それによりますと、調査を行った201か所のうち、およそ70か所で最大で環境基準の79倍となるベンゼンのほか、検出されないことが環境基準となるシアンが検出されたことなどがわかりました。
東京都の小池知事は去年8月、築地市場の移転の延期を決めた理由として、今回のモニタリング調査が終了していなかったことを挙げ、移転時期を判断するうえでの1つの指針として最終調査の結果が焦点となっていました。
調査結果について、専門家会議の平田健正座長は詳しい分析が必要としたうえで、「ベンゼンの濃度の高かった場所など、代表的な地点を選んで再び地下水を調査する」などと述べ、引き続き地下水について調査を行う必要があるという認識を示しました。
前回、8回目の調査では合わせて3か所から最大で環境基準の2倍弱となるベンゼンとヒ素が検出されていますが、今回の最終調査ではより高い数値で、さらに広い範囲で環境基準を超える有害物質が検出されたことから、安全性の確認が長引けば移転の判断に向けたスケジュールが遅れる可能性もあります。
専門家会議 引き続き調査行う必要ある
豊洲市場の地下水のモニタリング調査で、最大で環境基準の79倍となるベンゼンが検出されたなどとする最終調査の結果がまとまったことについて、豊洲市場の安全性を検証する専門家会議は、結果の詳しい分析を進めるとともに、今回で終了とせず、引き続き調査を行っていく必要があるという認識を示しました。
専門家会議は14日に開かれた会合で、豊洲市場の地下水のモニタリングの最終調査の結果について公表し、調査を行った201か所のうち、およそ70か所で、最大で環境基準の79倍となるベンゼンのほか、検出されないことが環境基準となるシアンが検出されたことなどを明らかにしました。
この結果について、専門家会議の平田健正座長は「今回の結果は、これまでとあまりにも傾向が違っている。データを見てすぐに、なぜこうなったのか説明するのは難しい」と述べ、結果の詳しい分析を進める考えを示しました。
そのうえで、「ベンゼンの濃度の高かった場所など、代表的な地点を選んで再び地下水を調査する」などと述べ、今回のモニタリング調査で終了とせず、引き続き、地下水について調査を行っていく必要があるという認識を示しました。
14日の専門家会議では、今後の調査にあたっては、これまでの水の採取の方法を検証するほか、民間機関にも調査を依頼して結果をクロスチェックするなど新たな手法を採り入れることで、より詳細な安全性の確認を進めるべきだという意見が出されました。
移転に向けたスケジュールに遅れも
豊洲市場への移転について、小池知事が去年11月に示した行程表では、地下水のモニタリング調査の結果などを基に、ことし4月に専門家会議が豊洲市場の安全性の検証結果と必要な対策を取りまとめ、5月に都のプロジェクトチームが採算性なども検証し報告書を作成するとしていました。
そして、環境アセスメント=環境影響評価の審議を経て、夏ごろに小池知事が移転についての最終的な判断を行ったうえで、早ければことしの冬から来年春に移転する環境が整うとしていました。
一方で、小池知事は去年8月に移転の延期を決めた際に、地下水のモニタリング調査が終了していないことを挙げていて、移転時期の判断材料として最終調査の結果が焦点になっていました。
合わせて9回のモニタリング調査のうち、7回については環境基準を超える有害物質は検出されませんでしたが、前回、8回目の調査で、青果棟の敷地内の2か所から環境基準の1.4倍と1.1倍に当たるベンゼンが、別の1か所から環境基準の1.9倍のヒ素が検出されました。
今回の最終調査では、前回に比べてより高い数値で、さらに広い範囲で環境基準を超える有害物質が検出されたため、安全性の確認が長引けば移転に向けたスケジュールが遅れる可能性もあります。
専門家「すぐに影響が出る水準ではない」
豊洲市場の地下水のモニタリングの最終調査で、最大で環境基準の79倍となるベンゼンが検出されたことについて、土壌汚染などの環境問題に詳しい京都大学大学院工学研究科の米田稔教授は、NHKの取材に対し、「リスクの再評価が必要な数値だとは思うが、豊洲市場の土壌汚染対策は有害物質を封じ込めることが目的であり、ありえない数値ではない。仮にこの水を飲み続けるようなことがあれば、健康に影響を及ぼす可能性もあるが、微量を飲んだからといってすぐに影響が出る水準ではない。そもそも豊洲市場では地下水を飲み水などとして利用しないことになっている」と話しました。
そのうえで米田教授は「ただ、ベンゼンは揮発するので、地下水をしっかり管理することが重要であり、それによって科学的に安全かどうかを証明すべきだ」と述べ、豊洲市場に設けられた管理システムで、地下水の上昇を抑えるなどの対策が必要だという認識を示しました。
築地の仲卸業者「東京都を信用できなくなった」
14日の専門家会議を傍聴した築地市場の仲卸業者からは、「今回の結果を見て東京都を信用できなくなった。このままでは、小池知事も安全宣言を出したくても出せないと思う。私たちが安心安全な市場を作ることができるようしっかり考えてほしい」などという厳しい意見が出されました。
また、卸や仲卸などの団体で作る築地市場協会の伊藤裕康会長は「結果を聞いてびっくりしている。どうしてこんな数値が出たのか早く解明してほしい。知事に対して年度内の移転判断を求める考えは変わっていない」と話していました。