JLPT N2 – Reading Exercise 44

#177

徹子から電話がありました。今から5、6年前のことです。

「ねええ、ママ、千葉へ行ってきたの」

電話の声が弾んでいます。きっと何かおもしろいことがあったんだろうと思い、私も「そうだったの」と相槌を打ちながら、彼女の次の言葉をワクワクしながら待っています。

「窓から太陽の沈む様子が、この世のものとは思えないほど美しいと評判の旅館があってね。それを見に、10人ぐらいの有志で出かけたわけ」

ちょっとひと呼吸おいてから、また話しはじめました。

「昼間の間は散歩したり、みんなで楽しく遊んでね、そろそろ時間になったわけ。(1)さあ、時間だ!というので、みんなで窓のそばに座り、固唾をのんで待ってたの。「ホラ、沈むわよ」、「ウワーッ、すごい」、「この偉大な夕日にかなうものはこの世には何もない」なんて口々に言いながら、あまりの素晴らしさに胸打たれて、最後はもう、みんな声も出なくなっちゃったほどだったのね。そのとき突然私が言ったのよ」

「あら、何て言ったのよ」

もうここまでくると(2)好奇心剥き出しです。

「ここで雑魚寝して、明日の朝、また太陽が出るのを見ない?って。一瞬みんな私の言葉が理解できなくて、その後一斉に後ろに引っくり返ったのよ。畳の部屋でほんとよかったわ」

私には、なぜみんなが引っくり返ったのかが理解できません。

「あら、どうして(3)それがおかしいわけ。あなた何も間違ったこと言ってないじゃないの」

(中略)

「やっぱりママもそうなんだ。(___4___)。ね、わかった?

「あっ、そうだわ。太陽は東から昇って西に沈むんだものね」

ようやく私も納得。

(黒柳朝『トットちゃんと私』による)

声が弾む:普段とは違う、うれしそうな声の調子になる

相槌を打つ:人の話を聞きながら、「はい」「ええ」などと昌って調子を合わせる

固唾をのむどうなるかと緊張しながら見守る

~にかなう:~と同じくらいすばらしい

Vocabulary (47)
Try It Out!
1
(1)「さあ、時間だ!」とあるが、何の時間か。
1. 散歩に行く時間
2. 旅館に入る時間
3. 太陽が沈む時間
4. 部屋で寝る時聞
2
ここで(2)「好奇心」を持ったのはだれか。
1. ママ
2. 徹子
3. 旅館の人
4. いっしょに行った有志の人
3
(3)「それ」は何を指すか。
1. 畳の部屋で引っくり返ること
2. 旅館の部屋で雑魚寝すること
3. みんなが自分の言葉を理解してくれないこと
4. 翌日、同じところで太陽が出るのを見ること
4
(___4___)に入る最も適当なものはどれか。
1. 太陽が沈むのも太陽が昇るのも同じくらい美しいのよ
2. 太陽が沈んだ場所で、太陽が昇るのを待ってもダメなのよ
3. 太陽が沈むのは見られたけど、太陽が昇るまで待てないのよ
4. 太陽が沈んだ場所から太陽が昇るのを見ても美しくないのよ