このなかで、プーチン大統領は、ウクライナの反転攻勢が今月4日から始まったとしたうえで「敵は成功せず、多大な死傷者を出している。われわれの損失は、ウクライナ軍の10分の1ほどだ」と述べ、ロシア軍が撃退していると強調しました。
また「ウクライナ軍は160両以上の戦車や、360台以上の装甲車を失った。これは外国から供与された軍装備品の25%、おそらく30%に相当する」と述べ、ウクライナ軍や欧米から供与された兵器に「深刻な損失」が出ていると主張しました。
さらに、ウクライナ南部でダムが決壊し発生した大規模な洪水について、ウクライナ側の攻撃によるものだとして、ロシアが破壊したとのウクライナ側の非難に反論しました。 ウクライナが反転攻勢を本格的に進める中、プーチン大統領としては、ロシア軍が反撃を阻止しているという主張を国内外に誇示したいねらいとみられます。
プーチン大統領は、ことし2月以来、およそ15万6000人が契約軍人としてロシア軍に加わったと主張し「国防省は今のところ動員の必要性はないとしている」とも述べました。 また、プーチン大統領は、ロシア全土で戒厳令を出す必要性はないという考えを示し、国民の間でくすぶる不安の払拭(ふっしょく)を図るねらいもあるとみられます。
プーチン大統領は「残念ながら、彼らは再びわれわれをだました。ロシアの穀物の外国市場への供給について何もしなかった」と主張し、欧米などの制裁によってロシア産の農産物の輸出が滞っていることが理由だとして、ウクライナや欧米側をけん制しました。 そのうえで「第1に合意への参加を中止し、第2に貧しい国々に穀物を無償で提供することを検討している」と主張し、農産物の輸出をめぐり、近くアフリカ各国の首脳をロシアに招き、協議する考えを示しました。
そのうえで「ウクライナの領土内にロシアに到達できないように、ある種の『衛生地帯』を作ることを検討する必要もあるだろう。きょう、あすの話ではなく、状況を見守る必要がある」と述べ、ウクライナからの砲撃を防ぐためとして、国境地域に何らかの緩衝地帯をつくる考えを示唆した可能性があります。 一方、プーチン大統領は「特別軍事作戦の過程で、多くのものが不足していることが明らかになった。精密誘導兵器、通信システム、航空機、無人機などだ。最新の対戦車システムや、戦車も必要だ」と述べ、ロシア軍は兵器が不足していると認めました。 そのうえで「この1年間で主要な兵器の製造量は2.7倍に、最も需要の高い分野では10倍に増加した」と述べ、兵器の増産に一層取り組む必要があると強調しました。 また、欧米が戦車の装甲を貫通する能力が高い劣化ウラン弾をウクライナに供与しているとして「ウクライナが使用するのであれば、われわれもそれを使用する権利をもっている」と述べました。 そのうえで、プーチン大統領は「アメリカは、ほぼ直接、この紛争に没頭し、国際安全保障の深刻な危機を引き起こしている」と主張し、ウクライナへの軍事支援を強める欧米側を批判しました。
新たな動員「いまは必要ない」も今後に含み
農産物の輸出合意 破棄する考えも
国境強化示す一方で兵器不足認める