米べいFRBパウエル議長ぎちょう「適切てきせつならばさらに金利きんり引き上ひきあげる用意ようい」

西部せいぶワイオミング州しゅうの高原こうげんリゾート地ちで開ひらかれているシンポジウム「ジャクソンホール会議かいぎ」にはFRBのパウエル議長ぎちょうや日銀にちぎんの植田うえだ総裁そうさい、ヨーロッパ中央ちゅうおう銀行ぎんこうのラガルド総裁そうさいのほか、著名ちょめいな経済けいざい学者がくしゃなどが一堂いちどうに集あつまり、「世界せかい経済けいざいの構造こうぞう転換てんかん」をテーマに議論ぎろんを行おこなっています。

パウエル議長ぎちょうは25日にち、このシンポジウムで講演こうえんし、「これまでの金融きんゆう引き締ひきしめによってインフレがピークから低下ていかしたことは歓迎かんげいすべきことだ」と述のべました。

一方いっぽう、GDP＝国内こくない総そう生産せいさんの伸のび率りつがことしに入はいってから予想よそうを上回うわまわり、個人こじん消費しょうひは特とくに底堅そこがたいこと、そして、これまで急きゅう減速げんそくしていた住宅じゅうたく市場しじょうにも回復かいふくの兆きざしがあるなどと経済けいざいの力強ちからづよさを指摘してきしました。

そのうえでパウエル議長ぎちょうは「インフレは依然いぜんとして高たかすぎる。適切てきせつだと判断はんだんすればさらに利上りあげする用意よういがある」として改あらためてインフレ抑制よくせいを優先ゆうせんする姿勢しせいを示しめしました。

一方いっぽうで「金融きんゆうを引き締ひきしめ過すぎれば経済けいざいに不ふ必要ひつような悪影響あくえいきょうを与あたえる可能かのう性せいもある」と述のべ、景気けいきにも配慮はいりょする姿勢しせいを示しめしました。

FRB元もと副ふく議長ぎちょう「議長ぎちょうは慎重しんちょうになるだろう」

FRBの元もと副ふく議長ぎちょうでプリンストン大学ぷりんすとんだいがくのアラン・ブラインダー教授きょうじゅはジャクソンホールでNHKのインタビューに答こたえました。

このなかでFRBの金融きんゆう政策せいさくをめぐる現状げんじょうについてブラインダー教授きょうじゅは「金融きんゆう政策せいさくはいま興味深きょうみぶかい岐路きろに立たっていると思おもう。金融きんゆう引き締ひきしめを優先ゆうせんすべきというタカ派は的てきな議論ぎろんもできるし、景気けいきに配慮はいりょすべきだというハト派は的てきな議論ぎろんもできる。これまではインフレを抑え込おさえこむため利上りあげしなくてはならないことは明あきらかだったが今いまはFRBの金融きんゆう政策せいさくを決きめるメンバーのあいだでは多おおくの議論ぎろんが行おこなわれている。ただ、パウエル議長ぎちょうはどちらの側がわにもつかないようとても慎重しんちょうになるだろう」と述のべました。

また、景気けいき後退こうたいを招まねくことなく物価ぶっか目標もくひょうの2％までインフレ率りつを引き下ひきさげることができるかという問といに対にたいしては「1年ねん半はん前まえに同おなじ質問しつもんをされたらとても無理むりだと答こたえただろうがいまはできると考かんがえている。インフレ率りつはかなり低下ていかし、FRBが利上りあげを開始かいしして以降いこう、失業しつぎょう率りつは変かわっていないからだ」と述のべました。

その上うえで、今後こんごの追加ついか利上りあげについて「私わたしが金融きんゆう政策せいさくを決きめる会合かいごうのメンバーであったら次回じかい会合かいごうでの利上りあげ見送みおくりを支持しじする。ただ、次つぎの会合かいごうでは0.25％の利上りあげを決きめるかもしれない。その場合ばあいでもFRBは利上りあげがこれで終おわりだと確信かくしんを持もっているわけではなく、経済けいざい指標しひょうしだいという状況じょうきょうが続つづくだろう」と述のべました。

元もとIMFエコノミスト「簡潔かんけつでタカ派は的てきなメッセージから始はじめた」

パウエル議長ぎちょうの講演こうえんについて、元もとIMF＝国際こくさい通貨つうか基金ききんのチーフエコノミストでカリフォルニア大学だいがくバークレー校こうのモーリス・オブストフェルド教授きょうじゅはNHKのインタビューに対にたいし、「非常ひじょうに簡潔かんけつで金融きんゆう引き締ひきしめを優先ゆうせんするタカ派は的てきなメッセージから始はじめたと思おもう。追加ついかの金融きんゆう引き締ひきしめを否定ひていせず、少すくなくともインフレ低下ていかの証拠しょうこを見みるまでは金融きんゆう引き締ひきしめを続つづけることは確たしかで将来しょうらいの利下りさげの可能かのう性せいにも言及げんきゅうしなかった」と述のべました。

一方いっぽうで、FRBが来月らいげつの会合かいごうで利上りあげに踏み切ふみきるかどうかについては「経済けいざい指標しひょうに大おおきく左右さゆうされるだろう」と述のべた上うえで「インフレが強つよまったり、逆ぎゃくに景気けいきが急速きゅうそくに減速げんそくしたりするような大おおきなニュースがなければ、FRBは現在げんざいの政策せいさく金利きんりを維持いじしこれまでの金融きんゆう引き締ひきしめの効果こうかを見極みきわめることになる」という見方みかたを示しめしました。

また、急速きゅうそくな利上りあげにもかかわらず景気けいきが減速げんそくしていない現状げんじょうについては金利きんりの影響えいきょうをすぐには受うけにくいサービス産業さんぎょうの堅調けんちょうさが要因よういんだとしたうえで金融きんゆう政策せいさくは遅おくれて影響えいきょうが表あらわれるとして今後こんご景気けいきが減速げんそくする可能かのう性せいがあると述のべました。

パウエル議長ぎちょうの発言はつげんの主おもな内容ないよう

FRBのパウエル議長ぎちょうは冒頭ぼうとう、「去年きょねんのジャクソンホールのシンポジウムで短みじかく、直接ちょくせつ的てきなメッセージを伝つたえた。ことしは少すこし長ながいが伝つたえたいことは同おなじだ」と述のべました。

また、FRBがインフレの実態じったいを見極みきわめる指標しひょうとして重視じゅうししているPCE＝個人こじん消費しょうひ支出ししゅつの物価ぶっか指数しすうについて「変動へんどうの激はげしいエネルギーと食品しょくひんをのぞいた物価ぶっか指数しすうがピークから徐々じょじょに低下ていかしているということは歓迎かんげいすべきことだ」と述のべる一方いっぽうで「インフレが持続じぞく的てきに低下ていかしているという確信かくしんを持もつための始はじまりに過すぎない」として、この傾向けいこうが続つづくかどうか見極みきわめる考かんがえを示しめしました。

労働ろうどう市場しじょうについては「雇用こよう者しゃ数すうの伸のびが著いちじるしく鈍化どんかするなど徐々じょじょに正常せいじょう化かしている」と述のべました。

また、インフレの要因よういんとなっている人手ひとで不足ふそくに伴ともなう賃金ちんぎんの上昇じょうしょうも徐々じょじょにではあるものの鈍化どんか傾向けいこうになっていると指摘してきしました。

FRBの金融きんゆう政策せいさくをめぐっては「金融きんゆう引き締ひきしめの効果こうかが経済けいざい活動かつどうやインフレに与あたえる時間じかん差さについては不確ふたしかで評価ひょうかは非常ひじょうに複雑ふくざつだ」としたほか「金融きんゆうを引き締ひきしめすぎてしまうリスクと引き締ひきしめが弱よわすぎるリスクのバランスを取とることが仕事しごとを複雑ふくざつにしている。われわれは曇り空くもりぞらの下もとで、星ほしを頼たよりに航海こうかいしている」と述のべ今後こんごの政策せいさくの難むずかしさを打ち明うちあけました。

パウエル議長ぎちょうは「さらに金融きんゆうを引き締ひきしめるか、いまの金利きんり水準すいじゅんを維持いじし、さらなる経済けいざい指標しひょうを待まつかどうかは慎重しんちょうに判断はんだんする」としたうえで講演こうえんの最後さいごを「任務にんむが完了かんりょうするまでやり遂やりとげる」と去年きょねんの講演こうえん以降いこう、繰り返くりかえしてきたフレーズで締しめくくり、物価ぶっか目標もくひょうの2％にまでインフレを抑え込おさえこむ決意けついを改あらためて示しめしました。