キム委員長は駅で専用車に乗り換え、およそ2時間半後、ハノイ中心部にある宿泊先のホテルに到着しました。その後、キム委員長はホテルにとどまったままで、首脳会談に向けて準備を進めているものとみられます。
北朝鮮としては、27日からの首脳会談で、核実験場をすでに閉鎖したことなど、非核化に向けた姿勢を強調したうえで、制裁の緩和やみずからの体制保証につながる朝鮮戦争の終戦宣言などについて、トランプ大統領に譲歩を求めるものとみられます。
一方で、首脳会談をめぐっては、前日の26日夕方になっても詳しいスケジュールや会談場所が明らかにされていません。
去年6月に行われた1回目の米朝首脳会談では、1週間前に会談場所が発表されており、現地では双方の間でぎりぎりの調整が続いているのではないかとの見方や、ホスト国のベトナムが情報管理を徹底しているためではないかとの見方も出ています。
トランプ大統領は26日夜に到着
一方、アメリカのトランプ大統領は、日本時間の26日夜遅く、ベトナムに到着する予定です。
トランプ大統領は27日の日中、開催国のベトナム側と2国間会談を行ったあと、夕方からキム委員長と通訳のみを交えた最初の会談を開き、その後、夕食をともにする予定です。
夕食会にはアメリカ側からは、トランプ大統領、ポンペイオ国務長官、それにマルバニー首席補佐官代行が、北朝鮮側からはキム委員長、側近のキム・ヨンチョル副委員長がそれぞれ出席する見通しです。
また、トランプ大統領よりも一足先にベトナムに入ったポンペイオ国務長官は26日、北朝鮮側との実務協議を行ってきたビーガン特別代表から直接、報告を受けたということです。
北朝鮮の非核化をめぐっては、核施設の申告や査察を求めるアメリカと、一部の核施設の廃棄と引き換えに見返りを求める北朝鮮との間で立場に隔たりがあり、去年6月以来となるトップどうしの会談で、トランプ大統領が北朝鮮の非核化に向けた具体的な措置を引き出すことができるかが焦点です。
米のメディアセンター急きょ変更に
米朝首脳会談にむけて、アメリカのホワイトハウスは、記者に対する情報提供を行うメディアセンターを当初、ハノイ中心部のホテルに設けるとしていましたが、26日朝になって、急きょベトナム政府がハノイの国際展示場に設けた国際メディアセンターの中に変更しました。
ホワイトハウスがメディアセンターの設置を予定していたホテルには26日、北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長が到着し、アメリカ側はこれに押し出された形です。
アメリカと北朝鮮の間で事前の調整が不足しているのではないかとの受け止めも出ています。
30年にわたってホワイトハウスなどを取材してきたというアメリカのラジオ局の記者は「変更したのはキム委員長が宿泊するからだと思うが、こんな経験は初めてだ」と話していました。
また、ワシントンから来たイギリスメディアの記者は「直前になって変更を伝えられた。ベトナム政府か北朝鮮政府がキム委員長の使うホテルとメディアセンターを一緒にしたくないと思ったのではないか」と話していました。
北朝鮮の国営メディアは?
米朝首脳会談を27日に控え、北朝鮮の国営メディアは連日、アメリカとの関係に言及しています。
25日付けの国営ウェブサイトは、これまでに北東部の核実験場を爆破して閉鎖したと発表したほか、弾道ミサイルの発射を中止したと強調し、「われわれの努力にアメリカが相応な実践措置で応えれば、両国関係は新たな終着点に至る」として、トランプ政権に制裁の緩和などの措置に出るよう求めています。
また、26日の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は社説を掲載し、「キム委員長が2回目の首脳会談のために、ピョンヤンを出発したという便りが伝えられた時から、全国が炎のるつぼのように沸き返っている」として、トランプ大統領との会談に臨むキム委員長をたたえ、会談への期待感をにじませました。