8割「価格転嫁できず」信金の聞き取り調査からは… 日銀短観 - Easy News

日銀にちぎんが発表はっぴょうした短観たんかん＝企業きぎょう短期たんき経済けいざい観測かんそく調査ちょうさで、大だい企業きぎょうの製造せいぞう業ぎょうの景気けいき判断はんだんを示しめす指数しすうは、3期き連続れんぞくで悪化あっかしました。9月つきに東京とうきょうの信用金庫しんようきんこが行おこなった聞き取ききとり調査ちょうさを中心ちゅうしんに、企業きぎょうは原材料げんざいりょう価格かかくの高騰こうとうや急速きゅうそくに進すすんだ円えん安やすでどのような影響えいきょうを受うけどう対策たいさくしているのか取材しゅざいしました。

聞き取ききとり調査ちょうさ「価格かかく転嫁てんかできない」84％「円えん安やすが影響えいきょう」半分はんぶん超ちょう

東京とうきょう品川しながわ区くに本店ほんてんを置おく城南じょうなん信用金庫しんようきんこは、取引とりひき先さきの中小ちゅうしょう企業きぎょう670社しゃを対象たいしょうに原材料げんざいりょう価格かかくの高騰こうとうや急速きゅうそくに進すすんだ円えん安やすが経営けいえいにどのような影響えいきょうを及およぼしているか9月つき、職員しょくいんが取引とりひき先さきを直接ちょくせつ訪たずねて聞き取ききとりました。

このうち品川しながわ区くの中華ちゅうか料理りょうり屋やでは店主てんしゅは、「コロナで客きゃくが減へりさらに円えん安やすによって輸入ゆにゅう食材しょくざいの仕入しいれコストが上あがっている。これが収益しゅうえきを圧迫あっぱくしているが客きゃくには転嫁てんかできない。客きゃくの給料きゅうりょうも上あがっておらず、物価ぶっかが上昇じょうしょうする中なかでは、生活せいかつを防衛ぼうえいすることになってしまう。これから先さきのことが不安ふあんだ」と話はなしていました。

また、品川しながわ区くにある鋼材こうざいの卸売おろしうり会社かいしゃの社長しゃちょうは、「商品しょうひんはすべて輸入ゆにゅう品ひんなので、円えん安やすで価格かかくが上あがり、ほかにも電気でんき代だいやガソリン代だいなども増ふえている。価格かかく転嫁てんかをしなければならないが、取引とりひき先さきも状況じょうきょうは理解りかいしているものの、なかなかすべて認みとめてくれないのが現状げんじょうだ」と厳きびしい現状げんじょうを説明せつめいしていました。

調査ちょうさによりますと、仕入しいれコストの増加ぞうかを価格かかくにすべて転嫁てんかできていると答こたえた企業きぎょうの割合わりあいは8.8％にとどまった一方いっぽうで、「まったくできていない」「ほとんどできていない」「一部いちぶできていない」と答こたえた企業きぎょうは合あわせて84％にのぼりました。

また、急激きゅうげきな円えん安やすが会社かいしゃの収益しゅうえきにどの程度ていどの影響えいきょうを及およぼしているか尋たずねたところ、「深刻しんこくな悪あく影響えいきょうがある」が10.8％、「やや悪あく影響えいきょうがある」が42.8％となり、「悪影響あくえいきょうがある」と答こたえた企業きぎょうが全体ぜんたいの半分はんぶんを超こえました。

城南じょうなん信用金庫しんようきんこの川本かわもと恭治きょうじ理事りじ長ちょうは「新型しんがたコロナの感染かんせんが落ち着おちついて、企業きぎょうの売り上うりあげは回復かいふく傾向けいこうにあるが、原材料げんざいりょうの高騰こうとう分ぶんを価格かかく転嫁てんかできず、利益りえきが確保かくほできていないところが多おおい。つなぎの融資ゆうしで解決かいけつできる問題もんだいではないので、原材料げんざいりょうを安やすく手てに入はいる仕入しいれ先さきを紹介しょうかいするなど対策たいさくを講こうじている」と話はなしていました。

円えん安やすは新しん興国こうこく通貨つうかにもコストアップの要因よういんに

このほか、各地かくちの企業きぎょうがさまざまな模索もさくを続つづけています。

三重みえ県けん桑名くわな市しに本社ほんしゃがある食品しょくひんメーカーでは、2000年ねんからレトルトのカレーなどをタイの子会社こがいしゃで生産せいさんし、輸入ゆにゅうして日本にっぽん国内こくないで販売はんばいしています。

しかし、会社かいしゃによりますと多おおくの原材料げんざいりょうの価格かかくが高騰こうとうし、特とくにメインの具ぐ材ざいの鶏肉けいにくは現地げんちの平均へいきん的てきな卸売おろしうり価格かかくが2年ねん前まえに比くらべ2割わりから3割わりほど上昇じょうしょうしているということです。

また、このメーカーでは現地げんちの子会社こがいしゃが製造せいぞうした商品しょうひんをタイの通貨つうか「バーツ」で購入こうにゅうし、輸入ゆにゅうしています。去年きょねん9月つきには1バーツ＝およそ3.3円えんでしたが、9月つきは1バーツ＝3.8円えんを超こえるまで円えん安やすが進すすみ、コストアップの要因よういんになっているということです。

メーカーでは、ことし8月つき1日にちにカレーなどの値上ねあげに踏み切ふみきりましたが、品質ひんしつを保たもちながら価格かかくを抑おさえるため、原材料げんざいりょうの見直みなおしを検討けんとうしたり、商品しょうひんパッケージを2ミリ薄うすくして海上かいじょう輸送ゆそうの効率こうりつを上あげたりするなど工夫くふうを重かさねています。

食品しょくひんメーカー「ヤマモリ」の三さん林はやし圭介けいすけ社長しゃちょうは「値上ねあげをすれば売うれなくなるリスクもあるので、企業きぎょう努力どりょくをして消費しょうひ者しゃに納得なっとくしてもらえる値上ねあげを追求ついきゅうしていく」と話はなしていました。

逆境ぎゃっきょうだからこそ… 社員しゃいんのやる気やるき高たかめる月つき3万まん円えんの“物価ぶっか高だか手当てあて”

長野ながの県けん千せん曲きょく市しで浄水じょうすい器きや健康けんこう関連かんれんの商品しょうひんなどに使つかわれる機能きのう性せいの高たかいセラミックス製品せいひんを開発かいはつしている従業じゅうぎょう員いん15人にんのメーカーでも物価ぶっか高だかの影響えいきょうに悩なやまされています

商品しょうひんに欠かかせない天然てんねんの鉱石こうせきなど、素材そざいのおよそ30％を輸入ゆにゅうしているため、記録きろく的てきな円えん安やすのあおりを受うけて仕入しいれ価格かかくがコロナ前まえの2019年ねんと比くらべて20％近ちかく上あがっています。また、エネルギー価格かかくの上昇じょうしょうに伴ともなって製造せいぞうするための炉ろの光熱こうねつ費ひや営業えいぎょうで使つかう車くるまの燃料ねんりょう代だいの負担ふたんも重おもくなっています。

さらに、物価ぶっか高だかを理由りゆうに、委託いたく先さきのメーカーから値上ねあげを要請ようせいされる一方いっぽう、販売はんばい代理だいり店てんからは商品しょうひんの値上ねあげをすれば販売はんばい力りょくが低下ていかすると指摘してきされ、価格かかく転嫁てんかできない商品しょうひんが多おおいということです。

厳きびしい状況じょうきょうにあっても逆風ぎゃくふうに立ち向たちむかおうと考かんがえた会社かいしゃは、社員しゃいんのやる気やるきにつなげようとことし7月つきから物価ぶっか高だかに苦くるしむ社員しゃいんの家計かけいを支ささえる月つき3万まん円えんの“物価ぶっか高だか手当てあて”を支給しきゅうしています。