JLPT N2 – Reading Exercise 76

#209

以下は、絵本の選び方について述べた文章である。

たいへん有効な一つの方法は、絵本を見るとき、子どもと同じやり方、つまり、字は読まず、絵だけで物語を追っていくというやり方で、絵本を見ていくことです。わたしも、新しい本を手にしたときは、かならずこのやり方で見ることにしていますが、そうすると、いろんなことが、とてもよくわかってきます。

字にたよらず絵だけ見ることは、わたしたちの心を、必然的に、単純で具体的な考え方のレベルにとどめてくれますし、当然のことながら、絵の中に意味をさぐろうとする心の働きを強めてくれます。そうして見ていくと、絵それ自体が何かを語りかけてくれる場合と、文を読んでからでなければ何の意味ももたない。いわば装飾的な働きしかしていない場合とが、実にはっきりしてきます。絵が何かを語りかけてくれないものは、ほんとうの意味では絵本とはいえないので、こうして見ていくと、体裁は絵本でも、「1」絵本とは呼べないものが少なくないことがわかってきます。(中略)

また絵だけを丹念に見ていると、絵のもつ雰囲気も調子も、文と合わせ見るときより、よくわかる気がします。そして、それをつかんだあとで文を読むと、絵と文の関係がしっくりいっているかどうかが、はっきりわかります。登場人物の服装とか、背景とかの具体的な事実が、文と絵で違っていることがいけないのはもちろんですが、絵全体の調子やムードが、物語のそれと合わないのは、絵本としては、「2」大きな欠点です。

(松岡享子・東京子ども図書館『えほんのせかいこどものせかい』による)

しっくりいく:よく合う

Vocabulary (23)
Try It Out!
1
筆者によると、字を読まないで絵だけで絵本を見るとどうなるか。
1. 字を読むより感動できる。
2. 字を読むより物語がよくわかる。
3. 絵を見て自由に物語を作ろうとする。
4. 絵の中から意味を見つけようとする。
2
「1」絵本とは呼べないものとはどのようなものか。
1. 絵だけでは何も伝わってこないもの
2. 絵がないと、文の意味がわからないもの
3. 絵と文の意味が合っていないもの
4. 絵と文を一緒に見ても、面白くないもの
3
「2」大きな欠点とは何か。
1. 絵の雰囲気や調子がつかみにくいこと
2. 絵の具体的な部分が、絵全体と合っていないこと
3. 絵と物語の、雰囲気や調子が異なること
4. 物語としてあまり感動を与えられないこと