せいりょくはSNSでみずからの部隊ぶたいに向むけて「公共こうきょう施設しせつは正式せいしきに移譲いじょうされるまでは前ぜん首相しゅしょうの管理かんり下かにあり、接近せっきんすることを禁止きんしする」と命めいじたほか、国営こくえいテレビを通をつうじて国民こくみん融和ゆうわを訴うったえたということで混乱こんらんが起おきないよう腐心ふしんしている姿勢しせいも伺うかがえます。

ただ、反はん政府せいふ勢力せいりょくを主導しゅどうする「シリア解放かいほう機構きこう」が国連こくれんなどからテロ組織そしきに指定していされていることをめぐり懸念けねんの声こえもあがっていて、国連こくれんのシリア問題もんだい特使とくしは8日にち、「明あきらかに難むずかしい課題かだいとなっている」と述のべるなど、今後こんご、平和へいわ的てきに政権せいけんの移譲いじょうが行おこなわれ、国際こくさい社会しゃかいの承認しょうにんを得えられるかが当面とうめんの焦点しょうてんとなりそうです。

一方いっぽう、イスラエル軍ぐんのラジオ局きょくが伝つたえたところによりますと、イスラエル軍ぐんは8日にち、シリアの首都しゅとダマスカスなどで空爆くうばくを行おこないました。

崩壊ほうかいしたアサド政権せいけんが保有ほゆうしていた兵器へいきが反はん政府せいふ勢力せいりょくの手てに渡わたらないようにするためだとしています。

ロシアとアサド政権せいけん

ロシアは、シリア内戦ないせんで、反はん政府せいふ勢力せいりょくとの戦闘せんとうを続つづけてきたアサド政権せいけんを支援しえんしてきました。

その背景はいけいには、シリアがロシアにとって旧きゅうソビエト時代じだい以来いらいの友好国ゆうこうこくだということがあります。

シリアは戦車せんしゃや航空こうくう機きといったロシア製せい兵器へいきの大口おおぐちの輸出ゆしゅつ先さきです。また、シリアの地中海ちちゅうかい沿岸えんがんにあるタルトゥース海軍かいぐん基地きちと、北西ほくせい部ぶのフメイミム空軍くうぐん基地きちにはロシア軍ぐんが駐留ちゅうりゅうし、ロシアは中東ちゅうとうで影響えいきょう力りょくを及およぼしてきました。

反はん政府せいふ勢力せいりょくが攻勢こうせいを強つよめていた今月こんげつ2日にち、ロシア大統領だいとうりょう府ふのペスコフ報道ほうどう官かんは、記者きしゃ団だんに対にたいし「アサド大統領だいとうりょうを支援しえんし続つづける」と述のべたほか、ロシアのラブロフ外相がいしょうは7日にち、あらゆる手段しゅだんを講こうじて反はん政府せいふ勢力せいりょくに対抗たいこうしていく考かんがえを示しめしていました。

しかし、ロシアは、シリア情勢じょうせいが急速きゅうそくに進展しんてんするなか、アサド政権せいけんを支ささえきれず、アサド大統領だいとうりょうとその家族かぞくを亡命ぼうめいという形かたちでモスクワに受け入うけいれることになったとみられます。

一方いっぽう、ロシア国営こくえいタス通信たすつうしんはプーチン政権せいけんがすでに反はん政府せいふ勢力せいりょく側がわと接触せっしょくし、シリア国内こくないのロシア軍ぐん基地きちと大使館たいしかんの安全あんぜんの保証ほしょうを得えたと伝つたえています。

アサド政権せいけんが崩壊ほうかいしたいま、ロシアにとっては軍ぐんと大使館たいしかん関係かんけい者しゃの安全あんぜんの確保かくほが最さい優先ゆうせんの課題かだいとなっています。

アメリカ軍ぐん シリアのIS拠点きょてんなど空爆くうばく

アメリカ中央ちゅうおう軍ぐんは、シリアで8日にち、過激かげき派は組織そしきIS＝イスラミックステートの幹部かんぶや拠点きょてんなど75以上いじょうの標的ひょうてきを爆撃ばくげき機きや戦闘せんとう機きで空爆くうばくしたと発表はっぴょうしました。

攻撃こうげきはISを壊滅かいめつするための任務にんむの一環いっかんで、ISがアサド政権せいけんが崩壊ほうかいした状況じょうきょうを利用りようして、再さい編成へんせいしないようにするためだったとしています。

バイデン大統領だいとうりょうはホワイトハウスで行おこなった演説えんぜつで、ISに対にたいする作戦さくせんは継続けいぞくされるとした上うえで「われわれはISが戦力せんりょくを再さい編成へんせいし、安全あんぜんな居場所いばしょを作つくろうと、あらゆる状況じょうきょうを利用りようしようとすることをはっきりと見据みすえている。われわれはそれを許ゆるさない」と強調きょうちょうしました。

アメリカ バイデン大統領だいとうりょう「良よい未来みらいを築きずくためのチャンス」

アメリカのバイデン大統領だいとうりょうは8日にち、ホワイトハウスで演説えんぜつし「アサド政権せいけんは多おおくの罪つみのないシリアの人々ひとびとを苦くるしめ、殺害さつがいしてきた。長ながい間ま、苦くるしんできた人々ひとびとにとって、誇ほこり高たかい国くにのより良よい未来みらいを築きずくための歴史れきし的てきなチャンスの瞬間しゅんかんだ」と述のべました。

一方いっぽう、バイデン大統領だいとうりょうは「危険きけんと不ふ確実かくじつ性せいの瞬間しゅんかんでもあり、われわれは、次つぎに何なにが起おこるのかという問題もんだいに目めを向むけている。アメリカはパートナー国こくやシリアの関係かんけい者しゃと協力きょうりょくし、危機ききを管理かんりする機会きかいをつかめるよう支援しえんする」と述のべました。

タス通信たすつうしん “シリア反はん政府せいふ勢力せいりょく側がわ ロシア軍ぐん基地きち近ちかくの町まち掌握しょうあく”

ロシア国営こくえいのタス通信たすつうしんは8日にち、シリアの反はん政府せいふ勢力せいりょく側がわがシリアにあるロシア軍ぐんのフメイミム空軍くうぐん基地きちの近ちかくにある町まち、ジャブラを掌握しょうあくしたと伝つたえました。

現地げんちからの情報じょうほうとして「反はん政府せいふの武装ぶそう勢力せいりょくは、昼間ひるまのうちにはすでに町まちの中心ちゅうしん部ぶに入はいり、空そらに向むかって発砲はっぽうしていたが、現在げんざいは平穏へいおんだ」としています。

崩壊ほうかいしたアサド政権せいけんの後うしろ盾たてとなってきたロシアは、シリア国内こくないに複数ふくすうの基地きちを置おいていて、タス通信たすつうしんは、大統領だいとうりょう府ふの情報じょうほう筋すじの話はなしとして、シリアの反はん政府せいふ勢力せいりょくがシリア国内こくないのロシア軍ぐんの基地きちとロシア大使館たいしかんなどの安全あんぜんは保証ほしょうすると伝つたえたと報ほうじています。

トルコ 新あらたな政権せいけんと対話たいわ行いっていく考かんがえ

トルコ政府せいふは8日にち、ギュレル国防こくぼう相しょうがアメリカのオースティン国防こくぼう長官ちょうかんと電話でんわ会談かいだんし、最新さいしんのシリア情勢じょうせいについて意見いけんを交かわしたと明あきらかにしました。

またフィダン外相がいしょうは8日にち、訪問ほうもん先さきのカタールで会見かいけんし、トルコ政府せいふは、シリアの新あらたな政権せいけんと対話たいわを行おこなっていく考かんがえを示しめしました。

その上うえで、「シリア国民こくみんが国くにの未来みらいをつくることができる段階だんかいに到達とうたつした。国くにを追おわれた何なん百ひゃく万まんものシリア人じんは故郷こきょうに戻もどることができる。団結だんけつし、国くにを再建さいけんする時ときだ」と述のべました。

一方いっぽう、多おおくのシリア難民なんみんが暮くらすトルコ各地かくちでは8日にち、アサド政権せいけんの崩壊ほうかいを祝いわうシリアの人々ひとびとの姿すがたが見みられ、最大さいだいの都市としイスタンブールでも広場ひろばなどで歓喜かんきの声こえを上あげていました。

イラン外務省がいむしょう「支援しえん惜おしまない」情勢じょうせいを注視ちゅうし

政権せいけんを支援しえんしてきたイランの外務省がいむしょうは8日にち、声明せいめいを出だし、「シリアの運命うんめいと未来みらいを決きめるのはシリアの人々ひとびとだけであり、ただちに軍事ぐんじ衝突しょうとつをやめて国民こくみんの対話たいわを始はじめ、すべてのシリア人じんを代表だいひょうする包括ほうかつ的てきな政府せいふを立たち上あげる必要ひつようがある」として現状げんじょうを容認ようにんする考かんがえを示しめしました。

その上うえで「イランとシリアの人々ひとびとの関係かんけいには長ながい歴史れきしがあり、この関係かんけいが続つづくことが期待きたいされる。シリアの安全あんぜんと安定あんていのために支援しえんは惜おしまない」とし、シリアへの関与かんよを続つづけたい考かんがえをにじませました。

ただ、今後こんごの対応たいおうについては「シリアの政治せいじで鍵かぎを握にぎる勢力せいりょくのふるまいを考慮こうりょしながら適切てきせつな対応たいおうをする」として、情勢じょうせいを注視ちゅうしする姿勢しせいを強調きょうちょうしています。

国連こくれん特使とくし “テロ組織そしきは難むずかしい課題かだい”

国連こくれんでシリア問題もんだいを担当たんとうするペデルセン特使とくしは8日にち、カタールのドーハで記者きしゃ会見かいけんし、アサド政権せいけんの崩壊ほうかいについて「暗黒あんこくの時代じだいは深ふかい傷きずを残のこしたが、きょう私わたしたちは平和へいわと和解わかいと尊厳そんげん、そしてすべてのシリア人じんを含ふくむ新あらたな時代じだいの幕開まくあけに慎重しんちょうながらも希望きぼうを抱だいている」と述のべ歓迎かんげいする考かんがえを示しめしました。

そのうえで現地げんちの武装ぶそう勢力せいりょくに対にたいし、法ほうと秩序ちつじょの維持いじと市民しみんの保護ほごなどを求もとめ、「シリアのすべての人々ひとびとに対話たいわと団結だんけつ、国際こくさい人道じんどう法ほうと人権じんけんの尊重そんちょうを優先ゆうせんするよう強つよく求もとめる」と呼よびかけました。

一方いっぽう、反はん政府せいふ勢力せいりょくを主導しゅどうする「シリア解放かいほう機構きこう」が国連こくれんの安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいの決議けつぎでテロ組織そしきに指定していされていることについては、「明あきらかに難むずかしい課題かだいとなっている」としたうえで、「指定していを外はずすためには手続てつづきがあり、可能かのうなかぎり包括ほうかつ的てきなプロセスになるよう努力どりょくし続つづけるつもりだ」と述のべました。

フランス マクロン大統領だいとうりょう 政権せいけん崩壊ほうかいを歓迎かんげい

シリアのアサド政権せいけんの崩壊ほうかいを受うけて、フランスのマクロン大統領だいとうりょうは8日にち「野蛮やばんな政権せいけんはついに倒たおれた」とSNSに投稿とうこうし、アサド政権せいけんのこれまでの強権きょうけん的てきな政治せいじを非難ひなんするとともに、政権せいけん崩壊ほうかいを歓迎かんげいしました。

そして「シリアの人々ひとびとの勇気ゆうきと忍耐にんたいに敬意けいいを表ひょうする。平和へいわと自由じゆうと団結だんけつを願ねがう」として、今後こんごも中東ちゅうとう全体ぜんたいの安定あんてい化かに取り組とりくむ姿勢しせいを示しめしました。

またフランス外務省がいむしょうも8日にちの声明せいめいで「シリア国民こくみんの多様たよう性せいを尊重そんちょうし、市民しみんとすべての少数しょうすう派はを保護ほごする平和へいわ的てきな政治せいじの移行いこうを求もとめる」としたうえで、国内こくないの和解わかいや再建さいけんに向むけて国際こくさい社会しゃかいとともに支援しえんを行おこなうとしています。