わたしは、家の近くを毎日散歩していますが、今日はいつもと違う道を歩いてみました。ぶらぶら歩いていると、どこからか花のいいにおいがしてきました。知っている香りなのに、それがどんな花なのか思い出せませんでした。でも、そのとき自然に、昔住んでいた家のことを思い出しました。
「それ」は、田舎の、広い庭がある家でした。祖父と祖母も一緒に住んでいて、にぎやかな毎日でした。隣の家の明子ちゃんという女の子と、家の裏にある山に行ったり、近くの川に行ったりして、よく一緒に遊びました。「なつかしい思い出」です。
どうしてあの時、昔住んでいた家のことを思い出したのか、わたしは不思議でした。家に帰ってから、昔の写真や祖父、祖母の写真を見ながら、しばらく考えました。そして、昔住んでいた家の庭には、春になると、白くて小さな、かわいい花がたくさん咲いていたことを思い出しました。その花は、今日道を歩いていたときの、あの花と同じ香りだったのです。