イギリスの経済紙、フィナンシャル・タイムズなどによりますと、アメリカのトランプ次期大統領の政権移行チームは、WHOからの脱退に向けた準備を進めていて、チームのメンバーらが専門家に対して、トランプ氏が大統領に就任する来月20日にアメリカの脱退を発表するつもりだと説明したということです。
トランプ氏は1期目の政権時にWHOについて、新型コロナウイルスをめぐる対応が中国寄りだと批判し、脱退することを国連に通知しましたが、バイデン大統領が就任初日にこの方針を撤回しました。
トランプ氏は2期目の厚生長官にワクチン懐疑派として知られるロバート・ケネディ・ジュニア氏を起用すると発表していて、保健政策の大幅な見直しが行われるとの見方が出ています。
一方でフィナンシャル・タイムズは専門家の話として、トランプ氏が政権移行チームの進言どおりにWHOからの即時脱退を優先して行うかは定かでないとも伝えています。
アメリカはWHOへの最大の資金拠出国で、仮に脱退すれば、WHOの運営に支障が出ることは避けられないほか、パンデミックなどに対する国際的な取り組みに影響が出るおそれもあり、トランプ氏の判断に世界の関心が集まることになりそうです。
WHO以外の国連機関とも対立か
トランプ次期大統領は、WHO=世界保健機関をはじめとするさまざまな国連機関との対立を深めることが予想されています。
シンクタンク「国際危機グループ」で国連を担当するリチャード・ゴーワン氏はNHKとのインタビューで、WHOについて「トランプ氏はおそらくアメリカを脱退させるだろう」という見方を示したほか、UNFPA=国連人口基金や、国連の人権理事会についてもボイコットする可能性が高いと指摘しています。
さらにICC=国際刑事裁判所についても、イスラエルのネタニヤフ首相に対して戦争犯罪などの疑いで逮捕状を出したことに共和党内で反発の声があがっていることから、「ほぼ確実にICCに関連する弁護士などに制裁を科すと思われる。同盟国にも資金拠出を止めるよう促すかもしれない」という見方を示しています。
アメリカは、トランプ氏の前政権時代の2018年に「反イスラエル的だ」などとして、ユネスコ=国連教育科学文化機関から脱退したほか、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関への資金拠出も停止しました。
林官房長官“WHO アメリカとも連携し課題解決を”
林官房長官は記者会見で「次期政権発足後のアメリカ政府の政策や、その影響などについて、予断をもって申し上げることは差し控えたい」と述べました。
そのうえで「国際保健の取り組みに貢献してきたアメリカともよく連携し、WHOが専門性を生かし、科学的知見に基づいて国際保健分野の諸課題の解決のために活動することを期待している。わが国としては、引き続き各国と連携し、国際保健の諸課題に取り組んでいくことに変わりはない」と述べました。