JLPT N1 – Reading Exercise 127

#354

「1」読書とは、本を買うことである。買ってしまえばこっちのもの、いつか必ずページを、開く。買って積んでおくだけの、俗にいう「ツン読」も読書のうちなのである。

この場合の「買う」とは、書店で手にして、ちらとでもこころが動いたち、即座にその場で買ってしまうことを指す。

もうちょっと考えて、とか、明日でもいいや、とか、帰りに駅前のあの店で買えばいいか、なんぞと考えた瞬間、その本との縁は切れたと知るべし。(中略)

その場で即座に買えないのは、一つには失敗を恐れるからだろう。せっかく買っても、読んでみてつまらなかったらどうしよう、と考えてしまう。しかし、「2」失敗も読書のうち。読んで、つまらない、と感じるのは読んだからなのである。「つまらない」と思っても、それを「失敗」と考えてはいけない。「つまらない」と判断できたことをむしろ誇るべきなのである。つまらない本をつまらないと感じられる人は、面白い本を面白いと感じられる人。失敗を心配するよりも、本質的につまらなく、くだらない本を、面白いと感じているかも知れないことのほうを心配すべきなのだ。

せっかく買ったんだからと、つまらないのを我慢して読みつづける必要はない。自分の判断を信じて、すぐに放り出せばいい。

もちろん、数多い本の中には、すぐには面白さの伝わりにくいものもある。はじめはとっつきにくくても、読み進んでゆくにつれて面白さがにじみ出てくる本がある。いったんは放り出したのに、何かのひょうしにもう一度手にしたとき、実に面白く読める、「3」そういう類の本もたくさんある。

何度も読んで、そのたびに新しい面白さを発見する本もある。たとえば漱石の『吾輩は猫である』は、小学校三年生のとき以来、何度手にしたことか。二十歳にはそのときの、還暦には還暦の楽しみ方がある。

(轡田隆史「考える力」をつける本」三笠書房による)

俗にいう:一般的に言うように

~なんぞと:~などと

とっつきにくい:親しみにくい

何かのひょうしに:偶然に

Try It Out!
1
筆者が「1」読書とは、本を買うことであるでいう買うこととはどのようなことか。
1. 時間をかけて、よく考えてから買うこと
2. 少しでも興味を持ったら、すぐに買うこと
3. 書店で手にとって失敗しないように買うこと
4. よく知っている店で、店員に相談して買うこと
2
「2」失敗も読書のうちとあるが、なぜか。
1. いろいろな本を読むことで、本の価値が判断できるようになるから
2. 本を買って失敗したと思っても、買ってしまった本は最後まで読むから
3. 失敗だと分かっていても、読書することによって知識の量がふえるから
4. いろいろな本を読むことで、くだらない本でも面白く感じるようになるから
3
「3」そういう類の本とはどんな本か。
1. 面白さを発見するために読む本
2. 何度読んでも、面白さを発見する本
3. 第一印象とはちがう面白さを持つ本
4. 面白くなくても読み続けなければならない本
4
この文章のまとめとして最も適当なものはどれか。
1. つまらない本を読み続けても、面白くなるとはかぎらない。
2. 買った本を何度も読めば、その価値が分かるようになるはずだ。
3. 読書の面白さを知るためには、まず本を買って身近に置くことだ。
4. 本の面白さは年齢によって変わるので、小学生からの読書が大切だ。