福島第一原発の
事故をめぐり
東京電力の
旧経営陣3人が
強制的に
起訴された
裁判で、
東京地方裁判所は、
3人全員に
無罪を
言い渡しました。
無罪を
言い渡されたのは、
東京電力の
勝俣恒久元会長(79)、
武黒一郎元副社長(73)、
武藤栄元副社長(69)の
旧経営陣3人です。
3人は福島第一原発の事故をめぐって検察審査会の議決によって業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴され、いずれも無罪を主張していました。
おととし6月から37回にわたって行われてきた裁判では、検察官役の指定弁護士が「巨大な津波が到達するという計算結果の報告を部下から受けた段階で津波の到達を予測でき、原発の運転を止める義務があった」として、禁錮5年を求刑しました。
一方、旧経営陣3人の弁護士は「計算結果の根拠は信頼できるものではなく、土木学会に検討を依頼して見解を得るという、合理的な手順を踏んでいた。被告らは、事故を予測できた可能性はなく、事故を防ぐこともできなかった」と主張し、いずれも無罪を主張していました。
判決で、東京地方裁判所の永渕健一裁判長は3人全員に無罪を言い渡しました。
判決 法廷内では
東京電力の旧経営陣3人は堅い表情で法廷に入り、弁護士の隣に並んで座りました。
裁判が始まると、旧経営陣3人は裁判長に促されて法廷の中央にある証言台の前に並んで立ちました。
冒頭で裁判長が「被告人らはいずれも無罪」と主文を読み上げると、3人は裁判長のほうをまっすぐに見据えて聞いていました。そして裁判長に向かって小さく頭を下げ、再び弁護士の隣に座りました。
主文が言い渡された際、傍聴席からは「うそ」などと声があがり、法廷内は一時、騒然としました。また検察官役の指定弁護士は額に手を当てて厳しい表情を浮かべていました。
地裁前では「納得いかない」の声
判決を受けて東京地裁の前では、今回の裁判のきっかけとなる告訴や告発を行ったグループのメンバーが「全員無罪 不当判決」と書かれた紙を掲げると、集まった支援者たちからは「どうしてなんだ、納得いかない」といった声が上がっていました。
紙を掲げた1人で、福島県大熊町から新潟県阿賀野市に避難している大賀あや子さん(46)は「なぜ、全員無罪という判決が出たのか、しっかり聞かないといけない。とても悔しいです」と落胆した様子で話していました。
東京電力「原発の安全対策に不退転の決意」
今回の判決について、東京電力は「当社元役員3名の刑事責任を問う裁判で、判決が言い渡されたことは承知しておりますが、当社としてはコメントは差し控えさせていただきます」としたうえで、「当社としては、『福島復興』を原点に、原子力の損害賠償、廃止措置、除染に誠心誠意、全力を尽くすとともに、原子力発電所の安全性強化対策に、不退転の決意で取り組んでまいります」というコメントを発表しました。