演説の冒頭、バイデン氏は「今の大統領はアメリカをあまりに長い間、多くの怒りや恐怖、分断という暗黒で覆ってきた」と述べ、トランプ大統領がアメリカ社会の分断を深めたと厳しく批判しました。
そして「われわれ国民がともに協力する時が来た。団結すればこの暗黒を乗り越えられる」と述べて、国民の結束を呼びかけました。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大でアメリカ国内で17万人を超える人が亡くなるなか「大統領はこの国への最も基本的な義務を果たせなかった。私たちを守ることに失敗した。これは許されないことだ」と主張し、みずからは対策に最優先に取り組むと強調しました。
そして「これはアメリカの民主主義、科学、品位すべてをかけた選挙だ。歴史を振り返った時、アメリカの暗黒の歴史が今夜、ここで終わったといえることを願う。共にこの戦いで勝利を収めよう」と述べ、政権奪還への支持を訴えました。
トランプ大統領「バイデン氏は口だけ」
トランプ大統領は、バイデン氏の演説の直後、ツイッターに「ジョーは過去47年間で、いま話したことのどれも成し遂げていない。彼は変わることはないだろう。口だけだ」と投稿し、対決姿勢をあらわにしました。
トランプ大統領は、来週開かれる共和党の党大会で党の大統領候補に正式に指名され、両陣営の選挙戦は11月3日の投票日に向けていっそう熱を帯びることになります。
共和党の元高官70人余がバイデン氏支持表明
バイデン氏の指名受諾演説にあわせて、共和党の歴代政権で外交や安全保障を担当した元高官70人余りが声明を発表し、バイデン氏を支持すると表明しました。
声明を発表したのは、ネグロポンテ元国家情報長官やヘイデン元CIA長官、それに知日派としても知られるアーミテージ元国務副長官やグリーン元NSCアジア上級部長など70人余りです。
また、中には、去年までトランプ政権で国土安全保障省の高官を務め、今週バイデン氏支持を表明してメディアの注目を集めたテイラー氏も含まれています。
声明は、トランプ大統領が世界のリーダーとしてのアメリカの役割を大きく損ねてきたほか、新型コロナウイルスの対応でも専門家の意見を軽視して誤った情報を流し、国を率いる適性がないことを露呈したなどと指摘し、11月の大統領選挙では、民主党のバイデン氏に票を投じるとしています。
民主党の党大会では、共和党のパウエル元国務長官やケーシック前オハイオ州知事がバイデン氏を支持する異例の応援演説も行っていてトランプ大統領に反発する共和党員の離反の動きが注目されています。
ただ、共和党内では、前回4年前の大統領選挙でも、外交・安全保障の専門家を中心に元高官が相次いでトランプ大統領には投票しないと明言していたほか、共和党内でのトランプ大統領の支持率は、依然、高いことから、離反の動きが実際にどこまで広がっているかは不透明です。
中国はどう見る
アメリカ大統領選挙で野党・民主党の大統領候補に指名されたバイデン前副大統領の指名受諾演説について、中国では、国営メディアなどが、速報で伝えるなど、高い関心を示しています。
ただ、中国政府はアメリカの内政に干渉する立場にないとして大統領選挙を静観していて、中国外務省の趙立堅報道官は20日の記者会見で「大統領選挙には興味もないし、干渉することもない」と述べました。
しかし、中国はトランプ政権が中国への対決姿勢を強めるだけでなく、バイデン氏も中国に厳しい姿勢を見せる中、アメリカの対中国政策を左右する今回の選挙の行方を極めて高い関心を持って見守っているとみられます。
中国は、王毅外相が、今月5日のインタビューで「アメリカとの『新冷戦』には断固反対する」と述べるなど、本音では、アメリカとのさらなる関係悪化は望んでおらず、トランプ氏、バイデン氏のどちらが大統領に選ばれても、対話を継続する姿勢を示すものとみられます。