JLPT N1 – Reading Exercise 129

#356

調べることと書くことは、もっぱら私のようなジャーナリストにだけ必要とされる能力ではなく、現代社会においては、ほとんどあらゆる知的職業において、一生の問必要とされる能力である。ジャーナリストであろうと、官僚であろうと、ビジネスマンであろうと、研究職、法律職、教育職などの知的労働者であろうと、大学を出てからつくたいていの職業生活のかなりの部分が、調べることと書くことに費やされるはずである。「1」近代社会は、あらゆる側面において、基本的に文書化されることで組織されているからである。

人を動かし、組織を動かし、社会を動かそうと思うなら、「2」いい文章が書けなければならない。いい文章とは、名文ということではない。うまい文章でなくてもよいが、達意の文章でなければならない。文章を書くということは、何かを伝えたいということである。自分が伝えたいことが、その文章を読む人に伝わらなければ何もならない。何かを伝える文章は、まずロジカルでなければならない。しかし、ロジックには内容(コンテンツ)がともなわなければならない。論より証拠なのである。論を立てるほうは、頭の中の作業ですむが、コンテンツのほうは、どこからか材料を調べて持ってこなければならない。いいコンテンツに必要なのは、材料となるファクトであり、情報である。そこでどうしても調べるという作業が必要になってくる。

(立花隆ほか『二十歳のころ』新潮社による)

Try It Out!
1
「1」近代社会とあるが、筆者はその特徴をどのようにとらえているか。
1. 官僚でも、ビジネスマンでも、研究者でも活躍できる社会
2. 文書が作られ、それに基づいて人や組織が動いている社会
3. 法律職などの知的労働者が作成した文書に従って動いている社会
4. 大学を出てから職業につく人があらゆる場面で必要とされる社会
2
「2」いい文章とあるが、筆者はそれをどのようなものと考えているか。
1. 調べることと書くことに時間を費やした文章
2. 人々を感動させて社会を動かそうとする文章
3. 自分の伝えたいことが相手に十分伝わる文章
4. 小説家が書くような豊かな内容の文章
3
いい文章を書くために必要なことは何か。
1. 論理を組み立てることと、論理を支える情報を調べること
2. 論理とそれを支える証拠を頭の中で組み立て、見つけだすこと
3. ジャーナリストが持っているような知的能力を身につけること
4. ジャーナリストだけでなく、あらゆる職業生活について知ること