その「BA.5」はいまでも世界中で最も多い状態が続いていますが、徐々に割合が減少してきています。
特にアメリカでは、CDC=疾病対策センターによりますと、「BA.5」は、8月20日までの1週間では86.5%だったのが、10月29日までの1週間では49.6%と半数を下回りました。
それと入れ代わるように各国で増えているのが、いずれもオミクロン株の1種でさらに変異が加わっている、「BQ.1」と「BQ.1.1」「XBB」です。
それでは、これらのウイルスは、どんな変異ウイルスなのでしょうか。
徐々に増えてきた「BQ.1」は、オミクロン株の「BA.5」にさらに変異が加わっています。 ウイルスが人の細胞に感染する際の足がかりになる「スパイクたんぱく質」の部分に、「K444T」という変異などが加わっています。 また、この「BQ.1」に、さらに「R346T」というスパイクたんぱく質の変異が加わったのが「BQ.1.1」です。 中和抗体が効きにくく、免疫から逃れる「免疫逃避」の可能性が指摘されていて、アメリカやイギリスでは8月以降報告が多くなってきています。 WHOによりますと、「BQ.1」や「BQ.1.1」は10月上旬の段階で65か国から報告されています。 イギリスの保健当局の資料によりますと、ウイルスの遺伝子配列を登録する国際的なウェブサイト「GISAID」では、初めて報告されたことし9月以降、「BQ.1」は毎週75%増加し、「BQ.1.1」は毎週90%以上増加しています。 WHOの専門家グループは、これまでのオミクロン株と比べて、感染者に占める割合が増える傾向にあり、免疫から逃れる能力が高い可能性がある一方、実際に、感染した場合の重症化リスクが高まったり、免疫逃避が起きたりしたことを示すデータはないとしています。 また、一般的にウイルスが免疫から逃れる能力が高いと、ワクチン接種後の感染や、再感染のリスクが高くなりますが、現時点ではさらなる調査が必要だとしています。 WHOは、従来型のワクチンやオミクロン株に対応した成分を含むワクチンで、感染を防ぐ効果は下がる可能性があるものの、重症化を防ぐ効果に大きな影響はないと見られるとしています。
WHOによりますと、10月下旬の段階で35か国から報告されています。 新型コロナウイルスは世界中で広がる中で変化を繰り返していて、1人の人が複数のタイプに感染することで遺伝子の組み換えが起き、複数のウイルスの特徴を持った「組み換え体」と呼ばれるタイプの新たな変異ウイルスができることがあります。 「XBB」もそのようなタイプの変異ウイルスで、スパイクたんぱく質の部分に「R346T」や「N460K」などの変異が加わり、中和抗体が効きにくく、免疫から逃れる「免疫逃避」の性質がある可能性が指摘されています。 シンガポール保健省によりますと、10月9日までの1週間で「XBB」は54%を占め、前の週の22%から増えて主流になってきました。 さらに、10月中旬には、再感染する人が新規感染者数の17%を占めるなど、再感染が増えていて「XBB」の感染力が高いことが影響しているという見方があるとしています。 ただ、感染者数が増えるとともに入院者数も増えてきた一方で、重症者数は、感染者数や入院者数ほどは増えず、現時点では、重症化リスクが高まっているという証拠はないとしています。 WHOの専門家グループは「XBB」について、感染力の高さが指摘されているものの、これまでのオミクロン株に比べて免疫から逃れる能力や重症化率が高いとは言えないとしています。 また、再感染も、オミクロン株より前の新型コロナウイルスに感染した人に限られ、これまでのオミクロン株によって得られた免疫を逃れるとする証拠はないとしています。
中国製のワクチンを3回接種したあと、「BA.5」に感染した人の血液を使って、人工的に作った「XBB」の特徴を再現したウイルスに対して中和抗体の効果があるかどうか実験すると、中和抗体の値は、「BA.5」に対しての場合と比べて18分の1以下、「BA.2」と比べて27分の1になっていたということです。 ほかの条件でも効果は大きく下がっていたとしています。 「XBB」が広がっているシンガポールですが、10月中旬をピークに感染者数が減少に転じました。 濱田特任教授は「シンガポールでは感染者数が減少傾向となり、周辺国への拡大もそれほど起きなかった。『XBB』は日本国内でも検出されているが少数にとどまっていて、拡大への懸念は一時期ほど高くないと思う」と話しています。
その中で、WHOは10月26日の週報の中で、オミクロン株の変異で興味深い現象が見られることを指摘しました。 新たな変異ウイルスは別々の場所や異なる時期に現れたにもかかわらず、共通する変異があるというのです。 これは「収斂(しゅうれん)進化」という現象で、本来異なる生物が別々に進化してきたにもかかわらず、共通の特徴を持つように至るというものです。 たとえば、「タラバガニ」はヤドカリの仲間なのに環境に適応して進化し、「カニ」と同様のハサミなどの特徴を持つに至りました。 これが収斂進化の典型例とされています。 新型コロナウイルスの場合は異なる系統から別々に変異を重ねてきたにもかかわらず、新たに出現してきた変異ウイルスでは共通の部分が変異しているというのです。 WHOは、共通の変異は、ウイルスがヒトに適応するのに必要とみられる部分に起きているとしています。 そして、さらに変異が加わる可能性があるとしています。
また、東京医科大学の濱田特任教授は「ある一定の場所に集中して変異が起きている。ウイルスにとっては、その部分を変異させることで、ヒトの免疫をかいくぐることができるという意味があるのかもしれない。ヒトの側から考えると、そう簡単には流行を収束までは持っていくことができず、インフルエンザのように、毎年のように免疫をかいくぐりながら流行が続く可能性がある。ただ、インフルエンザと同じように、定期的にワクチンを接種することで対応できるようになるのかもしれない」と述べました。
圧倒的に多い状況自体は変わりませんが、8月は98%、9月は98.5%だったので減少傾向にあります。 「BA.5」の次に多いのは「BA.2.75」や「BF.7」で、いずれも1%台でした。 また、「XBB」は東京都で9月に1件、10月に5件報告されているほか、鹿児島県などでも報告されました。 「BQ.1.1」も11月に入って栃木県などで報告されています。 国立感染症研究所は、「XBB」や「BQ.1.1」が重症化につながっている証拠はないとしつつも、免疫を逃避する能力があると指摘する研究もあるとして、引き続き監視を続ける考えを示しています。 いま、国内では1週間平均の感染者数が10月11日におよそ2万6000人となったあと、徐々に増加し、11月3日の時点ではおよそ5万人となりました。 濱田特任教授は「いま感染者数が増えているのは、『第7波』で主流だった『BA.5』が完全には消えなかったところに、10月に入ってさまざまな緩和が進み、『残り火』から再燃している状態だと考えられる。この場合、マスクの着用といった予防対策を取れば抑え込むことはできるだろう。ただ、『BQ.1』系統が入り込んでくると、『BA.5』よりも免疫を回避しやすいとされ、感染やワクチン接種をしていても再感染しやすいので、冬に流行すると感染者数が増える可能性がある。いまはオミクロン株対応のワクチンを接種できるので、接種してほしい。『BA.5』も『BQ.1』も『XBB』もいずれもオミクロン株なので、オミクロン株対応のワクチンを接種することで、予防効果が期待できるし、この冬の健康被害を減らすことにつながると思う」と話しています。
アメリカ・イギリスから多く報告 「BQ.1」系統
シンガポールやインドなどで増加「XBB」
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