政府は、廃止の時期が来てもマイナンバーカードを取得しない人などに対しては、働きかけを進めていくと同時に、何らかの対応を検討していくとしています。
一方、河野大臣は、運転免許証とマイナンバーカードの一体化の時期について、当初予定していた2024年度末から前倒しする方針も示しました。
マイナンバーカードをめぐって政府は来年3月末までにほぼすべての国民に行き渡ることを目標としていますが、11日時点の申請枚数は、全国民の56%にとどまっていることから、普及率を高めたい考えです。
また、確定申告の医療費控除の手続きも、マイナポータルを通じて自動入力できるようになります。 一方、医療機関なども、患者の同意を得られれば、特定健診の結果や過去の診療情報などが見られるようになり、厚生労働省は、質の高い医療の提供につながるとしています。
国民の側には、カードによって、税金の確定申告や、保育所の入所申請、児童手当などの手続きが、オンラインで行えるなど、行政手続きの利便性が高まるとしています。 一方で、行政側にとっても、迅速で正確な本人確認によって、ミスやなりすましを防止できるほか、事務処理の効率化やコストの削減などの効果が期待できるとしています。 総務省によりますと、マイナンバーカードの申請枚数は11日時点で、7072万枚余り、全国民に占める申請率は56.2%となっています。 ただ、申請から交付までおおむね1か月かかることから、交付枚数で見ると6240万枚余り、交付率は49.6%となっています。
受診などの際に、健康保険証を示すことで、医療費の多くが健康保険や国民健康保険などで賄われ、一部を負担するだけですむ仕組みです。 政府の方針では、2年後の2024年秋に今の保険証を廃止するとしていますので、それまでに、すべての人がマイナンバーカードを取得し、保険証として利用できるよう登録する必要があります。 カードを保険証として登録している人は今月2日の時点でおよそ2480万人と、全国民の2割にとどまっています。 あと2年ほどの間に、すべての国民が手続きを終えられるのかが課題となります。 また、ひとり暮らしの高齢者などマイナンバーカード取得の申請を行うのが難しい人や、どうしても取得したくないという人などへの対応も検討する必要があります。 一方、医療機関などの体制をどう整えていくのかも課題です。 厚生労働省は医療機関などに対し、原則として、来年度からマイナンバーカードを保険証として利用できるシステムの導入を義務づけています。 しかし、今月2日時点で、システムの運用を始めている医療機関や薬局は33.5%にとどまっています。 厚生労働省は、導入にかかる費用への補助額を増やすなどして整備を促していくとしています。 日本医師会の松本会長も「医療現場に負荷がかかったり、混乱が生じたりする可能性もあるので、しっかりと手当てをしてもらいたい」と、政府に注文を付けています。
【カード取得を促す マイナポイント】 ことし6月からは、最大で2万円分のポイント還元を受けられる「マイナポイント第2弾」を始めています。 マイナンバーカードの取得に伴って最大5000円分、健康保険証としての登録や国からの給付金を受け取る「公金受取口座」の登録で、それぞれ7500円分ずつ、ポイント還元が受けられるものです。 11日までに、いずれか1つ以上の項目への申請は2400万件を超え、総務省は、カードの普及にも大きな効果が出ているとしています。 【企業に “出張窓口”】 自治体の職員が、企業に出向き、カードの申請を行うための「出張窓口」を設ける取り組みも行われています。 マイナンバーカードの申請や受け取りには、通常、役場などに出向く必要がありますが「出張窓口」を利用すれば昼休みなどにカードの申請や写真撮影ができ、カードも郵送で送られてきます。 【携帯電話ショップでも】 携帯電話の販売店で、カードの申請をサポートするサービスも行われています。 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社の販売店、合わせておよそ8000店舗で、店員がスマートフォン上で申請画面を表示させ、氏名や住所などの入力を一緒に進めてくれるほか、顔写真の撮影など申請に必要な作業をサポートしています。 【運転免許証と一体化へ】 カードの利便性を高めるための検討も進めています。 来年2月からは引っ越しに伴う転出の手続きを、市区町村の窓口に出向かずに、オンラインでできるようになります。 運転免許証のマイナンバーカードの一体化も計画されています。 【地方交付税に反映も】 さらに、政府は、来年度の地方交付税の算定や、新たに設ける交付金の配分に、自治体ごとのカードの交付率を反映させる方針です。 普及に取り組む自治体を後押ししたいとしていますが、自治体からは反発も予想されます。
デジタル庁は、ことし1月から2月にかけて、2万人を対象にインターネットでマイナンバーカードの取得状況について調査を行いました。 この中で、カードを取得していない人に、取得しない理由を複数回答で尋ねたところ「情報流出が怖いから」が35.2%と最も多くなりました。 次いで「申請方法が面倒だから」が31.4%、「カードにメリットを感じないから」が31.3%などとなりました。 政府がカードの安全性やメリットについて国民の理解を取り付けられるかどうかが、カード普及のカギを握っているといえそうです。
その結果、最も高かったのは新潟県粟島浦村で87.9%でした。 次いで、大分県姫島村が87.7%、宮崎県都城市が84.7%、兵庫県養父市が82.9%と4つの自治体で80%を超えています。 石川県加賀市が76.9%、福井県池田町が76.3%、高知県宿毛市が74.8%、静岡県西伊豆町が74.7%、長崎県小値賀町が74.6%、長野県南牧村が74.4%と続いています。 一方、最も低い自治体は25%台となっていて、自治体間で普及状況に大きな差が生じています。
寺田総務相「保険証と一体化 格段に普及が進む」
健康保険証とマイナンバーカードが一体化すると…
行政手続きの利便性向上やコスト削減などの効果に期待
今後の課題は
マイナンバーカード普及に向けた取り組み
普及に向けて安全性と利便性がカギに
自治体間で普及状況に大きな差