以下は、企業の経営について書かれた文章である。
いろんな規則や罰則を作って、社員をがんじがらめにしてひたすら働かせるというタイプの経営者も、まあ今時は少ないとは思うが、まだいることはいる。「1」そういうやり方が間違っていると思うのは、たとえそれで社員の労働力を物理的に100パーセント引き出すことができたとしても、そのかわり精神面での労働力を捨てることになるからだ。
精神面での労働力というのは、たとえば創意工夫する能力だ。強制的に仕事をさせるやり方では、人の創意工夫の能力を引き出すことはできないのだ。人間の心は、自由なときにその本来の能力を発揮する。楽しんで、興味を持って何かをしているとき、人はいろんなアイデアを思いつく。(中略)
そして、どんな仕事であろうとも、人間のする仕事には、この創意工夫の才能が重要な役割を果たす。一日中、ひたすらネジを締める仕事であっても、だ。どうすれば不良品を減らせるか、どうすれば作業効率を上げられるか。たとえばQC活動(Quality Control:品質管理のこと)を通して、作業する人が自分たちで「2」そういうことを積極的に考えるようになるシステムを創り上げたからこそ、日本の製造業は世界一になれたのだ。
そしてそういう能力を引き出すためには、従業員にとって、そこで働くことが本当の意味で自分のためになるという環境を作ることが欠かせない。
本人の幸せと会社の業績が一致すれば、愛社精神なんてものは自然に育つ。強制なんかしなくても、従業員はプライドを持って心から会社のために働こうと思う。
(高田神助『ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛するー絶対に失敗しないビジネス経営哲学』による)
がんじがらめにする:ここでは、縛る