見直しのポイントは…
ではどのような考え方で判断をすればいいのか。
厚生労働省は考え方の例を示しています。
厚生労働省は、「以下のような場合には注意しましょう」として、着用が効果的な場面や着用を推奨する場面などについて考え方を示して、国民に呼びかけています。 【着用呼びかける3つの場面】 1 医療機関を受診する時 2 医療機関や高齢者施設などを訪問する時 3 通勤ラッシュ時など、混雑した電車やバスに乗車する時
ただ、おおむね全員の着席が可能であるもの(新幹線・通勤ライナー・高速バス・貸切バス等)は除く、としています。こちらは換気対策を取られていることが前提で、整然と座っている場面は、混雑には当たらないことが理由だということです。
このほか高齢者や、がんなどの基礎疾患のある人、そして妊娠している女性など重症化リスクの高い人は、流行期に混雑した場所に行く時にマスクの着用が効果的だとしています。
また、重症化リスクの高い人が多くいる医療機関や高齢者施設などの職員については勤務中のマスクの着用を推奨するとしています。
1 症状がある場合 2 新型コロナの検査で陽性となった場合 3 同居家族に陽性となった人がいる場合 こうした人は、まず、周囲に感染を広げないため外出を控えるよう呼びかけられています。そのうえで、通院などでやむをえず外出する場合には、人混みを避け、マスクを着用するよう呼びかけられています。
仕事先が求める場合や、出かけた先の施設や店舗が独自にマスクの着用を求めることはありえます。 厚生労働省は、事業者が感染対策上、または事業等の理由などによって、利用者や従業員にマスクの着用を求めることは許容されるとしています。 また各業界団体に対して、業種別のガイドラインの見直しと現場や利用者へ周知するよう呼びかけています。
このうち、「業界団体として事業者の判断に委ねる」とした対応が最も多く、ホテルやプロ野球、遊園地など153のガイドラインとなっています。 一方、業界として事業者に一律の取り扱いを定めているものもあり、「従業員のマスク着用を求める」が郵便やエステなど18、「従業員と利用者のマスク着用を求める」がプロゴルフやプロバスケットボールなど16のガイドラインとなっています。 厚生労働省は「本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう、個人の主体的な判断が尊重されるよう、ご配慮をお願いします」としています。
航空機の中でのマスクの着用については、業界団体の「定期航空協会」が3月13日から「乗客や従業員、個人の判断に委ねる」としています。
その上で、「これまで各社に対し、乗客などにマスクの着用を要請するよう求めていたガイドラインを改定するなど準備を進めるとともに、お客様に安心してご利用頂けるよう引き続き努めていきたい」としています。
文部科学省は、学校での教育活動では4月以降、着用を求めないことを基本とする方針を全国の教育委員会などに通知しています。 通知では4月以降の学校での教育活動について「マスクの着用を求めないことを基本とする」と明記していて「教育活動」には体育を含めた授業全般や合唱、運動部の活動などが含まれるということです。
また来賓や保護者の参加人数について「感染対策上での制限は必要ない」としていて、そうした人たちにはマスクの着用を求め、座席間の距離を確保するということです。 あわせて、基礎疾患などさまざまな事情でマスクの着用を希望する児童生徒がいることなどから学校などがマスクの着脱を無理強いしないようにすることや、差別が起きないよう適切に指導を行うことを求めています。
厚生労働省とは別に、専門家会合のメンバーらも考え方を示しています。 まず「その場の状況に応じたマスクの着用」が重要だとして、「外出時はマスクを持ち歩き、着用が呼びかけられる場面では着ける」としています。 その上で、「感染すること自体のリスク」「感染した場合、あるいは他人に感染させた場合に重症化するリスク」、この2つのリスクを考慮し、以下のポイントに注意して判断して欲しいとしています。
2 空間の広さ 3 その場にいる時間 4 目の前にいる人の重症化リスク 5 不特定集団のなかかどうか 新型コロナウイルスは、換気が悪く、「3密」のように狭い空間に人が密集している環境で感染リスクが高く、そうした場に長時間いることでさらに感染リスクが高まることが分かっています。 また、高齢者や持病のある人は感染した場合に重症化リスクが高く、そうした人が近くにいるかもしれない場所、つまり不特定多数の人が行き交う公共の混雑した場面では、より配慮が求められるとしています。
厚生労働省の専門家会合のメンバーなどが、マスク効果の科学的根拠をまとめた資料を示しています。
また、マスクの着用でまわりに感染を広げない効果について、各国の研究21件を解析した結果では、マスク着用がコミュニティ全体で推奨された場合は、新規感染者数や入院患者数、死者数を減少させる効果があることが示唆されたとしています。 さらに、専門家会合のメンバーなどがまとめた資料ではアメリカのハーバード大学の研究グループがマスクの効果について去年、国際的な医学雑誌に発表した研究を引用しています。 この研究ではマスクの着用義務が解除された地区の学校と着用が続けられた地区の学校で子どもと教員の感染状況を比較していて、着用義務を解除した地区ではおよそ3か月半の間に感染したのは1000人あたり134.4人に上りましたが、着用を続けた地区では66.1人と少なくなっていてマスクの着用には感染者数を抑え学校の欠席日数を減らす効果があり、感染拡大の際には有効な手段だとしています。
名古屋工業大学の平田晃正教授のグループは、さらに感染力の高い変異ウイルスが現れず、人出がコロナ前の水準まで緩やかに戻るといった想定で、AI=人工知能を使って東京都の1週間平均での1日あたりの感染者数を試算しています。
50%の人が着用を続けるとおよそ5500人で、当面、大規模な感染拡大は避けられるという試算結果になったということです。
さらに「高齢化が進んだ日本で高齢者の間でクラスターなど大きく感染が広がれば多くの人が亡くなってしまう。こうした重症化リスクの高い人たちが感染する機会をなるべく減らしたほうがよく、そのために配慮することが重要だ。他人に感染させない配慮を持ってマスクの着用を判断してほしい。不特定多数の人が集まる場所では、高齢者や人工透析を受けている人など重症化リスクの高い人たちもいる。混雑した公共交通機関を含め不特定多数の人がいて、換気が悪く、密になるような、感染リスクの高い場面ではこれからもマスクの着用を考えてもらってもよいのではないかと思う」と述べています。 一方で、外す判断ができる場面について「会社などいつも会っている人たちがいる場で、重症化リスクの低い若い人たちしかおらず、みんなワクチンも打っているという状況は不特定多数の人がいる場面とは明らかに違う。高齢者もいないし、高齢者と生活している人もいないと言うことなら、ややリラックスしてもいいという判断もできるのではないか」とも述べています。
全く未知の病気だった新型コロナウイルスによって国民全員がマスク着用を求められるという、ある意味、異常な状態が続いてきました。 しかし、このところは感染者の減少が続き、ワクチンや治療薬、検査を不自由なく受けることができ、死亡率も抑えられています。まさにいま、マスクを外した日常生活を取り戻すことを探る時期にさしかかっているのです。 ただ、ウイルスは今も私たちの周りに存在し、油断すると新たな流行を生んでしまうおそれもあり、それを防ぐためにいかに効率的にマスクを使っていくかが鍵になります。
重症化リスクの高い人たちを守ることになにより気をつけること。特に、次の3つの場面ではマスクを着けてください。
代表的なのは満員電車ですが、抗がん剤で治療中の高齢者が座っていて、その前に立っている人が突然くしゃみや咳き込んだりして感染を広げてしまうリスクがあるかもしれないので、マスクの着用は必要です。 ▼次に医療機関の患者や高齢者施設の入居者、在宅ケアを受けている人と接するような場面です。重症化リスクが高い人と接すると分かっている場合では、引き続き着用が不可欠となります。 ▼また健康なように見えても、生活の中で常にマスクを着けている人もいます。 実は人知れず、持病があるのかもしれません。 また、お年寄りと一緒に住んでいて、家にウイルスを持ち込みたくないのかもしれません。こうした人がもしもいれば、周りの人が少し気を配り、思いやりの気持ちでマスクをつけることも大切です。 私はそれを「思いやりマスクエチケット」と呼んでいますが、そうした習慣も大事になってくると思います。
全く自然な考えです。NHKの世論調査で「マスクを引き続きつけると思う」と答えた人が50%に上ったそうですが(調査は2023年2月に実施)、納得できる数値でしばらくは多くの人が着け続けると思います。
実際に日本が海外、特にG7各国と比べて、人口あたりの感染者数や死亡者数が少なく、インフルエンザもこの冬、大きく流行させずに乗り切ることができたのは、多くの人がマスク着用に協力して下さったことが大きいと考えられます。 また、今、感染者が少なくなっているとはいえ、可能な範囲での感染対策は維持してもらう必要もあります。 マスクを外していい時はどんな場面か、それぞれが自分でリスクを考えて、外すことが大事になります。
季節性インフルエンザと同じ5類に移行されるわけですから、基本的にインフルエンザの対応に加えて、少し強めに対策するイメージを持ってもらえたらいいと思います。 コロナ前にも冬のシーズンは多くの人がインフルエンザ予防のためにマスクをしていたじゃないですか。
私も、周りが混雑していないとき、外を出歩いているときとか部屋にあまり人がいないときはマスクを着けませんが、常にマスクをポケットに入れて持ち歩いて、満員電車やお客さんに会うときは着けていますね。 そういうふうに、リスクを想像し、減らすような形でマスクを使うというのをやっていくのがいいんじゃないでしょうか。
確かに「もうマスクは嫌だ」と言って、不特定多数の人が集まる場面や病院でさえもマスクを着けないという人が出てきてしまう可能性はあります。 また、マスクを着けていたいという人たち、外したいという人たちで両極端になって対立を生んで、差別や偏見や誹謗中傷が起きることがないかどうかも、少し心配しています。 そうしたことを避けるために大事なのは、やはり、思いやりです。 マスク着用が個々人の判断となるからこそ、周りの人の感染症への振る舞いや考え方に気を配ることが大切になるのではないかと思います。
Q1.着けた方がいいとされている場面は?
Q2.せきなど症状がある場合は?新型コロナと診断の場合は?
Q3.仕事や外出時 施設などでマスク求められることはない?
Q4.航空機の中では着けるべき?
Q5.学校は?
Q6.専門家会合の考えは?
Q7.そもそもマスクは感染対策に有効なのか
Q8.個人判断になり初の春休みや大型連休 感染拡大は?
尾身会長「他人に感染させない配慮を」
舘田教授「思いやりでマスクを着けることも考えて」
Q.なぜこのタイミングでマスク着用を緩和するのでしょう?
Q.「効率的に」というのはどういうことなのでしょうか
Q.自分が感染したくない 花粉症で外したくないという人も…
Q.『自分でリスクを考える』のが難しいという人もいます
Q.同じ場面でも、人によって判断が分かれそうです