国内外の対応の動きをまとめました。
政府・与党 さまざまなレベルで対応改めるよう働きかけへ
福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する措置が始まったことを受けて、中国政府は日本産の水産物の輸入を全面的に停止しました。
これについて自民党の萩生田政務調査会長は「科学を根拠にせず政治的な思惑で輸出入を止めることはあってはならない」と批判しました。
こうしたなか、公明党は28日から予定していた山口代表の中国訪問を延期すると発表しました。
中国側から「日中関係の状況に鑑み適切なタイミングではない」と伝えられたとしていて、処理水の放出が影響したものとみられます。
今回の事態について政府・与党内からは山口氏自身が「日中関係全体に影響を及ぼすことは好ましくない」と述べるなど、中国との関係が冷え込むことへの懸念が出ています。
一方で中国の姿勢がすぐに変わるとも思えずきぜんと応じていくべきだという意見もあります。
こうした状況も踏まえ政府・与党は、日本が科学的な根拠に基づいて安全に放出を行っていることを国際社会に粘り強く発信していくとともに、中国に対してさまざまなレベルで対応を改めるよう働きかける方針です。
福島県内に中国からの着信相次ぐ 警察が注意呼びかけ
福島第一原発にたまる処理水の海への放出が始まった24日以降、福島県内の自治体や飲食店、学校などに中国の国番号「86」から始まる国際電話の着信が相次いでいます。
警察によりますと、警察のほか、県や自治体に県内の事業者などから「業務に支障が出ているのでなんとかならないか」といった相談が数多く寄せられているということで、福島県警察本部は26日夜県民に対し注意喚起を行いました。
このなかで警察は
▽身に覚えのない電話番号や番号非通知の電話には出ないこと
▽固定電話では身に覚えのないのにかかってきた電話番号をNTTの「迷惑電話おことわりサービス」に登録すること
▽携帯電話は国際電話の受信拒否の設定をすることといった対策をとるよう呼びかけています。
警察は自治体などと連携して、必要な捜査を進めるとしています。
北京の日本大使館 反日デモなどの警戒強める
北京にある日本大使館によりますと、処理水の放出とは関係のない日本国内の個人や団体に対して中国から嫌がらせの電話などが相次いでいるということです。
大使館は、中国当局に対して法律に基づいて厳正に対応するよう求めています。
また、大使館で26日開催される予定だった日本人ピアニストによるコンサートが延期となりました。
現地に住む日本人が多く集まるため、安全を考慮したとしています。
中国では2012年、日本政府が尖閣諸島を国有化したことをきっかけに反日デモが暴徒化し、日系企業などが被害を受けたことがあります。
これまでのところ大きなトラブルや騒ぎは確認されていませんが、日本大使館は「不測の事態が発生する可能性は排除できない」として反日デモなどへの警戒を強め、現地に住む日本人に対して、外出する際には不必要に日本語を大きな声で話さないことなど注意を呼びかけています。
中国のSNSに日本を非難するよう呼びかける投稿相次ぐ
福島第一原子力発電所にたまる処理水をめぐる日本の対応を受け、中国のSNSには、日本を非難するよう呼びかける投稿が相次いでいます。
SNSウェイボーの投稿の中には「『核汚染水』を海に流した日本を非難したい人は、この番号に電話してください」という文言とともに、日本の参議院の電話番号が記載されたものもあります。
また、東京都内の施設に電話をしたとされる動画では、男性が「なぜ『核汚染水』を海に放出するのか」などと一方的に中国語で話す様子がうつされています。
日本人学校の敷地には投石も 容疑者は拘束
中国 山東省青島にある日本総領事館によりますと、東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を薄めたうえで海への放出を開始した24日、中国人が青島の日本人学校の敷地に石を投げ込む事件が起きたということです。
学校の施設や子どもなどに被害はなく、容疑者はすでに警察に拘束されたということです。
外務省「極めて遺憾で憂慮」 中国国民に冷静な行動呼びかけ
こうした事態を受けて、外務省の鯰アジア大洋州局長は26日、東京にある中国大使館の楊宇・次席公使に対し電話で「極めて遺憾で、憂慮している」と伝えたうえで、中国国民に冷静な行動を呼びかけるとともに、中国に滞在している日本人や大使館の安全確保に万全を期すよう求めました。
また事態が深刻化しないように、中国政府が処理水について正確な情報を発信するよう要請しました。