一方、イスラエル軍はハマスが依然として138人の人質を拘束しているとして、ハマスを壊滅させ人質全員を解放するまで軍事作戦を続ける構えで、今後さらに民間人の犠牲が増えることが懸念されます。
イスラエルやパレスチナに関する日本時間12月8日の動きを、随時更新でお伝えします。
”キリスト生誕の地” クリスマスツリー設置を取りやめ
ヨルダン川西岸にはおよそ320万人のパレスチナ人がイスラエルの占領下で暮らしています。
このうちパレスチナ暫定自治区のベツレヘムでは、キリストが生まれたとされる場所に建てられた「聖誕教会」の前の広場に毎年12月、高さ10メートルを超えるクリスマスツリーが飾られ、世界各地から多くの観光客が訪れますが、ことしはガザ地区で苦しむ人たちに連帯を示すためにツリーの設置や装飾を取りやめ、広場は閑散としています。
近くで土産物店を営む男性は「ガザ地区で民間人が犠牲になっているのは本当に悲しい。平和が訪れたときこそ、最高のクリスマスを迎えられると思います」と話していました。
また、市内の「クリスマス教会」では、毎年キリスト生誕の場面として祭壇の隣に展示する飼い葉おけの中で眠る幼いキリストの姿の代わりに、パレスチナ伝統の織物「クーフィーヤ」に包まれがれきの中で横たわる幼子の人形を飾っています。
教会のムンザ・イサーク司祭は「もしイエスさまが今日生まれるとしたら、ガザで苦しむ子どもたちと一緒にがれきの中で生まれるでしょう。世界中がクリスマスを華やかに祝う中、パレスチナでのクリスマスの実情を知ってほしかった」と話していました。
ハマス政治部門幹部「抵抗を続け降伏はない」
イスラム組織ハマスの政治部門の幹部がレバノンの首都ベイルートで会見し「パレスチナ人をガザ地区から追い出そうとする試みに、抵抗を続け降伏はない。侵略や占領を止めない限り、解決はない」などと述べ、徹底抗戦の構えを改めて強調しました。
また、「イスラエルは幻の勝利のために幻の標的を掲げている。シファ病院の地下にハマスの拠点があるという主張がうそだった」と述べ、ガザ地区南部のハンユニスにハマスのシンワル指導者が潜んでいるというイスラエル側の見方も否定し、批判しました。
ガザ地区 2か月で1万7000人以上が死亡
ことし10月7日にガザ地区を実効支配するハマスの戦闘員などがイスラエル側を襲撃し、これに対してイスラエル軍がガザ地区での大規模な軍事作戦に乗り出してから、7日で2か月となりました。
イスラエル軍は7日もガザ地区南部のハンユニスを中心に多くのハマスの拠点などを攻撃したと明らかにし、ハマスのガザ地区のヤヒヤ・シンワル指導者が市内に潜伏している可能性があるとみて、捜索を続けているもようです。
これに対してハマスも7日、ハンユニスの周辺でイスラエル軍の戦車にロケット弾などで攻撃を加えたとSNSで明らかにし、双方の激しい攻防が続いています。
ガザ地区の保健当局によりますと、ハンユニスのナセル病院には、およそ1000人のけが人がいて、病床が足らず多くの患者が床に横たわることを余儀なくされているということです。
保健当局によりますと、ガザ地区では前日からの24時間に新たに350人が死亡し、この2か月での死者は1万7177人に上り、その多くが子どもや女性とされています。
イスラエル軍はハマスが依然として138人の人質を拘束しているとして、ハマスを壊滅させ人質全員を解放するまで軍事作戦を続ける構えで、今後さらに民間人の犠牲が増えることが懸念されます。
学生たち「窒息させられているよう」
イギリスの首都ロンドンを拠点にパレスチナ人の学生たちに奨学金の支援などを行っている慈善団体は、一連の衝突が始まって以降、学生たちが危機に直面していると訴えています。
ロンドンの「ガリラヤ財団」は、16年間にわたってヨルダン川西岸のパレスチナ人やイスラエル国内のアラブ系の学生に、奨学金の提供や就職支援を行っています。
支援を統括するパレスチナ人のマハ・アルファラさんによりますと、ヨルダン川西岸ではイスラエル軍の検問所が増え、学生たちは通学に数時間かかるようになったり、兵士から身体検査だとして服を脱ぐよう強いられ身体的な暴力を受けたりしていて、多くの学生が大学に通えていないということです。
また、イスラエル国内の大学に通うアラブ系の学生については、パレスチナとの連帯を示したことでおよそ130人が逮捕されたり退学させられたりしていて、ガザ地区の赤ちゃんが犠牲になったことにSNSで言及した学生は、1年間の停学を命じられたということです。
アルファラさんは、「学生たちは『窒息させられているようだ』と話している。イスラエルは自らを民主的な国家だと言いながらなぜ表現の自由が認められないのか」と非難しました。
またアルファラさんは、ガザ南部のハンユニスの近くに避難しているいとこと、定期的にやりとりしています。
いとこが送ってきたボイスメッセージの背後では、絶えず戦闘機が飛行するような音が聞こえていて、アルファラさんは「子どもたちがどんな思いをしているのか、想像もつかない」として、一刻も早く戦争を終わらせるよう訴えていました。