きょうトルコ大統領だいとうりょう選挙せんきょ 物価ぶっか高騰こうとうや地震じしん対応たいおうで現職げんしょくに逆風ぎゃくふう

現職げんしょくのエルドアン氏しに投票とうひょうするという30歳さいの女性じょせいは「エルドアン政権せいけんが成し遂なしとげてきたことに満足まんぞくしています。大統領だいとうりょうにとどまってくれればよいです」と話はなし、国くにの安定あんていのためには政権せいけんの継続けいぞくが必要ひつようだと話はなしていました。

一方いっぽう、クルチダルオール氏しに投票とうひょうするという25歳さいの男性だんせいは、物価ぶっかの高騰こうとうが市民しみん生活せいかつに深刻しんこくな影響えいきょうを与あたえているとして「変化へんかが必要ひつようです。今いまの状態じょうたいでは家いえも車くるまも、必要ひつようなものは何なにも買かえません」と話はなし、政権せいけん交代こうたいが必要ひつようだと訴うったえていました。

ただ、投票とうひょうの3日にち前まえになり、1人にんが撤退てったいを表明ひょうめいしました。

最大さいだいの争点そうてんは長期ちょうき政権せいけんの是非ぜひです。

エルドアン氏しは、首相しゅしょう時代じだいも含ふくめて20年ねんにわたる内政ないせい外交がいこうの成果せいかをアピールしつつ、選挙せんきょ前まえに家庭かてい用ようガスの使用しよう料りょうの一部いちぶ無料むりょう化かや、学生がくせいへの通信つうしん料りょう無料むりょう化か、さらに投票とうひょう5日にち前まえには最低さいてい賃金ちんぎんの底上そこあげを発表はっぴょうし、支持しじの拡大かくだいを図はかっています。

これに対にたいして、中道ちゅうどう左派さは、民族みんぞく主義しゅぎ、それにイスラム主義しゅぎの政党せいとうなどによる超党派ちょうとうはの6党とうの連合れんごうがクルチダルオール氏しを擁立ようりつして挑いどむ構図こうずで、エルドアン氏しの強権きょうけん的てきな政権せいけん運営うんえいやことし2月つきの大だい地震じしんへの対応たいおうをめぐって批判ひはんを強つよめています。

また野党やとう側がわは、トルコの人口じんこうの2割わりを占しめるともされるクルド人じんの票ひょうの取り込とりこみを図はかるためクルド系けい政党せいとうにも協力きょうりょくを要請ようせいしています。

7日にち付づけのトルコの世論せろん調査ちょうさでは、クルチダルオール氏しがエルドアン大統領だいとうりょうを5ポイント引き離ひきはなし、5割わりを超こえる支持しじを得えています。

14日にちの投票とうひょうで過半数かはんすうの得票とくひょうを得える候補こうほ者しゃがいなかった場合ばあいには、上位じょうい2人にんによる決選けっせん投票とうひょうが、2週間しゅうかん後ごの28日にちに行おこなわれます。

イスラム教いすらむきょうの宗教しゅうきょう指導しどう者しゃ養成ようせい学校がっこうを経へて大学だいがくを卒業そつぎょうし、イスラム系けいの政党せいとうでの政治せいじ活動かつどうを行おこなったのち、1994年ねんにイスタンブールの市長しちょうに初はつ当選とうせんしました。

しかし、演説えんぜつで戦闘せんとう的てきなイスラムの詩しを朗読ろうどくしたことが扇動せんどうの罪つみに問とわれて実刑じっけい判決はんけつを受うけ解任かいにんされました。

その後そのご、2001年ねんにAKP＝「公正こうせい発展はってん党とう」を立たち上あげて党首とうしゅとなり、2002年ねんに総そう選挙せんきょで勝利しょうりし、翌年よくねん、首相しゅしょうに就任しゅうにんします。

また、2014年ねんには国民こくみんが直接ちょくせつ大統領だいとうりょうを選えらぶ初はつの選挙せんきょでも当選とうせんするなど、20年ねんにわたって政権せいけんを率ひきいています。

外交がいこう面めんでは、ロシアのプーチン大統領だいとうりょうと直接ちょくせつ、対話たいわできる数少かずすくない首脳しゅのうとして国際こくさい社会しゃかいでの存在そんざい感かんを増まし、ウクライナ産さんの農産物のうさんぶつ輸出ゆしゅつの再開さいかいでは仲介ちゅうかい役やくとして実現じつげんにこぎつけました。

軍事ぐんじ面めんでは、NATO＝北大ほくだい西洋せいよう条約じょうやく機構きこうの加盟かめい国こくである一方いっぽう、中国ちゅうごくとロシアが主導しゅどうする上海しゃんはい協力きょうりょく機構きこうへの加盟かめいを示唆しさするなど、欧米おうべいとも中ちゅうロともバランスを取とる独自どくじの外交がいこうを進すすめ、存在そんざい感かんを示しめしてきました。

先月せんげつ、エルドアン大統領だいとうりょうは、テレビの生なま放送ほうそう中ちゅうに体調たいちょう不良ふりょうを訴うったえてインタビューを中断ちゅうだんし、健康けんこう不安ふあん説せつも流ながれましたが、選挙せんきょ戦せんで1時間じかん以上いじょうの演説えんぜつをこなし、健在けんざいぶりをアピールしています。

財務ざいむ官僚かんりょう出身しゅっしんで2002年ねんの総そう選挙せんきょで野党やとうCHP＝「共和きょうわ人民じんみん党とう」から立候補りっこうほして初はつ当選とうせんしました。

今回こんかい、初はじめて大統領だいとうりょう選挙せんきょに臨のぞむクルチダルオール氏しは、6つの野党やとうの統一とういつ候補こうほに指名しめいされていて、エルドアン政権せいけんの強権きょうけん的てきな政策せいさくやことし2月つきに起おきた大だい地震じしんへの対応たいおうを厳きびしく批判ひはんしてきました。

また、トルコでは国民こくみん投票とうひょうを経へて2018年ねんに強大きょうだいな権力けんりょくが大統領だいとうりょうに集中しゅうちゅうする実権じっけん型がたの大統領だいとうりょう制せいに移行いこうしましたが、クルチダルオール氏しは元もとの議院ぎいん内閣ないかく制せいに戻もどすとしています。

外交がいこう面めんでもエルドアン大統領だいとうりょうのもとでぎくしゃくした欧米おうべい各国かっこくとの関係かんけい改善かいぜんを打ち出うちだしていて、EU加盟かめいに向むけた交渉こうしょうについても、トルコが加盟かめいして安定あんていすればEU側がわにもメリットがあると訴うったえ進展しんてんさせたい考かんがえを示しめしています。

演説えんぜつなどで強気つよきの発言はつげんを繰り返くりかえすエルドアン氏しとは対照たいしょう的てきにクルチダルオール氏しは選挙せんきょ戦せんで穏おだやかに語かたりかけるような動画どうがをSNSに多数たすう投稿とうこうして親したしみやすさをアピールしてきました。

また、自身じしんはイスラム教いすらむきょうの中なかでも少数しょうすう派はの信者しんじゃであることを明あかし、クルド人じんなど国内こくないのさまざまな少数しょうすう派はに寄り添よりそう姿勢しせいも示しめしています。

一方いっぽうで、伝統でんとう的てきに政治せいじと宗教しゅうきょうを厳格げんかくに分わける政教せいきょう分離ぶんりが国是こくぜのトルコでイスラムの価値かち観かんを重おもんじる政策せいさくを進すすめてきたほか、建国けんこく以来いらい、絶大ぜつだいな影響えいきょう力りょくを持もっていた世俗せぞく派はの軍ぐんや実業じつぎょう界かいの影響えいきょう力りょくを弱よわめ、権力けんりょく基盤きばんを強つよめていきました。

そして、国民こくみん投票とうひょうを経へて実権じっけん的てきな大統領だいとうりょう制せいへの移行いこうに伴ともない、エルドアン氏しは大統領だいとうりょうとして実権じっけんを握にぎり続つづけました。

一方いっぽうで、政権せいけんに批判ひはん的てきなデモを弾圧だんあつするなど、言論げんろん統制とうせいを強つよめ、強権きょうけん的てきだという批判ひはんが高たかまり、欧米おうべい諸国しょこくとはぎくしゃくするようになりました。

国内こくないでも2016年ねんには軍ぐんの一部いちぶによるクーデター未遂みすいが発生はっせいし、一時いちじ、窮地きゅうちに立たたされたものの、逆ぎゃくに反対はんたい派はの締しめつけを強化きょうかする結果けっかとなりました。

近年きんねんはインフレが続つづく中なかで、異例いれいとも言いえる政策せいさく金利きんりの引き下ひきさげを強つよく主張しゅちょうして通貨つうかリラの暴落ぼうらくを招まねくなど経済けいざいの混乱こんらんへの対応たいおうを迫せまられてきました。

また、ことし2月つきに南部なんぶで発生はっせいした大だい地震じしんでは初動しょどう対応たいおうの遅おくれや被害ひがい拡大かくだいの背景はいけいに支持しじ母体ぼたいの建設けんせつ業界ぎょうかいへの配慮はいりょから違法いほう建築けんちくを見過みすごしてきたことがあったなどとして強つよい批判ひはんにもさらされ、20年ねんにわたる長期ちょうき政権せいけんへの不満ふまんも出でています。

ロシアによるウクライナ侵攻しんこうをめぐってはプーチン大統領だいとうりょうと会談かいだんを重かさね、仲介ちゅうかい役やくとして、ウクライナ産さんの農産物のうさんぶつ輸出ゆしゅつの再開さいかいを国連こくれんとともに実現じつげんさせました。

また、NATO加盟かめいを申請しんせいしたフィンランドとスウェーデンに対にたいしては、ほとんどの加盟かめい国こくが早々そうそうに支持しじした一方いっぽうで、両国りょうこくがトルコからの分離ぶんり独立どくりつを掲かかげるクルド人じん武装ぶそう組織そしきへの支援しえんをやめなければ認みとめられないとして、トルコが一いち歩ほも譲ゆずらない姿勢しせいを示しめし、今いまもスウェーデンの加盟かめいは実現じつげんしていません。

一方いっぽう、エルドアン大統領だいとうりょうは20年ねん前まえにはEU＝ヨーロッパ連合れんごうの加盟かめいを目指めざすことを公言こうげんしていましたが、政権せいけんの強権きょうけん化かを指摘してきする欧米おうべい諸国しょこくとのあつれきなどから、いまだに加盟かめいへの道筋みちすじは立たっていません。

日本にっぽんとの2国こく間かん関係かんけいでは、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの被災ひさい地ちに救助きゅうじょ隊たいを派遣はけんして3週間しゅうかん近ちかくにわたって活動かつどうにあたり、ことし2月つきにトルコ南部なんぶで起おきた大だい地震じしんでは日本にっぽんからも国際こくさい緊急きんきゅう援助えんじょ隊たいが駆かけつけるなど、良好りょうこうな関係かんけいを続つづけています。

しかし、エルドアン大統領だいとうりょうは近年きんねん、「高こう金利きんりは景気けいきを冷ひやす」という信念しんねんのもと政策せいさく金利きんりの引き下ひきさげを進すすめ、おととし3月つきには19％だった政策せいさく金利きんりをことし2月つきには8.5％と、10ポイント以上いじょう切り下きりさげました。

こうした政策せいさくによって去年きょねん10月つきには前年ぜんねん同月どうげつ比ひで85％を超こえるインフレを記録きろくし、食料しょくりょう品ひんのほか公共こうきょう交通こうつう機関きかんの運賃うんちんなども跳ね上はねあがって市民しみん生活せいかつを直撃ちょくげきしているほか、通貨つうかリラも右肩みぎかた下さがりとなり、過去かこ2年ねんでドルに対にたいしての価値かちが半分はんぶん以下いかになっています。

こうした中なか、最低さいてい賃金ちんぎんの底上そこあげや年金ねんきん受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれいの引き下ひきさげなどの経済けいざい対策たいさくをやつぎばやに打ち出うちだしていますが、追おいついていないのが実情じつじょうで、市民しみん生活せいかつは依然いぜんとして苦くるしい状態じょうたいが続つづいています。

議会ぎかいは一院制いちいんせいで選挙せんきょ前まえの議席ぎせき数すうは、

▽与党よとうAKP＝公正こうせい発展はってん党とうが285

▽最大さいだい野党やとうCHP＝共和きょうわ人民じんみん党とうが134

▽クルド系けい政党せいとうのHDP＝人民じんみん民主党みんしゅとうが56

▽トルコ民族みんぞく主義しゅぎを掲かかげる右派うはのMHP＝民族みんぞく主義しゅぎ者しゃ行動こうどう党とうが48などとなっています。

選挙せんきょでは、AKPとMHPの与党よとう連合れんごうが過か半数はんすうを獲得かくとくできるのか、それとも大統領だいとうりょう選せんに野党やとう統一とういつ候補こうほとしてクルチダルオール氏しを擁立ようりつしたCHPなどの野党やとう6党とうを含ふくめ、野党やとう側がわが過か半数はんすうを得えるのかが焦点しょうてんです。

トルコは国民こくみん投票とうひょうを経へて2018年ねんに大統領だいとうりょうが強大きょうだいな権力けんりょくを握にぎる実権じっけん型がたの大統領だいとうりょう制せいに移行いこうしましたが、議会ぎかいの3分ぶんの2の承認しょうにんがあれば憲法けんぽう改正かいせいを行おこなって議院ぎいん内閣ないかく制せいに戻もどすことなどに道みちを開ひらくことにもなります。

大統領だいとうりょう選挙せんきょに立候補りっこうほしている野党やとう統一とういつ候補こうほのクルチダルオール氏しは、議院ぎいん内閣ないかく制せいに戻もどすことを公約こうやくとしていて、大統領だいとうりょう選挙せんきょ、そして議会ぎかい選挙せんきょの結果けっかによっては政治せいじ体制たいせいが大おおきく変かわる可能かのう性せいもあります。