世界ランキング14位の日本は、大会前最後のテストマッチとして日本時間の27日未明にイタリアのトレビゾで世界13位のイタリアと対戦しました。
日本は前半、スピードのあるイタリアのバックスに2つのトライを許しましたが、ラインアウトから素早くつないでウイングのジョネ・ナイカブラ選手がトライを決めたほか、スタンドオフの李承信選手が2本のペナルティーゴールを決めて11対17で折り返しました。
後半は12分にフルバックの松島幸太朗選手がトライを決めて16対20と4点差に迫りますが、16分にイタリアのバックスに再びトライを許しリードを広げられました。
日本は31分に相手ゴールライン付近で攻撃を重ねてセンターのディラン・ライリー選手がトライを決めて追い上げますが、37分と40分に連続トライを奪われて突き放されました。
日本は前後半で5つのトライを許して21対42で敗れ、ワールドカップ前、最後のテストマッチは課題の残る結果となりました。
ワールドカップは9月8日に開幕し、1次リーグ、プールDの日本は、日本時間の9月10日に世界22位のチリとの初戦に臨みます。
キャプテン姫野「ひとつのミスが命取りになる」
キャプテンの姫野和樹選手は、「正直、良い準備ができていたので、この結果になって残念だ。ポジティブな面もあるし、勝てるところまでいっていた。このレベルになると大事な局面での一つ一つのミスが命取りになる。そのところはいいレッスンになった」と振り返りました。
そしてキャプテンとして「自分たちの仕事を一人一人が100%遂行すれば、勢いをつけられるしスコアも取れる。キャプテンとして本番ではチームを自分のパフォーマンスで引っ張ることを意識したい」と話していました。
リーチ「残りの期間で仕上げていくしかない」
出場停止処分が明けて3試合ぶりの先発出場となったリーチ マイケル選手は「この試合が終わって自信を持ってワールドカップに行きたかったので悔しい気持ちがたくさんある」と振り返りました。
そのうえで「接点のところはそこまで力の差を感じていない。反省するところは反省して、自信を持つところは自信を持って残りの期間で仕上げていくしかない。きょうの結果を受け止めて最後の準備をしっかりやって本番で結果を出さないといけない」と話しました。
チーム最年長 堀江「良い方向に進んでいると思う」
先発で出場したチーム最年長の37歳、堀江翔太選手は「トライを取るという部分で、チームとしてどうしたいかというのは見えた部分もある。敵陣に入ってボールをキープできればトライをとれる場面があった。その精度をもっと上げたい」と振り返りました。
そのうえでチームの状態について「良い方向に進んでいると思う。個人のミスも少なくなってきたし、チームとしてどのようにアタックして、ディフェンスすればいいか見えてきた部分もある」と収穫を強調しました。
ジョセフHC「自滅することが多かった」
日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、試合を振り返って「安定したプレーができない時間が続いた。後半、選手たちは頑張って取り戻そうとしたが、自滅することが多かった。プレッシャーをかけ続けることができなかった」と話しました。
そのうえでワールドカップの開幕に向けて「選手が自信をつけることが大事になる。世界の強豪にどんなプレーが通用するか考えることも重要だが、プレーの精度を高めることが課題となっている」という認識を示しました。
データから敗因分析
ワールドカップ前、最後のテストマッチで「完成に近い形を見せたい」とイタリア戦に臨んだ日本代表でしたが、結果はダブルスコアの敗戦となりました。
その敗因を分析します。
まずはスタンドオフのプレースキックのミスの多さです。
先発出場した李承信選手と後半から出場した松田力也選手は、この試合、ペナルティーゴールとトライ後のゴールキックを合わせて6本蹴りましたが、成功したのはわずか2本でした。
このうちトライ後のゴールキックは3本とも失敗しました。
いずれも決まっていれば同点もしくは5点差以内となり相手にプレッシャーをかけられる展開になっただけに失敗が目立つ形となりました。
松田選手は「自分らしく蹴ることができなかった。もう一度、自分のルーティンでしっかり決めるように見直したい」と厳しい表情で話しました。
また、試合では接点で押し込まれ、なかなか前進できないシーンも目立ちました。
それはデータでも明らかになっています。
データ会社の速報値によりますと
ボールを持って走った回数は
▽日本が147回
▽イタリアが105回と日本が大きく上回り
パスの回数を見ても
▽日本が206回
▽イタリアが145回と日本が上回りました。
日本が細かくパスをつないで前進しようとしていたことがわかります。
しかし、実際にボールを持って前進した距離を比較すると
▽日本が534メートルで
▽イタリアが548メートルとイタリアが優位になりました。
日本は前進しようとしても相手の鋭いタックルに阻まれ、敵陣深くに攻め込みながらトライに結びつけられない場面もありました。
あおむけに倒された数を比較しても
▽日本が14
▽イタリアが8となっていて、接点で劣勢に立たされたことがトライを取りきれなかった要因として浮かび上がっています。
ほかにも連続攻撃を仕掛ける中でノックオンでボールを失ったり、ターンオーバーを許したりする場面もありました。
日本の速い攻撃の生命線ともいえるハンドリングでのミスは、これまでも課題となりましたが、大会直前のテストマッチでも修正されませんでした。
日本は、7月からのテストマッチと強化試合で1勝5敗と大きく負け越して本番に臨むことになります。
試合のあとジェイミー・ジョセフヘッドコーチや選手たちからは前向きに捉える発言も聞かれましたが、勝利に結びつかないだけに重苦しい雰囲気を隠すことはできませんでした。
開幕まで残り2週間をきる中、日本代表の修正力が試されています。