金融緩和策修正見越すヘッジファンドどう対峙?【経済コラム】 - Easy News

日銀にちぎんは動うごくのか、それとも動うごかないのか。市場しじょうが身構みがまえる中なか、日銀にちぎんが18日にちの会合かいごうで出だした結論けつろんは“現状げんじょう維持いじ”でした。緩和かんわ修正しゅうせいを見越みこして国債こくさいを売うる動うごきを強つよめていた市場しじょうに対にたいし、黒田くろだ総裁そうさいは、「市場しじょうが金融きんゆう政策せいさくの変更へんこうを期待きたいして動うごいていたとすれば、それは是正ぜせいされたと思おもう」とピシャリ。しかし海外かいがいのヘッジファンドは次つぎのもうけのチャンスを虎視眈々こしたんたん（たんたん）とねらっています。（経済けいざい部ぶ記者きしゃ斉藤さいとう光ひかり峻たかし）

日本にっぽん国債こくさいの“空売からうり”で年間ねんかんの利益りえき目標もくひょうの半分はんぶんを稼かせいだ！？

イギリスのヘッジファンド、ブルーベイ・アセット・マネジメント。各国かっこくの国債こくさいや社債しゃさい、金利きんり、通貨つうかなどを対象たいしょうに投資とうしし、世界せかいで950億おくドル（約やく12兆ちょう円えん）を超こえる資産しさんを運用うんようしています。

このヘッジファンド、日銀にちぎんが12月つきに金融きんゆう緩和かんわ策さくを修正しゅうせいしたことで大おおきな利益りえきをあげたといいます。

日本にっぽん国債こくさいの先物さきものと円えん金利きんりスワップを組み合くみあわせて去年きょねん夏なつごろからショートポジション（国債こくさいの空売からうりポジション）を構築こうちく。日銀にちぎんが金融きんゆう緩和かんわ策さくの修正しゅうせいに迫せまられ、長期ちょうき金利きんりが上昇じょうしょうすると読よんでいました。

ブルーベイ・アセット・マネジメントマーク・ダウディング最高さいこう投資とうし責任せきにん者しゃ

「日本にっぽんの経済けいざい活動かつどうが再開さいかいし、物価ぶっかが上昇じょうしょうしてきた。YCC＝イールドカーブコントロール（長短ちょうたん金利きんりを操作そうさする日銀にちぎんの金融きんゆう緩和かんわの枠組わくぐみ）という政策せいさくは物価ぶっかの上昇じょうしょうを目的もくてきにしたもので、それが順調じゅんちょうに進すすんでいるのでYCCの役割やくわりが終おわりつつあるという認識にんしきを強つよめた。これがショートポジションをとった理由りゆうだ。このときの10年ねん国債こくさいの利回りまわりは0.22％だったが、金利きんりがこれより下さがる可能かのう性せいはかなり低ひくく、金利きんりが上昇じょうしょうする可能かのう性せいは高たかいという確信かくしんをもっていた。低ていリスクで高たかいリターンを上あげることができる。実際じっさい、12月つきに日銀にちぎんは緩和かんわ策さくを修正しゅうせいしたが、年間ねんかんの目標もくひょうリターンの半分はんぶんほどを日本にっぽん国債こくさいのショートポジションから得えることができた」

市場しじょうと日銀にちぎんとの攻防こうぼう再燃さいねん？

このヘッジファンドは、利益りえきを確定かくていするため、今月こんげつに入はいっていったん日本にっぽん国債こくさいの空売からうりポジションを減へらしましたが、今月こんげつ18日にちの金融きんゆう政策せいさく決定けってい会合かいごうで日銀にちぎんが現状げんじょう維持いじを決きめたあとは再ふたたび以前いぜんと同おなじ水準すいじゅんまで空売からうりのポジションを増ふやしたといいます。

マーク・ダウディング最高さいこう投資とうし責任せきにん者しゃ

「私わたしたちは日銀にちぎんの予想よそうよりも物価ぶっか上昇じょうしょうの勢いきおいが強つよいと考かんがえている。物価ぶっかの上昇じょうしょう率りつが4％を超こえてくれば早はやければ3月つきにも政策せいさく変更へんこうがあると予想よそうする。長期ちょうき金利きんりの変動へんどう幅はばを0.5％から0.75％に引き上ひきあげ、最終さいしゅう的てきにYCCを撤廃てっぱいするという流ながれは避さけられない。もともとYCCは物価ぶっかを上昇じょうしょうさせるための政策せいさく、デフレに対にたいする政策せいさくなので、今いまや成功裏せいこうりに目的もくてきが達成たっせいできており、役割やくわりが終おわった政策せいさくだと考かんがえている」

近ちかい将来しょうらい、日銀にちぎんが緩和かんわ策さくの修正しゅうせいに迫せまられ、長期ちょうき金利きんりがさらに上昇じょうしょうするとみるヘッジファンド。

これに対にたいし日銀にちぎんの黒田くろだ総裁そうさいは18日にちの金融きんゆう政策せいさく決定けってい会合かいごうのあとに行おこなわれた記者きしゃ会見かいけんでこうした見方みかたを強つよく否定ひていしました。

「長期ちょうき金利きんりの変動へんどう幅はばをさらに拡大かくだいする必要ひつようがあるとは考かんがえていない。YCCは十分じゅうぶん、持続じぞく可能かのうであると考かんがえている」

今回こんかいの日銀にちぎんの会合かいごうを前まえに、市場しじょうでは日銀にちぎんが12月つきに続つづいて緩和かんわ策さくを修正しゅうせいするのではないかという見方みかたから長期ちょうき金利きんりの上昇じょうしょうを見込みこんだ国債こくさいの売うり注文ちゅうもんが膨ふくらみ、大量たいりょうの国債こくさいを買かって金利きんりを抑おさえようとする日銀にちぎんとの間まで激はげしい攻防こうぼうが繰り広くりひろげられました。

これを踏ふまえ、日銀にちぎんは、今回こんかい、資金しきん供給きょうきゅう策さくを拡充かくじゅうするという市場しじょうへの対抗たいこう策さくを打ち出うちだしました。金融きんゆう機関きかんが日銀にちぎんに差し出さしだす担保たんぽをもとに低利ていりで資金しきんを貸し出かしだす「共通きょうつう担保たんぽ資金しきん供給きょうきゅうオペ」の制度せいどを拡充かくじゅう。金融きんゆう機関きかんに国債こくさいを購入こうにゅうするための資金しきんを供給きょうきゅうすることで、日銀にちぎんが直接ちょくせつ国債こくさいを買かわなくても金融きんゆう機関きかんが国債こくさいを買かったり市場しじょうでさまざまな裁定さいてい行動こうどうをとったりすることを通をつうじて長ながめの金利きんりの低下ていかを促うながします。

これについて黒田くろだ総裁そうさいは、「イールドカーブを適正てきせいにするための手段しゅだんとなる」と述のべ、YCCを軸じくとした金融きんゆう緩和かんわ策さくの枠組わくぐみを継続けいぞくする姿勢しせいを鮮明せんめいにしました。

こうした日銀にちぎんの対応たいおうもあって長期ちょうき金利きんりは低下ていか傾向けいこうにありますが緩和かんわ策さくの修正しゅうせい観測かんそくが市場しじょうにくすぶり続つづける中なか、修正しゅうせいを見越みこした投資とうし家かの動うごきが活発かっぱつになれば債券さいけん市場しじょうや外国がいこく為替かわせ市場しじょうが再ふたたび大おおきく変動へんどうする可能かのう性せいも指摘してきされています。

JPモルガン・アセット・マネジメント小しょう役やく丸まる浩司こうじエグゼクティブディレクター

「『共通きょうつう担保たんぽ資金しきん供給きょうきゅうオペ』の拡充かくじゅうによって民間みんかん銀行ぎんこうのバランスシートを通つうじた長期ちょうき資金しきんがスムーズに供給きょうきゅうされればイールドカーブのゆがみの修正しゅうせいなどに寄与きよする一定いっていの効果こうかは見込みこまれるが、YCCの代替だいたいとしての強力きょうりょくな力ちからまではないと考かんがえる。日銀にちぎんの将来しょうらいの物価ぶっか見通みとおしが、目標もくひょうとする2％には届とどかなかったことで行き過いきすぎた緩和かんわ修正しゅうせい期待きたいはいったん遠とおのいたが、今後こんごも市場しじょうが日銀にちぎんに緩和かんわ修正しゅうせいを催促さいそくし続つづける構図こうずに変化へんかはないのではないか。日本にっぽんと欧米おうべいとの金利きんり差さは依然いぜんとして大おおきく、日本にっぽん国債こくさいに対にたいする売うり圧力あつりょくは継続けいぞくするだろう」

日銀にちぎん対たい市場しじょう次つぎのラウンドの攻防こうぼうは

ことし4月つきに任期にんきを終おえる黒田くろだ総裁そうさいの後任こうにんの人選じんせんが本格ほんかく化かする中なか、日銀にちぎんがどのような姿勢しせいで市場しじょうと向き合むきあうのか。

そして市場しじょうはどう反応はんのうするのか。

日銀にちぎん対たい市場しじょうの攻防こうぼう、次つぎのラウンドも引き続ひきつづき注目ちゅうもくです。

注目ちゅうもく予定よてい

来週らいしゅうの注目ちゅうもくは23日にち、経団連けいだんれんの十倉とくら会長かいちょうと連合れんごうの芳野よしの会長かいちょうのトップ会談かいだんが行おこなわれ、ことしの春闘しゅんとうが事実じじつ上じょうスタートします。物価ぶっか上昇じょうしょうが続つづく中なか、企業きぎょうの賃金ちんぎん上昇じょうしょうの動うごきを広ひろげ、経済けいざいの好こう循環じゅんかんを生み出うみだすことができるかが大おおきな注目ちゅうもく点てんとなります。

また、アメリカでGDPや主要しゅよう企業きぎょうの決算けっさんの発表はっぴょうもあり、利上りあげが続つづく中なかでアメリカ経済けいざいの現状げんじょうを見みるうえでも注目ちゅうもくです。