イギリス国防省は13日、南部ヘルソン州を流れるドニプロ川で、ロシア軍の補給ルートとなっている要衝の橋2つがウクライナ軍の攻撃で通行が難しくなったと指摘しました。
このため、対岸にいる数千人のロシア兵への補給物資を船で運ばざるを得なくなり、ロシア軍の補給の持続性が課題となっていると分析しています。
そのうえで東部ハルキウ州でも住民投票の準備が進められているという情報があることを明らかにしました。 そして、この高官は「ロシアの当局は、これらの地域を行政上管理する候補者を選定している。住民投票は早ければ数週間以内に実施される可能性がある」と述べ、強い懸念を示しました。 さらに、「ロシアによる住民投票は自由でもなければ、公正でもなく、投票結果は操作されるだろう。仮にロシアが計画を進めれば、われわれは追加の制裁を科し、迅速かつ厳しく対応する」と述べ、ロシア側を強くけん制しました。
ロシアとウクライナがトルコと国連の仲介で農産物の輸出に合意したあと輸出される農産物の多くは家畜の飼料などに使われるトウモロコシでしたが、今回初めて小麦が輸出されることになります。 これで、12日までにウクライナを出た船は合わせて14隻になりました。 また、荷物を積んでいない貨物船2隻も武器などが隠されていないか検査を済ませたうえで、ウクライナの港に入っていて、今後、穀物が安定的に輸出されることになるのかに注目が集まっています。 一方、EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領は12日「WFP=世界食糧計画の船がまもなく穀物を積み、オデーサの港からエチオピアに向かう」とツイッターで明らかにし、アフリカへの輸出の準備も進んでいるとしています。
今月5日からの砲撃では、送電線が損傷するなどし、その後もウクライナの原発公社エネルゴアトムが11日、原発が再び攻撃を受けたと発表しました。 一方、ザポリージャ州の親ロシア派の幹部も攻撃があったと主張し、ウクライナ、ロシアの双方がいずれも「相手の攻撃だ」と非難し合っています。 攻撃が続く背景として、エネルゴアトムのコティン総裁は9日、ロシア軍が送電線を破壊することで、現在のウクライナの送電網を遮断し、ロシアが一方的に併合した南部クリミアへの電力の供給を計画しているという見方を示しました。 また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、「ロシア軍は『核の盾』として原発を利用している。原子力事故に対する欧米の恐怖心をあおり、ウクライナへの軍事支援を行う意欲を低下させようとしている」とも指摘しています。 原発を盾にしたともみられる攻撃が原発周辺で相次ぎ、東部のドニプロペトロウシク州の知事は10日、ザポリージャ原発の近くを流れる川の対岸にある2つの町の住宅地がロシア軍によるロケット弾の攻撃を受け、13人の市民が死亡したと明らかにしています。 IAEA=国際原子力機関などによりますと、ザポリージャ原発には、6基の原子炉があり、出力は600万キロワットと、ヨーロッパでも最大規模で、ウクライナ国内の電力のおよそ2割を賄うことができるということです。 また、10日時点でザポリージャ原発では、6基のうち2基の原子炉が稼働しているということです。
それによりますと、砲撃があったのは11日午後で、原発施設内の消防署にある放射線のモニタリングに使う機材が破損するなどの被害が出ているということです。 IAEAは、提供された情報に基づき、原発の安全性に関わる重要なシステムに影響は出ていないと評価しています。 しかし、グロッシ事務局長は「相次ぐ砲撃は原発の安全性にとって深刻な問題だ」として原発に対する軍事行動の停止を改めて求めるとともに、IAEAの専門家チームによる現地への訪問の重要性を訴えました。
コールセンターは、ウクライナ政府が、軍事侵攻が始まった、ことし2月下旬から運営しています。 建物の一室に設けられたコールセンターには、連絡が取れなくなった息子や夫、恋人などの身を案じるロシア人から次々と電話がかかってきているといいます。 センターには「彼は、軍とは何の関係もない、ただのスポーツ選手だった。どこの部隊に配属されたのか教えてほしい」と涙ながらに訴える女性の声や、「夫はキーウに向かっていると言っていた。恐怖を感じないよう麻酔のような薬を飲まされたと言っていた」などの音声が残されています。 こうした問い合わせに対し、オペレーターは、13万件以上の情報を集めたデータベースと照合したうえで、これまでにおよそ2万6000件について「死亡した」とか「捕虜になっている」などと回答したということです。 コールセンターを設置した目的の1つは、ウクライナで起きているのは、プーチン政権が主張する特別な軍事作戦ではなく、多くの兵士や市民が亡くなっている「戦争」だという認識をロシア国内に広めることだということです。 現在は、安全を確保するため10人ほどが在宅で対応していてオペレーターの女性の1人は、「息子の行方を捜しているロシア人の父親が、ロシアがやっていることについて『申し訳ない』と泣きながら謝ってきたこともありました。コールセンターを通じて、ロシア政府が言っていることは、うそだと気付く人がロシアで少しでも増えることを期待しています」と話していました。
しかし、いまもほぼ毎日、防空警報が発令されるほか、場所によっては土のうが積まれたり、人の背丈ほどもあるバリケードが築かれていたりするなど、人々は、非日常と隣り合わせの生活を強いられています。 ウクライナのNGOは、6月18日と19日、ロシアが併合したクリミア半島や支配下においたとしている地域を除いて、18歳以上の人たちを対象に電話で世論調査を行い、1200人から回答を得ました。 その結果、全体の2割ほどが、暮らしていた家を離れて避難生活を続けているということです。 また、侵攻後に職を失った人のうち、3人に1人は、いまも「仕事に就いていない」と回答するなど、失業が課題の1つとなっています。 さらに、▽「疲労を感じていない」という回答は36%、▽「よく眠れている」と答えた人は44%にとどまるなど、戦闘の長期化が精神面に影響を与えている現状も明らかになっています。 NHKは、侵攻から半年が経過する現状についてキーウで住民に話を聞きました。 このうち妻と2歳の息子を地方に避難させ、独り暮らしをしながら仕事を探しているという男性は「みんな疲れていると思う。ただ、勝利したい気持ち、侵略してきた者たちを罰したい気持ちのほうが強い」と話していました。 また、20代の女性は、「たまに攻撃が強くなったりするので、緊張感がずっとある。戦争を経験するということは大変なことで、ストレスがたまったまま暮らしている」と話していました。 キーウ市に住む別の男性は「戦争は、まだ終わっていない。勇気のある人が命を失ったり、戦い続けたりしている中、私も頑張らなくてはいけない」と話していました。
米 バイデン政権高官「ロシアによる住民投票 追加制裁へ」
トルコと国連の仲介で合意後 ウクライナから小麦 初輸出
ザポリージャ原発 ロシア軍掌握後も攻撃が相次ぐ
IAEA グロッシ事務局長「原発の安全性にとって深刻な問題」
ウクライナのコールセンター ロシア人から次々と電話
キーウ 商業施設や飲食店が営業再開