Japanese News: 最低賃金労働者側は大幅引き上げ要求も、企業側は慎重な姿勢

春闘しゅんとうで大幅おおはばな賃上ちんあげが相次あいつぐ中なか、今年度こんねんどはどこまで引き上ひきあげるのか。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうの審議しんぎ会かいで18日にち、労使ろうし双方そうほうの議論ぎろんが行おこなわれましたが、労働ろうどう者しゃ側がわは大幅おおはばな引き上ひきあげを求もとめたのに対にたいし、企業きぎょう側がわは中小ちゅうしょう企業きぎょうではコスト上昇じょうしょう分ぶんの価格かかく転嫁てんかが十分じゅうぶんにできていないとして慎重しんちょうな姿勢しせいを示しめしました。

議論ぎろんは来週らいしゅうまで行おこなわれ全国ぜんこくの目安めやすが決きまる見通みとおしで、過去かこ最大さいだいとなった去年きょねんを上回うわまわる引き上ひきあげとなるかが焦点しょうてんです。

働はたらく高齢こうれい者しゃ大幅おおはば引き上ひきあげ求もとめる声こえ

働はたらく高齢こうれい者しゃからは物価ぶっか高だかの中なかで年金ねんきんだけでは生活せいかつが厳きびしいとして最低さいてい賃金ちんぎんの大幅おおはばな引き上ひきあげを求もとめる声こえが聞きかれます。

山形やまがた県けん鶴岡つるおか市しで1人にん暮くらしをする佐々木ささき俊司しゅんじさん（68）は65歳さいで会社かいしゃを定年ていねん退職たいしょくしたあとは、パートとして介護かいご関連かんれんの施設しせつで送迎そうげいを介助かいじょする仕事しごとをしています。

賃金ちんぎんは山形やまがた県けんの最低さいてい賃金ちんぎんと同おなじ900円えんで、週しゅう6日にち働はたらいても午前ごぜん中ちゅうの限かぎられた時間じかんのため、月つきの手取てどりは5万まん円えんほどです。

65歳さいからは年金ねんきんを受給じゅきゅうしていますが蓄たくわえはわずかで、光熱こうねつ費ひや食費しょくひなど日常にちじょう生活せいかつにかかる費用ひようを支払しはらうと手元てもとにはほとんど残のこらないということです。

物価ぶっかが上あがっているため生活せいかつ費ひを切り詰きりつめようとふだん買い物かいものをするスーパーでパンや野菜やさいなどなるべく安やすい品しなを探さがして煮物にものなどを自炊じすいしています。

また、趣味しゅみの映画えいが鑑賞かんしょうや音楽おんがくのコンサートに出向でむくことも控ひかえて節約せつやくしています。

佐々木ささきさんは心臓しんぞうの病気びょうきがあり多おおくの薬くすりを服用ふくようしていてこれ以上いじょう、長ながい時間じかん働はたらくことは難むずかしいのが現状げんじょうです。

今後こんごも年金ねんきんの支給しきゅう額がくが増ふえないと見込みこまれる中なかで、物価ぶっかの上昇じょうしょうが続つづけば暮くらしがますます厳きびしくなると考かんがえていて最低さいてい賃金ちんぎんの大幅おおはばな引き上ひきあげを実現じつげんしてほしいと求もとめています。

佐々木ささきさん

「年金ねんきんだけでは生活せいかつが苦くるしく老後ろうごに向むけて蓄たくわえるという考かんがえもできないし、生いきることはできるけれど生いきているだけになります。春闘しゅんとうでいくら大だい企業きぎょうの賃金ちんぎんが上あがっても私わたしたちには波及はきゅうしないし暮くらしは楽らくにならないので未来みらいに希望きぼうが持もてません。最低さいてい賃金ちんぎんの全国ぜんこくでの格差かくさをなくしてほしいですし、山形やまがたではせめて1000円えんを上うえ回まわれるよう頑張がんばってほしいです」

ハローワーク訪おとずれる高齢こうれい者しゃからも

働はたらく高齢こうれい者しゃからは物価ぶっかが高騰こうとうする中なかで年金ねんきんだけでは生活せいかつが厳きびしいことなどとして最低さいてい賃金ちんぎんの引き上ひきあげを求もとめる声こえが聞きかれました。

東京とうきょう・新宿しんじゅくのハローワークではおととしから「シニア応援おうえんコーナー」として専門せんもんの職員しょくいんが高齢こうれい者しゃの就職しゅうしょくを支援しえんする特設とくせつコーナーを設もうけています。

訪おとずれる高齢こうれい者しゃからは、▼定年ていねん後ごの再さい雇用こようや再さい就職しゅうしょくで給料きゅうりょうが大幅おおはばに減へったという相談そうだんや▼年金ねんきんだけでは生活せいかつできず、将来しょうらいの生活せいかつが不安ふあんだといった相談そうだんを多おおく受うけるといいます。

ハローワークを訪おとずれた60代だいの男性だんせい

「60歳さいの定年ていねん退職たいしょく後ご、再さい雇用こようで働はたらいていましたが、年収ねんしゅうが4分ぶんの1くらいまで減へってしまい、年金ねんきんだけで生いきていけるか不安ふあんがあります。物価ぶっかも相当そうとう上あがっていますし、最低さいてい賃金ちんぎんは正せい社員しゃいん並なみの5％か6％くらいは引き上ひきあげてほしいです」

65歳さいの女性じょせい

「家賃やちんや光熱こうねつ費ひなどの必要ひつよう経費けいひだけでも10万まん円えんくらいになりますが、年金ねんきんはそれだけでなくなってしまい、あとは自分じぶんで稼かせがなくてはいけません。高齢こうれいだと正せい社員しゃいんではなく、バイトなどの短みじか時間じかんの仕事しごとの求人きゅうじんが多おおいですし、最低さいていでも時給じきゅうで1200円えんから1300円えん程度ていどはほしいです」

働はたらく高齢こうれい者しゃ増ぞう生活せいかつ「苦くるしい」6割わり

働はたらく高齢こうれい者しゃが900万まん人にん以上いじょうにのぼる中なかで、最低さいてい賃金ちんぎんは高齢こうれい者しゃの給与きゅうよにも影響えいきょうを及およぼしています。

総務そうむ省しょうの労働ろうどう力りょく調査ちょうさによりますと65歳さい以上いじょうの働はたらく高齢こうれい者しゃは増ふえ続つづけていて、2023年ねんは過去かこ最多さいたの914万まん人にんとなりました。

これは働はたらく人ひと全体ぜんたいの13.5％にあたります。

高齢こうれい者しゃは現役げんえき世代せだいに比くらべて給与きゅうよ水準すいじゅんが低ひくい傾向けいこうにあり、最低さいてい賃金ちんぎんに近ちかい人ひとの割合わりあいを年代ねんだい別べつにみると20代だい前半ぜんはんまでの若年じゃくねん層そうが特とくに高たかく、それ以降いこうは減へったあと60代だいを境さかいに再ふたたび高たかくなっています。

2020年ねんの賃金ちんぎん構造こうぞう基本きほん統計とうけい調査ちょうさの分析ぶんせきでは1時間じかんあたりの所定しょてい内ない給与きゅうよが最低さいてい賃金ちんぎんの1.1倍ばい未満みまんの人ひとの割合わりあいを年齢ねんれい別べつで見みると、次つぎのようになっています。

▼15～19歳さい　51.7％

▼20～24歳さい　21.2％

▼25～29歳さい　9.1％

▼30～34歳さい　8.7％

▼35～39歳さい　8.4％

▼40～44歳さい　9.2％

▼45～49歳さい　10.0％

▼50～54歳さい　10.7％

▼55～59歳さい　11.1％

▼60～64歳さい　17.0％

▼65～69歳さい　26.5％

▼70歳さい以上いじょう　34.7％

厚生こうせい労働ろうどう省しょうの国民こくみん生活せいかつ基礎きそ調査ちょうさでは、2022年ねんの高齢こうれい者しゃ世帯せたいの平均へいきん所得しょとくは年金ねんきんや賃金ちんぎんを含ふくめて304万まん9000円えんで、その他そのたの世帯せたいの651万まん1000円えんの半分はんぶん以下いかにとどまっています。

また、高齢こうれい者しゃ世帯せたいで生活せいかつが「苦くるしい」と回答かいとうした世帯せたいは、前年ぜんねんより10.7ポイント高たかい59.0％にのぼり、統計とうけいを取とり始はじめた1986年ねん以降いこうで最もっとも高たかくなりました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは「年金ねんきんを受給じゅきゅうしている人ひとや仕事しごとをしている人ひとでも物価ぶっか高だかや燃料ねんりょう費ひの高騰こうとうの影響えいきょうなどで生活せいかつの苦くるしさが増ましている可能かのう性せいがある」と分析ぶんせきしています。

最低さいてい賃金ちんぎん労働ろうどう者しゃ側がわは大幅おおはば引き上ひきあげ要求ようきゅうも企業きぎょう側がわは慎重しんちょう姿勢しせい

ことしの春闘しゅんとうで5％を超こえる大幅おおはばな賃上ちんあげが相次あいつぐ中なかで、最低さいてい賃金ちんぎんを今年度こんねんど、どこまで引き上ひきあげるかについて18日にち、厚生こうせい労働ろうどう省しょうの審議しんぎ会かいで3回かい目めの議論ぎろんが行おこなわれました。

企業きぎょうが労働ろうどう者しゃに最低さいてい限げん支払しはらわなければならない最低さいてい賃金ちんぎんは去年きょねん、全国ぜんこく平均へいきんで43円えん引ひきあげられ、現在げんざいは時給じきゅう1004円えんとなっています。

労働ろうどう者しゃ側がわは物価ぶっか高だかが続つづき労働ろうどう者しゃの生活せいかつが厳きびしさを増ましているなどとして、全国ぜんこくの半分はんぶん程度ていどの都道とどう府県ふけんで時給じきゅう1000円えんを超こえるために現在げんざい1000円えん以下いかの道みちと県けんを中心ちゅうしんに67円えんの大幅おおはばな引き上ひきあげを求もとめました。

これに対にたいして企業きぎょう側がわはコスト増加ぞうか分ぶんを価格かかく転嫁てんかできない企業きぎょうが相当そうとう数すうあり、従業じゅうぎょう員いん30人にん未満みまんの企業きぎょうの賃上ちんあげ率りつが2.3％と十分じゅうぶんな賃上ちんあげができていないとして、大幅おおはばな引き上ひきあげには慎重しんちょうな姿勢しせいを示しめしました。

具体ぐたい的てきな引き上ひきあげ額がくは示しめしませんでした。

議論ぎろんは来週らいしゅうまで行おこなわれ全国ぜんこくの目安めやすが決きまる見通みとおしで、春闘しゅんとうの流ながれを受うけて最低さいてい賃金ちんぎんも過去かこ最大さいだいとなった去年きょねんを上回うわまわる引き上ひきあげとなるかが焦点しょうてんです。

専門せんもん家か「働はたらく高齢こうれい者しゃ視点してんでも最低さいてい賃金ちんぎん考かんがえる必要ひつよう」

労働ろうどう政策せいさくに詳くわしいリクルートワークス研究所けんきゅうじょの坂本さかもと貴志たかし研究けんきゅう員いんは次つぎのように指摘してきしています。

「以前いぜんは最低さいてい賃金ちんぎんに近ちかい労働ろうどう者しゃは主おもに若者わかものやパートで働はたらく主婦しゅふなどが多おおかったが、最近さいきんではそれに加くわえて高齢こうれい者しゃの割合わりあいがかなり高たかくなっていている。最低さいてい賃金ちんぎんの位置いちづけも時代じだいとともに変かわってきていて働はたらく高齢こうれい者しゃの賃金ちんぎんという視点してんでも最低さいてい賃金ちんぎんを考かんがえていく必要ひつようが生しょうじている」

その上うえで、次つぎのように話はなしていました。

「最低さいてい賃金ちんぎんの引き上ひきあげによる企業きぎょうに対にたいする影響えいきょうも検証けんしょうしていく必要ひつようがあるが、年金ねんきんがたとえ少すこし下さがっても高齢こうれい期きに安心あんしんして暮くらしていける環境かんきょうを整ととのえていくため、高齢こうれい者しゃの視点してんで最低さいてい賃金ちんぎんを引き上ひきあげていくことを考かんがえる必要ひつようがある」