翻訳: Takahiro Shimpo 校正: Akiko Hicks
翻訳: Takahiro Shimpo 校正: Akiko Hicks
皆さん こんにちは
今日はですね 僕たちが手がける ニュースルームの革命
というものについて お話をしていきたいと思います
僕は今年の春まで 日本のそしてアジア最大と言われる
テレビ局でニュースキャスターと リポーターをしていましたが
この春 退職しました
テレビという限られた時間の中で
ニュースを伝えることに 限界を感じていたからです
大きな事件 災害は別ですが
通常 ニュースというのは 大体 2分から3分程度
もしくは短いものだと 1分10 秒くらいしか扱えません
皆さん ご存じのように
社会はそんなに シンプルではないですよね?
事件や事故に関わった人たちの想い
そして様々な 社会問題の背景というのは
とても複雑です
例えば こんなことがありました
僕がかつて沖縄県の
普天間基地の移設問題の 取材をした際
アメリカ軍の基地に反対する 大勢の沖縄の人たちの声に混じって
地元の高校生たちが こんなことを言うんです
「基地がなくなったら困る
就職する場がなくなってしまう
父親も母親も基地で働いていて
基地がなくなったら 私たちの家族は
一体どんな生活になってしまうのか?
堀さん 是非このことも 伝えてください」
しかし 残念ながら このインタビューは
その日のニュースで放送されませんでした
なぜなら 丁度 その頃 何十年かぶりに
沖縄ではアメリカ軍の基地に反対する
大規模な集会が準備されていました
その日のニュースのテーマは まさに「沖縄の怒り」
なので 基地がなくなったら 困るんです という話が
当時はなかなか 伝えられなかったんですね
すぐさま沖縄から 東京の上司に電話をして
「何を言ってるんですか?
沖縄の雇用問題を考えるうえでは
まさに伝えなければいけない 視点だったんじゃないんですか?」
「堀 気持ちは分かる
気持ちは分かるんだが 今日のテーマから少し逸れてしまう
また その複雑な状況を伝えるには 私たちには時間が足りない
今日は諦めよう」
結局 お蔵入りになってしまいました
そして 皆さんもよくご存じの
東京電力福島第一原発の事故
パニックを起こしてはいけない
社会的な不安を煽ってはいけない
国益を損なってはいけない
スポンサーの意向に逆らってはいけない
色々な理由から
テレビ局がこの原発の 事故のニュースを扱うのは
非常にデリケートな問題として 捉えられています
みんな 慎重です
ただ 今インターネットを使って 色んな情報が出ている中
テレビや新聞を見ても
なかなか本当のことが分からない
そうして疑心暗鬼を 膨らませていく人も
いらっしゃるんじゃないでしょうか?
例えば 最近で言うと
原発やその周辺の施設から
海に流れ出ている汚染水の問題
2011年の事故が起きた直後から 専門家の中には
「汚染水の問題は早く対策を 取らなければ 大変なことになる」
こうした主張をする人たちはいました
しかしながら 国内で大々的に
このニュースが報じられるようになるのは
今年7月 東京電力が公に
この汚染水の問題を
世の中に発表してからのことです
どうでしょうか 皆さん?
今 私たちがニュースルームというのを 大きく変えなければいけません
事故から2年半経って
パリに本部を置く 国境なき記者団というグループが
世界の報道の自由度 ランキングというのを発表しました
今年 日本は前年の31位から
53位に後退してしまっています
伝えたくても 伝えられないことがある
伝えきれないことがある
こうしたジレンマを 抱えているメディア人は
僕たちだけではありません
今 ニュースに関わる色々な人たちが
新しい試みを始めようと スタートさせています
その一つが 去年僕が 仲間たちと共に立ち上げた
8bit news という
インターネットを使った 投稿型のニュースサイトです
これは登録をしてもらえれば 一般の人が誰でも
手元のスマートフォンなどを使って
自分で撮影した動画をインターネットに
アップロードすることができる仕組みです
これまでにサービス開始から1年間で
1,000本以上の動画が投稿されて
動画の総再生回数は25万回以上
世界86ヵ国からアクセスがありました
地域が抱える問題
もちろん原発
そしてTPP など
なかなかテレビや新聞を見ていても 伝わってこないような
細かな現場の情報というのも 映像で上がってくるようになりました
ニュースを取材したいという人がいれば
僕たちメディアの人間が一緒に 撮影する技術を共有したりとか
取材の相談にのったりもします
今 流れているこの映像は 去年 春
長野県に勤めていた 会社員の男性が
「自分の目で原発の中の様子を見て
しっかり社会の人に 本当のことを伝えたい」
そう願って会社を辞めて
福島の原発に 働きにでたときの映像です
彼は原発に向かう直前に 私のところに来て
「何か自分が見たものを 広く社会に伝える方法はないか?」
相談に来てくれました
なので 私たちは カメラの撮影の仕方 記録の仕方
色々な技術を彼とシェアをして
福島に向かいました
数ヶ月経って送られてきた映像は
非常に驚くものばかりでした
何が明らかになったか
東京電力以下 何重にも連なる 下請け工場の中で
給料のピンハネが行われていたり
更には 18歳 19歳の未成年が
放射線の知識も持たないまま
現場で働かされていたり
更にはですよ
現場での作業経験がないのに
あたかも そこで 働いた経験があるかのように
下請けの企業が仕立てて
元請けの会社に送り込んでいくような 実態というのも
音声と映像で記録されていました
結局 この問題 インターネットに動画が アップロードされてから
テレビ 新聞 雑誌などが 取材に来て
最終的には その年の年末に 東京電力が下請け各社に対して
実態把握に努める アンケート調査を行ったり
更には労働基準監督署が
一部の会社に注意を行ったりと
現場の実態を改善するための アクションというのが取られました
これは一般の会社員の男性が 勇気を持って
映像発信したから 起きたことです
そうした中で 私たちは やはり こう思います
僕たちのような技術を持ってる 職業メディア人と
現場にいる一般の人たちが
協力してニュースを作るようになれば
前進しない社会問題というのは なにか解決されるんじゃないか?
その際 皆さんと今日 共有しておきたいのは この二つの言葉
オープンジャーナリズムと パブリックアクセス
まずオープンジャーナリズム という考え方は
まさに今8bit news で 実践していることです
ニュースの情報を まず おもてに出す
その情報に対して一般の人たちが
色んな知識や 色んな経験 色んな映像・情報を持ち込んで
みんなでニュースを 作り上げていく仕組みです
ただ この「一般」と言ったときに
皆さん 何も知らない市民のことを 思い浮かべるかもしれませんが
そうじゃないんです
この「一般」の中には 今 映像に出てきているような
大学の研究者 弁護士さん
お医者さん 臨床心理士さん
そして 例えば主婦の方でも
自ら 色々な悩みを抱えている
まさに社会問題の 当事者であるケースもあります
そうした一次情報を持った人たちと
私たちメディア人が オープンな場で情報を共有しながら
どんどんどんどんニュースの中身を 更新していく という取り組み
これがオープンジャーナリズムです
去年 イギリスの老舗の新聞会社
ガーディアンの編集長が こんなことを言っています
「私たちジャーナリストは 世界で唯一の専門家ではない」
つまり これだけ多様化して 流れの速い時代
色々な人たちとの協業がなければ
本来のジャーナリズムは 実践できない というものです
つまり これまでは ニュースというのは 編集して 精査して
完成品がでるまで その中身というのは
オープンにされてきませんでした
しかし その中身を公開すれば
一方ではメディアに対する 疑心暗鬼がなくなり
一方では速いスピードで 情報を多角的に
検証する仕組みができあがる
そういった理想に支えられたものです
もう一つが先程言った パブリックアクセス
この言葉 皆さん 聞いたことがありますか?
実を言うと
日本以外の先進国には 認められている権利で
日本では法律で 認められていない権利なんです
パブリックアクセス
つまり 国家の資源は国民であれば
誰でもアクセスすることができる権利
使うことができる権利
例えば電波っていうのも 国の資源ですよね?
ですので 例えば欧米各国では
誰でも自由に電波を使って 発信することができる権利
というのは保障されています
アメリカでは1950年代から 60年代にかけての
公民権運動のときに
そして韓国では1980年代 民主政権が誕生したときに
電波が市民に開放されました
誰かが自分が撮った情報を 自分が掴んだ情報を
電波に乗せて 発信したいという時に
その映像をテレビ局に持ちこめば
テレビ局は放送しなければいけない という権利が法律で保障されています
例えば イギリスでは 公共放送のBBC が
専用の番組を作るだけではなくて
BBC のカメラマンやディレクターが 市民と一緒になって
ニュースの取材をする そんな取り組みも続けてきています
最後に 大事なことを 皆さんとシェアしたい
それは そうしたことを 実行していくためには
一番なにが大事かというと
私たち一人一人の意識の問題です
今 流れている映像は まさに一般の皆さんが
投稿してくれた映像なんですが
最近 僕はニュースの インタビューをするときに
質問の仕方を変えています
「皆さん 今 様々な 課題を日本は抱えていますが
その課題を解決するために 何が必要なんでしょうか?」
「いや 政治を変えなきゃいけないね」
「経済を良くしなければいけない」
「給料を上げてもらわなきゃ 困るんだよ」
「弱者を切り捨ててはいけないんだ」
こんなインタビューを これまで してたんですが
ある時から こう変えました
「いや 今 日本には様々な 課題がありますよね
非常に政治や経済も 問題を抱えています
それらを改善するために 『あなたは』なにをしますか?」
「えっ?僕がですか?」 「えっ?私がですか?」
「そうなんです ご主人が
今 景気が悪い 経済が悪い と嘆いているこの状況を
改善するために 『あなたは』なにをするんですか?」
「私は じゃあ 会社で 若い社員たちに研修を行いながら
もっともっとイノベーションが 起こるように頑張りたい」
「私は困っている人が横にいたら
じゃあ なにか話を 聞くところから始めたい」
「『あなたは』なにをしますか?」 と 問いかけをすると
途端にみんな 考え始めてくれるんですよね
ニュースはメディアだけが変わっても なにも変わりません
オープンジャーナリズム
パブリックアクセス
これが実現したとしても恐らく 社会問題はなにも解決しないと思います
しかしながら
そこに情報を寄せてくださる皆さん
そこに参加してくださる皆さんが
自分たちの力でなにか 社会を変えようと思って
発信を始めていただければ
絶対に これは世の中が変わります
今 この国には働いても働いても
年収が200万円以下という人たちが
労働人口のおよそ四分の一
1千百万人以上いると言われています
毎日の生活で
「この日本を良くしよう」
「なにか課題を解決しよう」 と考えながら
お金も集めなければいけない
そんなのは非常に大変かもしれません
でも 皆さんのポケットの中には スマートフォンなど
携帯電話があります ハイビジョンの動画が撮れます
もし どうしても自分の窮状を 世の中に知らせたい
隣にいる困っている人を どうにか助けたいという人は
このスマートフォンを覗いてみてください
そして 僕らに相談をしてください
責任を持って 一緒になってニュースを作って
そして より大きなメディアに その映像を橋渡ししながら
みんなで問題解決をするための 知識を集めて
変えていきたい
そんな思いで一杯です
ニュースを作るのは まさに皆さんです
ニュースは知るだけではありません
ニュースルームの革命を
皆さんで是非 起こすことができたら と思っています
力を貸してください
ありがとうございました
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