12:16 植田和男氏への所信聴取終了
24日の植田氏への所信聴取は金融関係者の大きな注目を集めました。
所信聴取の開始前、円相場は、1ドル=134円台半ばで取り引きされていましたが、その後の為替の変動は限定的で昼過ぎの時点では1ドル=134円台の半ばから後半の範囲での取り引きとなっています。
衆議院議院運営委員会は午後1時から日銀副総裁の候補となっている日銀理事の内田眞一氏と前金融庁長官の氷見野良三氏への所信聴取と質疑が行われる予定です。
▼日経平均株価、午前の終値は22日の終値より294円46銭、高い2万7398円78銭、 ▼東証株価指数・トピックスは11.18、上がって1986.43、 ▼午前の出来高は6億7096万株でした。 市場関係者は、日銀の黒田総裁の後任候補の植田氏に対する衆議院議員運営委員会での所信聴取について、「植田氏が『金融緩和の継続が適切だ』などと発言したことを受けて日銀のいまの大規模な金融緩和が続くとの見方が広がった。このため多くの銘柄に買い注文が出た」と話しています。
その上で、「消費者の特に生活必需品の価格変動に対する敏感さについては注意深く見守っていかないといけない」と述べました。
これについて植田氏は、「日銀が国債を買うことが財政ファイナンスに当たらないようにするために何らかの歯どめが必要であるという観点からそうしたルールが設けられていたと考えています。現在は廃止(ママ・現在は『一時停止』)されているが、それにかわるものが2%のインフレ目標であると私は考えています」と述べました。 その上で「現在、長期国債を購入しているのは金融緩和効果をつくり出し、インフレ率を2%に持続的に引き上げるためです。その帰結として2%が達成されれば国債の購入はそこの時点やその前後から急速に縮小していくということで規律は保たれるつくりになっていると考えています」と述べました。
植田氏は「為替変動が経済に及ぼす影響は局面にもよるし、為替レートのスピードにもよるが、きわめて不均一、またエピソードによって異なるということに注意しつつ経済への影響を把握していくことが重要かと思っている」と述べました。
その上で「サプライズがあってはならないという指摘もあったが、政策運営は毎回、新しい情報で将来の見通しを変化させ政策も場合によっては変更するというやり方をとるので、時と場合によってはサプライズ的になることも避けられない面がある。ただその場合でも考え方を平時から平易に説明しておくことで、そうしたサプライズは最小限に食い止めることが可能だと思う」と述べました。
また、政府の取り組みについて「政府が働き方改革などの施策を実施したことによって、労働需給がタイト化する中でも女性や高齢者の労働参加が進み、人口減少が続く中でも雇用者数の大幅な増加が実現するというようなプラスの効果が実現してきていると思う」と述べました。
そのうえで「基調的な物価の見通しが一段と改善していくという姿になっていく場合にはイールドカーブコントロールについても正常化の方向での見直しを考えざるを得ないと思う。一方で、なかなか改善せず力強い金融緩和の継続が必要な場合は市場機能の低下を抑制することに配慮しつつ、どうやって継続するか考えていかないといけないと思っている」と述べました。
その上で「そのかわりに、引き締めの局面では日銀当座預金の金利を引き上げていくというやり方になると思う。ただ、この際、財務面で懸念されるのは保有している国債の金利と当座預金の支払い金利、これが逆ざやになって収益にマイナスの影響を及ぼすとケースだ。しかし、これについては、そういう事態に備えて債券取引に関する引当金を積んでいると理解している」と述べました。
その上で「先行きの見通しを判断する際に極めて重要なものが、基調として物価は今どのへんにあるのかというところだ。これはひと言でどの指標を見れば分かるという簡単なものではない。あらゆる手法を使って基調的な物価の動きを探り当てていくことが金融政策の極めて重要なコアになる仕事であると考えている」と述べました。
その上で「今後も成長を続けるためには生産性を高めていくことがより重要になる。こうした観点から企業の人的資本への投資や生産性を高める投資に期待するところだ。金融政策面では、緩和的な金融環境を維持することにより、良好なマクロ経済環境を実現し、企業の前向きな投資を後押しすることが重要だ」と述べました。
その上で「日本銀行の審議委員を務めたとき、あるいはその後の内外の大学での研究教育を行っていたときを含めて、さまざまな国際的な会議の場で学者、実務家と議論を行ってきました。このような中で形作ってきた人脈、知見を生かして、海外中央銀行との連携、市場関係者とのコミュニケーションを適切に行っていきたいと考えています」と述べました。
その上で「同時にマクロ経済政策の運営にあたっては政府と中央銀行が十分な意思疎通を図ることも必要だ。日本銀行総裁はこれまでも定期的に総理と直接お会いする機会を頂いてきた。財務大臣とも、さまざまな機会で意見交換をさせて頂いてきた。承認頂ければ、私もぜひそうした機会を頂き、しっかりと連携を図ってまいりたいと考えている」と述べました。
その一方で「さまざまな副作用が生じていますが、経済・物価情勢を踏まえると、2%の物価安定の目標の実現にとって必要かつ適切な手法であると思う。今後とも情報情勢に応じて工夫を凝らしながら金融緩和を継続することが適切であると考えている」と述べました。
金融関係者も大きな関心を寄せる24日の所信聴取。円相場は午前9時30分現在、1ドル=134円台半ばの水準で取り引きされています。
所信聴取は午前9時半から始まり、まず総裁候補の植田氏が所信を述べます。その後、昼すぎにかけて各党議員からの質問を受けることになっています。 副総裁候補への所信聴取は午後1時から始まり、内田氏、氷見野氏それぞれが所信を述べたあと各党議員からの質問を受ける予定です。
黒田総裁のもとでの異例の大規模緩和は、行き過ぎた円高を是正し、デフレでない状況を実現しました。専門家の間でも景気や物価に一定のプラスの効果があったという見方があります。
また、大量の国債の買い入れで、日銀が保有する国債の残高は去年9月末の時点で500兆円を超え、短期を除くと半分以上を日銀が保有する異例の状況となっています。国の財政規律の緩みにつながったという批判も出ています。 さらに株価指数に連動したETF=上場投資信託を大量に買い続けた結果、保有額が膨らみ、日銀は株価値下がりのリスクにさらされています。市場関係者などからは日銀が実態として筆頭株主になっている日本企業も多く、日銀が市場をゆがめているという批判もでています。 こうした課題にどう向き合うのか。そして今の金融緩和を続けるのか。それとも修正を検討するのか。最も注目されるのは、この点です。 金融政策の修正については、マイナス金利をどうするのか、そして、長期金利と短期金利に操作目標を設けるいわゆる「イールドカーブコントロール」の枠組みを見直すのかという点が焦点となります。
政府・日銀が、デフレからの脱却と持続的な経済成長の実現に向けた「共同声明」を発表してから10年となりますが、その内容を見直すかどうかが焦点となります。
共同声明は、この10年にわたって一度も見直されていませんが、専門家などの間では、日銀の金融政策に柔軟性を持たせるため、物価上昇率の目標を「2%程度」などと幅を持たせたり「できるだけ早期に」としている達成時期をより中長期的な目標に改めるべきだといった指摘も出ています。 その一方で、仮に共同声明を見直せば、日銀が金融政策を修正するのではないかという観測が広がり、金融市場に動揺をもたらすおそれがあるという指摘もあります。 政府と日銀の「共同声明」では、財政運営に対する信認を確保するため財政健全化の取り組みを推進するとされています。 しかし、この10年で国債の発行残高は急増し、その背景に日銀が大量に国債を買い入れる大規模な金融緩和が続けたことがあると指摘する声もあります。所信聴取では、財政規律についてどう考えるのか、という点もポイントとなります。 最後にもう1つ、植田氏が就任すれば戦後初の学者出身の総裁となりますが、学者としての知見やこれまでの研究実績を金融政策にどのように生かすのか、これについてどう発言するかも注目されます。
1974年に東京大学理学部を卒業後、経済学部の大学院で研究活動に取り組みます。アメリカのマサチューセッツ工科大学大学院に留学し博士号を取得。1993年に東京大学経済学部の教授となります。 そして1998年から7年間日銀の審議委員を務め「ゼロ金利政策」や「量的緩和政策」の導入を理論面で支えました。 その後、東京大学大学院経済学研究科の教授として大学に戻りました。2017年からは共立女子大学の教授を務めています。 また、日本政策投資銀行の社外取締役や日銀金融研究所の特別顧問など学外でも幅広く活動しています。
東京大学法学部を卒業後、1986年に日銀に入り、アメリカのハーバード・ロースクールを修了。金融政策の立案を担う企画局に長く在籍しました。 2010年から新潟支店長を務めたあと、2012年には49歳で企画局長に就任し、5年間にわたって金融政策の実務を取りしきりました。 局長就任のよくとしには黒田総裁が就任し、2%の物価目標の達成に向けた大規模な金融緩和やマイナス金利の導入、そして、長期金利と短期金利に操作目標を設ける「イールドカーブコントロール」の策定に携わりました。 その後、名古屋支店長を経て、2018年に理事に就任し、去年、再任されましたが、この間、大規模な金融緩和政策で中心的な役割を担ってきました。
東京大学法学部を卒業後1983年に当時の大蔵省に入り、1987年にアメリカのハーバード・ビジネススクールでMBA=経営学修士を取得。2003年から2006年にかけては金融庁から派遣されて主要国の金融監督当局でつくるバーゼル銀行監督委員会の事務局長を日本人として初めて務め、新たな資本規制の策定などに取り組みました。 2016年に金融庁の国際担当で次官級の金融国際審議官に就任し、2019年には、各国の金融当局などでつくるFSB=金融安定理事会で、当局間の協調促進に向けた活動を行う常設委員会の議長を務めました。 そして2020年から1年間、金融庁の長官を務め、新型コロナウイルスの影響を受けた企業への資金繰り支援などの対応にあたりました。 退任後は、東京大学公共政策大学院で客員教授を務めているほか、去年からはシンクタンクのニッセイ基礎研究所でエグゼクティブ・フェローを務めています。
対象は▽日銀の正副総裁や審議委員のほか▽国家公安委員会の委員や▽原子力規制委員会の委員長など39機関274人です。 内閣が衆参両院の議院運営委員会の理事会に人事案を提示し、それぞれの本会議で採決されて、衆参ともに同意が得られれば内閣が任命することになります。 「同意人事」は予算案のような衆議院の議決の優越や、法案のように参議院で否決された場合に衆議院で再議決することは認められておらず、どちらかで否決されたら任命できません。 このため、2008年には当時の民主党など野党側が参議院で多数を占める「ねじれ国会」のもと、福田政権が提示した日銀総裁の人事案に同意が得られず、戦後初めて総裁が空席となる事態が起きました。 また「同意人事」の対象のうち▽日銀の正副総裁のほか▽人事院の人事官▽会計検査院の検査官▽公正取引委員長▽原子力規制委員長は「重要な任務を担っている」として、両院の議院運営委員会で候補者から所信を聴取し質疑を行うことになっています。 所信の聴取をめぐっては、10年前に日銀の副総裁候補だった岩田規久男氏が衆議院での聴取の際に、2%の物価安定目標を実現する期限について問われ「2年で達成できると思うし、達成しなければならない。達成できない時の最大の責任の取り方は辞職することだ」と述べ、その後、目標が達成できず発言との整合性を問われました。
その後、各党が人事案への賛否を検討し、両院の本会議で採決が行われます。本会議での採決は現在の副総裁の任期が満了となる3月19日までに行われる見通しです。
★株価 午前終値 294円46銭値上がり
「コンビニの弁当で値上がり実感」
「金融緩和の出口戦略 タイミングや順序控える」
「ETF買い入れ 効果あったが課題も」
「魔法のような特別な金融緩和政策ない」
「2%のインフレ目標 達成されれば国債の購入縮小」
「長期金利操作対象短縮する考え 1つのオプション」
「日銀は政府の子会社ではない」
「物価目標の達成 第1の目標」
「大規模な金融緩和 やむをえなかった」
「国債買い入れ 財政ファイナンスではない」
「貨幣的な現象 見えないこともある」
「為替変動 影響不均一に注意」
「サプライズは最小限に市場対話を」
「通貨に対する信頼・信任 極めて根本的に重要」
「2%目標達成時期 確信もって答えることできない」
「共同声明 金融政策ある程度の成果上げてきた」
「消費者物価上昇 生活にマイナスの影響を与えている」
「共同声明 ただちに見直す必要あるとは考えていない」
「マイナス金利 プラスの影響も」
「YCC 副作用を生じさせている面 否定できない」
「YCC 時間をかけて議論を重ね 望ましい姿を」
「ETFの出口戦略 時期尚早」
「国債 売却オペレーションに至ることはないだろう」
「物価目標達成された暁には大量の国債購入やめる」
「2%早期実現 表現を当面変える必要はない」
★植田氏発言で株価 一時300円超値上がり
「2%目標 のりしろとして適当ではないかという考え方」
「金融政策 効果発現するのに時間 要する」
「物価上昇率2% 見通せれば正常化へ踏み出すこと出来る」
「消費者物価指数 1月がとりあえずのピークか」
「金融緩和維持で前向き投資を後押しすること重要」
「海外中央銀行との連携、市場関係者との対話を適切に」
「中小企業・地方経済 きめ細かな把握に努める」
「物価安定の実現には自主的な運営が適切」
「賃上げできる環境を整えることが重要」
「目標の達成に全身全霊を傾けていく」
「総仕上げを行う5年間としたい」
「発言・行動が大きなインパクト及ぼし得ること十分認識」
「金融緩和 継続することが適切」
「物価上昇率2% 持続的・安定的達成には時間 要する」
「政府と密接に連携しながら適切な政策行う」
「経済・金融市場めぐる不確実性 極めて大きい」
9:30 植田氏への所信聴取 始まる
《所信聴取ポイントは》
所信聴取の流れは
ポイント1 大規模緩和策の受け止め
ポイント2 政府、日銀の関係とそれぞれの役割
植田和男氏とは
内田眞一氏とは
氷見野良三氏とは
国会の「同意人事」とは
今後の流れは