21年ねん前まえの9月つき17日にちに行おこなわれた初はつの日にち朝ちょう首脳しゅのう会談かいだんで、北朝鮮きたちょうせんは日本人にっぽんじんの拉致らちを認みとめ、5人にんの被害ひがい者しゃが帰国きこくしましたが、安否あんぴが分わからない被害ひがい者しゃは、政府せいふが認定にんていしているだけでも12人にんに上のぼっています。

この間このかん、子こどもとの再会さいかいを果はたせないまま亡なくなった親おやは8人にんとなり、健在けんざいな親おやは、横田よこためぐみさんの母親ははおやで87歳さいの早はや紀江のりえさんと、有本ありもと恵子けいこさんの父親ちちおやで95歳さいの明弘あきひろさんの2人にんだけとなっています。

横田よこためぐみさんの弟おとうとで、家族かぞく会かいの代表だいひょうを務つとめる横田よこた拓也たくやさんは「また9月つき17日にちを迎むかえ、あれからずいぶん時間じかんがたってしまったなと思おもう。親おや世代せだいの高齢こうれい化かは本当ほんとうに厳きびしい現実げんじつで、有本ありもとさんのお父おとうさんや私わたしの母はは、早紀さき江こうには何なにとしても自分じぶんの子こどもに会あわせてあげたい」と述のべました。

そのうえで「キム・ジョンウン（金きむ正ただし恩おん）総そう書記しょきと日本にっぽんの総理そうりが向き合むきあって首脳しゅのう会談かいだんを開ひらかないかぎり、拉致らち問題もんだいを大おおきく前進ぜんしんさせることはできない」と述のべ、早期そうきに日にち朝ちょう首脳しゅのう会談かいだんを行おこない、親おやの世代せだいが存命ぞんめいのうちにすべての被害ひがい者しゃの帰国きこくが実現じつげんするよう、政府せいふの取り組とりくみと北朝鮮きたちょうせんの決断けつだんを求もとめました。

家族かぞく会かいはことし新あたらしい活動かつどう方針ほうしんに、「親おや世代せだいが存命ぞんめいのうちに被害ひがい者しゃ全員ぜんいんの帰国きこくが実現じつげんするなら、北朝鮮きたちょうせんに人道じんどう支援しえんを行おこなうことに反対はんたいしない」と明記めいきしました。

拉致らちの被害ひがいに苦くるしめられてきた家族かぞく会かいが条件じょうけん付つきとは言いえ、北朝鮮きたちょうせんへの”支援しえん”に踏み込ふみこんだのは26年ねん前まえに会かいを結成けっせいして以降いこう、初はじめてのことです。

一方いっぽう、岸田きしだ総理そうり大臣だいじんは日にち朝ちょう首脳しゅのう会談かいだんを実現じつげんさせるためみずからが直轄ちょっかつするハイレベル協議きょうぎを始はじめたいという考かんがえを示しめしていて、政府せいふの実行じっこう力りょくが問とわれる局面きょくめんに入はいっています。

横田よこためぐみさん 弟おとうとの思おもいは

家族かぞく会かい代表だいひょうの横田よこた拓也たくやさんが、日にち朝ちょう首脳しゅのう会談かいだんから21年ねんになるのにあわせて取材しゅざいに応おうじました。

46年ねん前まえに拉致らちされた4つ年上としうえの姉あね、めぐみさんとの思い出おもいでについて、「すごくしっかりしたお姉ねえさんでした。拉致らちされる前まえは広島ひろしまに住すんでいましたが、弟おとうとの哲也てつやと3人にんで、プールに行いって、終おわったあとにはデパートの下したにあるパン屋やさんでコーヒー牛乳ぎゅうにゅうを飲のみながら一緒いっしょにワイワイ楽たのしんだりとか浴衣ゆかたを着きてお祭まつりに行いったりとか、そういった楽たのしい時代じだいの記憶きおくもたくさんあります。一緒いっしょにお風呂ふろに入はいってワイワイ楽たのしんだことも覚おぼえています。あるとき姉あねの持もっていた大切たいせつなおもちゃの人形にんぎょうを私わたしが投なげて壊こわしてしまって、けんかをしてるけれども、めぐみは私わたしのことをどなったりせず、唇くちびるをかみしめながら食くいしばって我慢がまんをして、私わたしが投なげたことを、黙だまって許ゆるしてくれました」と語かたりました。

そのうえで、現在げんざい58歳さいのめぐみさんについて「全まったく58歳さいのめぐみは想像そうぞうできないです。私わたしたちがよく目めにするかわいい赤色あかいろとか明あかるい色いろの服ふくを着きた、ませた小ちいさいめぐみちゃんしか思い出おもいだせないし、拉致らちされる前まえの幸しあわせな明あかるいめぐみと、もう一度もういちど会あいたいなと、本当ほんとうにあの頃ころの楽たのしい時間じかんを返かえしてほしいなということだけです」と話はなしました。

また、救出きゅうしゅつ活動かつどうの先頭せんとうに立たち続つづけ、3年ねん前まえに亡なくなった父親ちちおやの滋しげるさんについて「父ちちは私わたしが子こどものころ、一度いちど、お風呂ふろに入にゅうろうとした際さいに、お湯おゆを頭あたまにかけて、息いきを押おし殺ころして声こえを押おし殺ころして泣ないていた時ときに1回かいだけ遭遇そうぐうしたことがあるんです。子こどもに自分じぶんの涙なみだを見みせられない、動揺どうようした姿すがたは見みせられないということで、きぜんとしたふるまいでしたけども、お湯おゆを頭あたまにかけて『泣ないていない』と自分じぶんに言い聞いいきかせて見みせかけて必死ひっしに声こえを押おし殺ころして泣ないていました。大人おとなに使つかうことばではないけれども、本当ほんとうに悲かなしくてかわいそうでした。父ちちの強つよい願ねがい、思おもいは絶対ぜったいに忘わすれることはないし、形かたちにしてあげたいと思おもっています」と語かたりました。

さらにことし春はるに体調たいちょうを崩くずして、一時いちじ、入院にゅういんした母親ははおやの早はや紀江のりえさんについて「『目めまいがするような形かたちで、苦くるしくなって、ああもしかしたらこのまま死しんじゃうのかなって思おもった』ということを母はは自身じしんから聞ききましたが、そういうことばを直接ちょくせつ聞きくと、やはり残のこされた時間じかんは本当ほんとうに限かぎられてるんだなと感かんじるし、ことばだけではなくて、現実げんじつの問題もんだいとしてそういうことに今こん直面ちょくめんしてるということを肌はだで感かんじました。日本にっぽん政府せいふには時間じかん的てき制約せいやくがあるから早はやく解決かいけつしてほしいといつも言いっていますが、母ははの話はなしを聞きいたときには、本当ほんとうに悠長ゆうちょうなことは言いってられないんだと感かんじました」と述のべました。

そして、「母ははの本当ほんとうにシンプルな希望きぼうは、めぐみが帰かえってきたら、草原そうげんの上うえでめぐみと寝転ねころがって青あおい空そらに浮うかぶ白しろい雲くもを見みて、『やっと自由じゆうな時間じかんができたね』と話はなしをしたいだけなんです。何なにのぜいたくもない。誰だれにでもいつでもどこでもできる、そんなことが46年間ねんかんできていない。その小ちいさな希望きぼうを、母ははにはかなえてあげたいなというふうに思おもっています」と話はなしました。