大学側の対応や廃部方針をめぐるさまざまな反応、これまでの部の歩みなどを詳しくお伝えします。
日本大学は、アメリカンフットボール部の薬物事件の対応を受け、先月30日に文部科学省に「今後の対応方針」を提出し、これについて4日午後4時から林真理子理事長らが出席して記者会見を開く予定です。林理事長が会見に出席するのはことし8月以降、およそ4か月ぶりです。
すでに公表されている対応方針では、ガバナンス不全などが指摘された今回の問題について「強固なムラ社会意識」や「秘密主義」などが原因とし、今後は新たな監査部署の設置のほか、理事長らを補佐する部署を設け情報収集をサポートするスタッフを置くなどして、ガバナンス体制を見直すとしています。
アメリカンフットボール部の廃部の方針も示していて、在学生や新入生に不利益が生じないように対策を講じるとしています。
部については、最初に逮捕された部員が先週開かれた初公判で薬物を使っていた部員を「10人程度だと思う」と述べたほか、薬物が入った缶が寮で見つかった際の心境として「副学長がもみ消すと思った」と話しています。
一連の対応をめぐって、すでに学長と副学長の辞任が決定していて、4日の会見では林理事長が自身と大学の責任、それに大学や部の今後についてどのように言及するか注目されます。
大学側の対応に部員からは疑問の声
関係者によりますと、アメリカンフットボール部が無期限の活動停止処分を受けてから部員たちは週に1回ミーティングを行っていたということです。今後、先行きが見通せない中、部員たちは事件について意見を出し合い、再発防止策や来年度のチームのスローガンを話し合っていたということです。
こうした中、先月28日に大学の競技スポーツ運営委員会で廃部の方針が決まり、その日のうちに中村敏英監督から部員に対してメッセージアプリでアメフト部が廃部になると連絡があったということです。
なぜ廃部なのか、部員たちに詳しい説明はなく、翌日の29日に現役部員13人が大学に対して廃部の方針の撤回を求めておよそ180人分の署名と要望書を提出しました。
関係者によりますと、その後、今月6日に大学側がオンラインで部員たちへの説明会を行うという連絡があったということです。
説明会は、その後、対面とオンラインを併用する形に変更されましたが、部員からは、廃部の方針が説明もなくメッセージアプリで一方的に伝えられたことや、部員への説明会を大学が行う会見のあとに実施するという対応に疑問の声があがっていたということです。
廃部方針にさまざまな意見 ネットで署名活動も
日本大学のアメリカンフットボール部を廃部とする方針をめぐっては、さまざまな意見が出ています。
日本大学のアメフト部OBからは「現役部員はかわいそうだが、廃部はしかたない」といった声がある一方、「処分はあると思ったが、話し合いの場もなくいきなり廃部の方針が出るとは思わなかった」などといった声も出ています。
大学日本一を決める「甲子園ボウル」で日本大学と数々の名勝負を演じてきた関西学院大学アメリカンフットボール部は「複数の逮捕者が出ているとはいえ、特定の学生の事案なのか、チーム全体で責任を負うべきことなのか、警察の捜査による最終結果が出ていない段階で、日本大学がこれほど歴史のある部を廃部とする決定をしたという報道に同じく大学スポーツに携わるものとして驚いています。日本におけるアメリカンフットボールの歴史をともに築いてきた日大フェニックスがなくなるということに、残念という言葉で表せないほどの衝撃を受けています」とのコメントを出しました。
さらに、先月30日には関西学院大学アメフト部のOBとする男性がインターネット上で集めたおよそ1万余りの署名が大学に提出されました。
署名は今も行われていて、今月3日時点で2万7000余りの署名が集まっています。
名門 日大アメフト部とは
日本大学アメリカンフットボール部は、戦前の1940年に創部された関東の強豪で、83年の歴史がある名門チームです。
チームカラーの赤と「フェニックス」の愛称で知られ、1959年から2003年まで40年以上監督を務めた篠竹幹夫氏の指導のもと、「ショットガン」と呼ばれるパスを多用する攻撃のフォーメーションで日本のアメリカンフットボール界を席けんしました。
そして、1978年からは学生日本一を決める「甲子園ボウル」を5連覇し、歴代優勝回数は関西学院大に次ぐ21回、日本一を決める「ライスボウル」でも優勝4回と輝かしい実績を誇っています。卒業生が社会人リーグのトップチームでも活躍し、長く日本のアメリカンフットボール界をけん引する存在でした。
2018年に『悪質タックル』問題
しかし2018年、関西学院大との定期戦で起きた重大な反則行為、いわゆる『悪質タックル』をめぐる問題で、指導法やチームの管理体制について大きな批判をあびて当時の監督などが辞任しました。その後、新たな監督を公募するなどして立て直しを進め、2020年には3年ぶりとなる「甲子園ボウル」出場を果たしました。
関東学生アメリカンフットボール連盟などによりますと、ことし7月末時点で部員とスタッフが合わせて122人いました。全国トップレベルの選手がスポーツ推薦で入学するなど有望な選手も在籍していて、関係者によりますと関西など地方から来た部員を中心に30人ほどが学生寮で生活していたということです。
今シーズンは、悪質タックル問題を受けて休止されていた長年のライバル、関西学院大学との交流戦が4月に5年ぶりに行われ、関東学生リーグ1部の上位チームで戦う「TOP8」でリーグ戦の開幕を迎える予定でした。しかし、今回の薬物事件を受けて部は無期限の活動停止処分となり、連盟はリーグ戦の出場資格を停止して今シーズンの7試合すべてが中止となりました。
日本大学は、来シーズンリーグ1部の下位チームで戦う「BIG8」への降格が決まっていますが、廃部となればチームは連盟を「退会」することになります。