JLPT N2 – Reading Exercise 54

#187

人間というのは、自分でわかっていることに関しては手早くポイントだけを取り出して相手に教えて、たくさんの説明をつい省略してしまいがちだ。そのせいで、教わる側が理解しにくくなってしまうこともある。人に教える時には、自分が理解した時点まで戻ってていねいに相手に伝えないと、うまく理解してもらえないのではないか。

また、そのプロセスのなかで、教わる側が積極的に質問することがとても重要だと思う。質問をすれば、何を理解していないのか、何を誤解しているのかが、教える側にとてもよくわかるからだ。それに、同じことでも繰り返し説明されることによって、理解が深まるケースも多い。

個人的には、一回だけの説明で理解してもらえるケースというのは、実はとても少ないのではないかと思っている。

また、すべてを教えるのではなく大部分を伝え、最後の部分は自分で考えて理解させるようにするのが、「1」理想的な教え方ではないかと考えている。

一方的に入ってきた知識は、一方的に出て行きやすい。しかし、自分で体得したものは出て行きにくい。

小学生に大学の講義を聞かせてもチンプンカンプンなように、相手のレベルに合わせて、相手が必要としていることを教えなければ意味はない。それは、非常に微妙な調整を必要とする、「2」ある種の職人技だ。そんなところが、教える側の大きなやり甲斐ではないかと考えている。

(羽生善治『大局観-自分と闘って負けない心』による)

チンプンカンプンな:全くわからない

Vocabulary (27)
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1
教える側がよくしてしまうことは何か。
1. 自分がわかっていることは相手にすべて教える。
2. 自分がわかっていることは簡単な説明で済ませる。
3. 自分がよく理解していないことは説明を省略する。
4. 自分が理解したのと同じやり方で相手に理解させる。
2
「1」理想的な教え方とはどのようにすることか。
1. 教わる側に質問をして、理解できたかを確認すること
2. 教わる側と一緒に考えながら、理解させるようにすること
3. 最後にそれまでの内容をまとめて説明し、理解を深めさせること
4. 最後の部分は、教わる側に自分で考えて理解させるようにすること
3
「2」ある種の職人技とあるが、どのようなことか。
1. 相手が覚えるまで繰り返し教えられること
2. 相手のレベルを超えた内容も教えられること
3. 内容や教え方を相手に応じて変えられること
4. 誰でも理解できるような知識だけを選べること