財源は「民間の自発的な貢献などを通じて準備する」としていて、韓国企業などの寄付で賄う見通しです。
パク外相は、原告の高齢化に加えて、判決の確定後、日本政府による輸出管理の厳格化や、日本との軍事情報包括保護協定=GSOMIAなどをめぐっても対立が深まったことを踏まえ「冷え込んだ韓日関係は事実上放置されてきた。今後は、韓日関係を未来志向的により高いレベルに発展させていきたい」と強調しました。
さらに「韓日関係の未来志向的な発展のため、両国の経済界が自発的に貢献する案を検討していると聞いている。日本政府も、民間企業の自発的な貢献には反対しない立場だと理解している」と述べました。
ただ、一部の原告や支援団体は、日本企業による謝罪や賠償が不可欠で、財団の肩代わりは認められないと反発していて、韓国政府は引き続き理解を求めていく方針です。
「徴用」をめぐる問題を受けて、日韓関係は戦後最悪とも言われるまでに冷え込みましたが、去年就任したユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が、関係改善に意欲を示す中、韓国政府は「現金化」が行われる前に問題の解決を図りたいという姿勢を打ち出すようになります。 韓国政府は、問題の打開策について話し合う官民合同の協議会を設置し、4回にわたって開かれた会合で、有識者らがさまざまな案について議論を重ねたほか、最高裁に対して、「日本との外交協議を続けている」などとする意見書を提出しました。 そうした中、韓国外務省はことし1月、裁判で賠償を命じられた日本企業に代わって韓国政府の傘下にある既存の財団が原告への支払いを行う案を軸に検討していることを明らかにし、日韓両国の間で協議が続けられてきました。 この案に対して、原告側の間では、あくまで被告となった日本企業による賠償と謝罪が必要で、財団による肩代わりは認められないと反発する声がある一方、裁判の長期化などを理由に、政府案を受け入れて早期の問題解決を図りたいという声も出ていました。
裁判の原告の1人のヤン・クムドク(梁錦徳)さんは、先月に行った記者会見で、「私が死ぬ前に日本から謝罪を受けたい」と述べたうえで、財団による支払いは受け入れられないという考えを示しました。 一方、政府の方針に理解を示す人もいます。 ソウル近郊のスウォン(水原)に住むイ・ギュメ(李圭梅)さんは、最高裁で勝訴した14人の原告の1人だった父親を10年以上前に亡くして以降も裁判に携わってきました。 イさんは先月、NHKの取材に対し「日本企業は最初から賠償しないと言っており、それは仕方がない。誰が支払うかは関係ない」と述べました。 そのうえで、「どんな形であれ、一日も早く問題が解決して、日韓関係がよくなればと思っている」と心情を打ち明けました。 また、別の原告だった父親を亡くし、その後も裁判に参加してきた、韓国中部のピョンテク(平沢)に住むパク・チェフン(朴在勲)さんは、「日本側の謝罪を受けたいが、思いどおりにはいかない。日本での裁判を含めてもう20年も関わり、年もとって疲れはてている。どんな形であれ、支払いを早く受け取って騒ぎを落ち着かせたい」と心境を明らかにしていました。
これまで、本人やその遺族を対象にした支援や追悼事業、さらに、当時の研究や啓発活動などにあたってきました。 財団の活動には、政府の予算のほか、1965年の日韓請求権協定に基づき経済協力資金が投入された、韓国の鉄鋼大手・ポスコなど韓国の民間企業からの支援金があてられています。
岸田総理大臣とユン・ソンニョル大統領は去年11月、およそ3年ぶりとなる首脳会談を行いましたが、ユン大統領は、日韓両国の首脳が相互に相手国を訪問する「シャトル外交」を再開させたい意向です。 また、韓国メディアは、ことし5月に広島で開かれるG7サミット=主要7か国の首脳会議にあわせてユン大統領が日本訪問を検討していると伝えています。 北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させる中、ユン大統領としては、アメリカを含めた3か国による安全保障面での協力の強化が不可欠だという立場で、今後も日韓の首脳会談の実現に向け、調整が進められるものとみられます。
「徴用」をめぐる裁判で、韓国の最高裁判所で日本企業に賠償を命じる判決が初めて確定したよくとしの2019年、日本政府は半導体の原材料など韓国向けの輸出管理を厳しくする措置をとりました。 韓国政府は、この措置を報復だとして強く反発してきた経緯もあり、今回の解決策の発表を受けて、日本側に解除を求めていく方針です。
一方、政府の方針に対し、原告側の一部にはあくまで被告の日本企業による賠償と謝罪が必要で、政府傘下の財団による肩代わりは認められないと反発する声が根強くあります。 原告側の弁護士は、財団が日本企業の支払いを肩代わりするという方法が、最高裁の判決に照らして法的に有効なのか、今後も裁判で争う可能性も指摘しています。
協定で日本政府は、有償・無償で総額5億ドルの経済協力を約束し、韓国政府は1970年代に、日本からの資金を運用して、「徴用」で死亡したと認定した人に対し、一人当たり30万ウォンを支給しました。 また、韓国政府は2008年以降、これまでの補償が道義的に不十分だったとして「徴用された」と認定した人や遺族に対しても、慰労金の支給や医療支援を行ってきました。 こうした中、2012年に韓国の最高裁判所が「徴用」をめぐって「個人請求権は消滅していない」とする判断を示し、日本企業に賠償を命じる判決が相次ぐようになりました。 そして2018年、韓国の最高裁で日本企業に賠償を命じる判決が初めて確定すると、原告側は企業が韓国国内に持つ資産を差し押さえて売却することを認めるように地方裁判所に申し立てました。 地方裁判所がおととし、これを認める決定を出し、日本企業側が即時抗告しましたが退けられ、その後、最高裁に再抗告し、現在も審理が続いています。
日本政府の反応は? 林外相「日韓関係健全に戻すもの 評価する」
最近の韓国政府の対応は
“反発” “理解” 政府方針に原告は
「徴用」の支援財団とは
解決策発表を受けて今後は
日韓請求権協定からこれまで