JLPT N2 – Reading Exercise 4

#137

これはビジネス文書に限ったことではないのだが、何であれ文書を書いていると、少しばかり緊張感を覚えるものだ。書きながら、頭の中でこんなことを考えている。

この書き方でいいのかな。

これ、ひどく下手な書き方じゃないだろうか。

これでわかるかな。

そういう気がしきりに(注1)して、ちょっとしたプレッシャーになっている。だからこそ、文章を書くのは苦手だ、と思っている人もいるのじゃないだろうか。

しかし、その逆もまた真である。文章を書く面白さとは、そういうプレッシャーを感じながら、なんとか諸問題をクリアして、一応のものを書き上げることにあるのだ。
テレビゲームが楽しいのと同じ理屈(りくつ)(注2)である。あれは、攻略(こうりゃく)する(注3)のが簡単ではない様々な障害をかわしながら(注4)、次々に問題を解決していって、なんとかクリアしていくところが面白いのである。むずかしいからこそ、うまくやったときに楽しいのだ。

文章を書くのも、(1)そういうことである。これでいいのかな、と一抹いちまつの(注5)不安を抱えながら、なんとか書いていくってことを楽しまなければならない。

別の言い方にすると、文章というものは、書く人に対して、うまく書いてくれ、と要求してくるのである。なぜなら、文章とは人と人とのコミュニケーションの道具だからだ。この例外は、自分だけにわかればいいメモと、絶対に他人に見せない日記だけである。

それ以外の文章は、必ず、書く人間のほかに、(2)読む人間がいて完成されるのだ。そして、書いた人の伝えたかったことが、読んだ人にちゃんとわかってこそ、文章は役をはたしたことになる。

(清水義範『スラスラ書ける!ビジネス文書』による)

(注1) しきりに:何度も
(注2) 理屈:ここでは、考え方
(注3) 攻略(こうりゃく)する:うまく解決する
(注4) かわしながら:避けながら
(注5) 一抹の:ほんの少しの

Vocabulary (27)
Try It Out!
1
筆者は、文章を書くときに何がプレッシャーになっていると述べているか。
1. このまま最後まで書き上げられるか不安だという気持ち
2. 読む人が期待する書き方をしているかという気持ち
3. 自分は字を書くのが下手だから嫌だという気持ち
4. 書きたいことがうまく書けているかという気持ち
2
(1)そういうことであるとはどういうことか。
1. 様々な障害をクリアしていくことがむずかしい。
2. プレッシャーを忘れ、いろいろ考えるのが楽しい。
3. 苦労して問題を片付け、課題を仕上げるのが楽しい。
4. 不安を抱えたままでは問題を解決するのがむずかしい。
3
(2)読む人間がいて完成されるとはどういうことか。
1. 文章の価値を決めるのは読み手の存在だ。
2. 文章が成立するには読み手の存在が必要だ。
3. 文章は人に読まれることでよりよいものになる。
4. 文章は読み手の要求にこたえることでできあがる