翻訳: 校正: Kazunori Akashi
翻訳: 校正: Kazunori Akashi
こんにちは 中島聡です
私は本業はソフトウェア エンジニアですけれども
2004年ぐらいからブログを書いてます
ブログが なんかほとんど 副業のようになっているんですけど
で ブログを書いていて 一番楽しいのは読者の反応ですよね
なんか気の利いたことを書くと 結構コメントをもらえるし
それからFacebook とか Twitter で 色んな人に広まって
たくさんの人に読んでもらえる
それはやっぱりブログを書いていて 一番の楽しみですよね
まぁそうやってかれこれ2,000ぐらいの ブログのエントリを書いたんですけど
その中でひとつだけ際立って 人気が高い記事があるんですよ
ちょうど6、7年前に 書いた記事なんですけど
いまだにコメントがくるし
最近になって そのネタを元に 本を出したいという話まできて
今日 ちょっと その話をしたいと思います
簡単にいうと まぁ私 エンジニアですから
いつもプロジェクトに 関わっているわけですよ
プロジェクトというと だいたい締切があって
その締切に向けて どういう態勢で仕事をするかっていう
私のエンジニアとしての ごく普通の気持ちを書いたものなんですけど
簡単にいうと出来るだけ はやいうちに形にするんですよ
多くの人がラストスパート型でね
パニックモンスターが やってきてから頑張るんだけど
僕の場合は本当にある意味 最初にパニックが来るタイプで
ポリシーとして だいたい最初の2割ぐらいの時間で
8割仕上げないと気が済まないんですよ
で そこから流すんですよ
なぜこういうことを するようになったかっていうのを
考えてみると ひとつ思い出があって それは小学校3年生のときに
夏休みの終わりぐらいですよね 私 その頃は理科系少年で
まぁ理科系少年の欠点っていうのは 国語とか社会が大嫌いで
その国語の漢字の書き取りをね
毎日少しずつしなきゃいけなかったものを もう思いっきりためてたわけですよ
もう夏休み3日ぐらいしかないところで
そんなところに僕の大好きだった 叔父さんが電話をかけてきて
「これから海に行って釣りに行くけど 一緒に行くか」って言われて
「ああ行きます!」って言ったんだけど
当然うちの母親は「だめでしょう」と
「漢字の書き取り それだけ残っているのに」
で 行かせてくれなかったんですよ
それはもうトラウマのように 僕の心に残って
でね 冗談みたいな話ですけど 小学校4年からは夏休みの宿題は
7月中に終わらせるって決めて 僕やってました
ちょっと日記だけは 難しかったんですけど
他のものは本当に
ずっと小学校、中学校って 夏休みの宿題は7月に終わらせるって
だからその後どんな誘いが来ても 行けるっていう風にするって決めて
多分その経験で 今みたいな働き方を するようになったのかもしれないけど
で 働くようになってからも
ひとつスタートダッシュで働くから いい思いをしたことがあって
それがマイクロソフトに行った時で ちょうど私 1989年にシアトルに渡って
シアトルのマイクロソフトの本社で 働くようになったんですよ
その時に配属された部隊が 「次世代OS」—
あんまり専門用語を 使うなって言われてたんですけど
要はパソコンの基本ソフトですよね
それの次世代版を 作るってグループに配属されて
その時 マイクロソフトはIBMと OS/2 というOSを開発していて
でも僕らのグループはその一歩先
まぁ OS/3 って 呼んでたりしましたけど 中では
それを作るグループだったんですよ
そこに配属されて 僕としてはものすごくはりきってね
初めてアメリカに来て働けるかと思って 頑張って働こうとしたら
実はみんな のんびりしているんですよ
次世代ですから 締め切りないわけですよ
僕から見ると机上の空論を しているんですよ
その画面に出てくるアイコンは いったい何を表すのか?みたいなね
すごく哲学的な理論を延々として
で やっぱりその「もの」がないから 何も決まらないんですよ
その状況は僕は耐えられなくて で 上司にかけあって
「僕は手を動かさないと 考えられないタイプなんで」
今もそうですけど
「だから何か作らせてくれ」って言ったら
「じゃあ君そのプロトタイプを 作りなよ」と
そのOSの議論はしているけど
やっぱり目に見えるカタチがあった方が いいからということで
プロトタイプを1人で3ヶ月くらいで 作らせてもらいましたけど
それはもうほんっとに楽しかったですよ
今までの長いエンジニア人生の中でも 最も楽しかった時期のひとつかな
ていうのも そのマイクロソフトっていう でっかい会社が
次世代のOSを開発するときの
プロトタイプですけど
どんなカタチになったらいいよ —
将来のパソコンは どう動くべきかっていうのを
僕ひとりが運転席に座って 全部図面を描いて
全部作るっていうチャンスを 与えられたわけですよ
もう それは嬉しくて 本当に毎日夜遅くまで働いて
土日も出て 24時間そのこと考えてましたよ
そんな僕を見て みんなが不思議がるわけですよ
せっかくこんなのんびりした
次世代OSを作るっていうチームにいるのに
お前なんで こんな一所懸命 働いているんだ?って
僕にとっては楽しくてしょうがないから
そういう時にモチベーションが ものすごくあがるタイプなんですよ
で そうやっているうちに 段々みんな分かってきてくれてね
っていうのは その 今まで机上の空論だったものが
手にとってさわっていじってと できることになると
だいぶ色んなことが 見えてくるわけですよ
あ こうやった方が使い難い 使いやすいなとか
この方が分かりやすいなとか
で そうこうしているうちに僕の上司が
マイクロソフトの ひとり えらい人を連れてきて —
副社長だったんですけど —
デモを見せてほしいって言うので 見せたところ
「これはなかなか面白いな」と
「今度 是非プレゼンして欲しい」って 頼まれたんですよ
それは嬉しかったですよ
僕もまだぺーぺーのエンジニアで
日本からアメリカに来たばっかりで
プレゼンするなんて 大チャンスじゃないですか
だからもう すごい頑張ったんですけど
あんまりその時は 英語がしゃべれなかったんで
僕がしゃべらなくてもデモ自身がその
僕の考えていることを全部 表現するようにしようということで
またその後すっごく夜遅くまで働いて
そのデモを完璧なものに していったわけですよ
そのデモさえ見れば
僕が思う「将来のパソコンは こう動くべきだ」みたいな
アイデアが全部含まれていて
で その中にちゃんと ジョークも入れたんですよ
僕の上司がイタリア人で ひげもじゃだったんですけど
そのユーザ登録の時に わざわざ顔アイコンを選べるようにして
そこにひげもじゃなイタリア人が 出てくるみたいなシナリオまで入れて
完璧に準備して行ったんですよ
で プレゼン会場に行って ひとつ驚いたんですよ
っていうのは僕は頭っから 社内向けのプレゼンだと思っていたら
実はそれはマイクロソフトが年に1度だけ
パソコンメーカーとか ソフトウェアベンダー向けにやる
大きなイベントで 2千人ぐらい お客さんいるんです
後から聞いたら最前列には
なぜか そのコンファレンスで プレゼンすることになってしまって
その上 司会の人が 僕の発表の前に
「マイクロソフトは今 IBMと OS/2というOSを開発してますけど
実は将来のことも考えています
今回その将来のOS 本邦初公開です!」 みたいなことでアナウンスされちゃって
もうなんか典型的なね —
まぁ後から聞いたんですけど これはベーパーウェアと呼ぶ
要はマイクロソフトの 誇大広告のひとつなんですけど
それにもうのせられてしまって で プレゼンすることになったんですけど
まぁしょうがないですよね
幸いなことにデモは 完璧なものを用意していたんで
デモをしたら 笑いを取るところでは ちゃんと笑いを取れたし
終わった時には満場の拍手でしたよ
その話は結構 色んな人から 後から言われましたよ
Compaq のえらい人から 「君のプレゼンは良かったよ」みたいなこと
それは僕にとっては すごい良い成功体験でしたね
会社 特にマイクロソフトや ものを作る会社において
みんながのんびりしている時に 思いきり働くことの有意義さとか
それからなるたけ早いうちに
目に見えるカタチ さわれるカタチに することの重要さみたいなことは
すごく学びましたよね
その後もその方法を使って ずっと働くようにしました
結果から言うと その時つくった プロトタイプがベースになって
Windows95 っていうのが出来たし
僕自身も Windows95 の開発に 深くかかわることが出来たのは
やっぱりそういうことを したためかなと思います
ちなみにスライドがなかったので
ひとつ ふたつだけ 今日はスライドがあります
作ってきたのは左側が ラストスパート型で働く人の働き方ですね
横軸が時間で 縦軸が完成度
最初はのんびりとやっていて 途中で締め切りが迫ってきて
パニックモンスターが やって来ると頑張るっていう
わたしのやり方は ロケットスタートとか呼びますけど
最初の2割の時間で 8割仕上げるようになっているんです
で その後は流す それがわたしの働き方です
そうは言っても 結局この話を色んな人にしても
みんな理解してくれないし できないんです
本当に8割方の人が ラストスパート型で働きますよね
なぜそうなるのかというのを 考えてきたんですけど
ひとつは学校の勉強が あるんじゃないかと思うんですよ
学校っていうのは 一学期のある決まった期間に
あるものを勉強しなきゃいけなくて
で その最後に 試験とかレポートを書いてる
で それを勉強したことを 証明するのですから
その環境におけると実はラストスパート型で なんとかなっちゃうんです
もしくはラストスパート型の方が 効率が良かったりするし
あと学校っていうその社会の中では
みんなが遊んでいる時に勉強すると 変な奴じゃないですか
そうすると みんなが 遊んでいるときは一緒に遊んで
試験前になると勉強をするっていう方が
社会的に効率がいいということもあって
結局みんなで引き摺られて 試験前だけ勉強するっていうことを
高校、大学と繰り返すわけですよ
それが何か勉強のリズムとして 身についてしまって
社会人になっても 同じことをするんじゃないかなと
わたしは思っている
社会に出たときのプロジェクトと 学校の勉強とは全然違うんですよ
やられた方は分かると思うんですけど
3ヶ月でこのプロジェクトは できそうだなって始めてみたら
実は6ヶ月かかる1年かかるってことが しばしばあるんですよ
もしくはソフトウェアの場合だと こういう設計で作ろうって言って
作ってみて8割方できてみたら 性能がでないなと
で 何が悪いかっていうと あぁ設計が悪いんじゃないかと
じゃ一回ゼロから作り直しだな みたいなことは しばしばあるんです
想定外の状況って呼んでもいいけど
そういう状況に ラストスパート型は弱いんです
なぜ弱いかって言うと 色んなことが見えてくる —
例えば使い勝手がいいのかとか 本当に性能がでるのかっていうのは
やっぱり8割方作ったところなので
その8割方作ったって言うのが
どの時点で見えるかっていうのが 矢印で示してあるんですけど
このラストスパート型だと
本当に締め切りギリギリに 8割出来るわけです
その時点で使い勝手悪かったから 直そうって言っても
時間ないじゃないですか
だから延びちゃうんですよ 間に合わないんですよ
特に最悪なのが
例えば「性能が出ない」 その原因が設計にある時なんかです
本当だったらね 設計が悪いんだから
ゼロから作り直さなきゃ ならないんですけど
もうこの時点になったら そんなことしてられないですよね
わたしよく見てますけど
そういう状況に陥ったエンジニアが 何をするかって言うと
設計が悪かったっていうことを 認めないんですよ
本人は心の中で知っているんだけど 今さらそんなこと言えないじゃないですか
締め切りまでもう3日しかないのに
「設計間違ってました
ゼロから作り直すしかありません」 とは言えないので
結局 対症療法だけで しのごうとするんですよ
それをすると何がおこるかと言うと
結局 根本設計が悪いから
パフォーマンスが出ない バグだらけになる 使い勝手悪い
どうしようもないことに 陥っていくんですよ
だからいつまでたっても 徹夜しようが 残業しようが 週末働こうが
いつまでたっても 終わらないっていう状況に陥る
ソフトウェア業界では 「デスマーチ」って呼んでるんですけど
その一番の原因は 実は設計にあり
なぜその設計が悪いことが ここまで分からなかったかというと
ラストスパート型だからですよ
これをスタートダッシュ型で作ると
だいたい最初の2割の時間で 8割作る
そこで見えてくるわけです
そこで例えば使い勝手が 悪かったなって言ったら
直す時間は十分あるし
万が一 その設計が 根本的に悪かったって
この時点だったら一回ゼロから 作りなおすこともできるわけですよ
そういう意味で圧倒的に
このスタートダッシュ型のほうが 有利なんですよ
で 今日はこの話をして
基本的には このメッセージなんですけど
こういう話を聞いてもね なんか「いい話だなー」って言って
そのままこう…
結局「自分には関係ない」とか
「できない」とか言う人が 多いと思うんだけど
働いている量は 実際 変わらないじゃないですか トータルの
いつ頑張るかの違いでしかないんですよ
だから できるできないの話じゃなくて やるかやらないかの話なんですよ
例えばマラソンランナーで 一流の人たちっていうのは
ペース配分を知ってるじゃないですか
それと同じように こういうプロジェクトに関わる —
別にエンジニアじゃなくて
デザイナだったり 企画の人でもいいんだけど
こういうプロジェクトに 仕事として関わるんであれば
やっぱりペース配分ぐらいは ちゃんとやりましょうよと そういう話です
ありがとうございます
翻訳: 校正: Kazunori Akashi
翻訳
校正
こんにちは 中島聡です
聡
こんにちは
中島
私は本業はソフトウェア エンジニアですけれども
ソフトウェア
私
けれども
エンジニア
本業
2004年ぐらいからブログを書いてます
ぐらい
書く
年
ブログが なんかほとんど 副業のようになっているんですけど
ほとんど
なんか
副業
で ブログを書いていて 一番楽しいのは読者の反応ですよね
一番
読者
書く
楽しい
反応
なんか気の利いたことを書くと 結構コメントをもらえるし
気
書く
結構
なんか
利く
コメント
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それからFacebook とか Twitter で 色んな人に広まって
それから
人
色んな
広まる
たくさんの人に読んでもらえる
たくさん
人
読む
もらえる
それはやっぱりブログを書いていて 一番の楽しみですよね
楽しみ
一番
やっぱり
書く
まぁそうやってかれこれ2,000ぐらいの ブログのエントリを書いたんですけど
エントリ
ぐらい
書く
その中でひとつだけ際立って 人気が高い記事があるんですよ
人気
記事
中
高い
ひとつ
際立つ
ちょうど6、7年前に 書いた記事なんですけど
記事
ちょうど
前
書く
年
いまだにコメントがくるし
いまだに
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最近になって そのネタを元に 本を出したいという話まできて
最近
元
出す
話
本
という
今日 ちょっと その話をしたいと思います
思う
今日
ちょっと
話
簡単にいうと まぁ私 エンジニアですから
簡単
私
エンジニア
いつもプロジェクトに 関わっているわけですよ
いつも
関わる
プロジェクト
プロジェクトというと だいたい締切があって
だいたい
締切
プロジェクト
その締切に向けて どういう態勢で仕事をするかっていう
向ける
締切
態勢
仕事
どういう
っていう
私のエンジニアとしての ごく普通の気持ちを書いたものなんですけど
気持ち
普通
書く
私
として
エンジニア
簡単にいうと出来るだけ はやいうちに形にするんですよ
形
簡単
出来る
はやい
多くの人がラストスパート型でね
型
人
多く
ラストスパート
パニックモンスターが やってきてから頑張るんだけど
頑張る
やってくる
パニック
モンスター
僕の場合は本当にある意味 最初にパニックが来るタイプで
最初
タイプ
場合
僕
来る
意味
本当に
パニック
ポリシーとして だいたい最初の2割ぐらいの時間で
最初
だいたい
割
ぐらい
時間
として
ポリシー
8割仕上げないと気が済まないんですよ
気
済まない
割
仕上げる
で そこから流すんですよ
流す
なぜこういうことを するようになったかっていうのを
こういう
考えてみると ひとつ思い出があって それは小学校3年生のときに
考える
小学校
思い出
ひとつ
年生
夏休みの終わりぐらいですよね 私 その頃は理科系少年で
頃
少年
理科
終わる
ぐらい
系
夏休み
私
まぁ理科系少年の欠点っていうのは 国語とか社会が大嫌いで
社会
欠点
国語
少年
理科
系
大嫌い
っていう
その国語の漢字の書き取りをね
国語
漢字
書き取る
毎日少しずつしなきゃいけなかったものを もう思いっきりためてたわけですよ
ためる
いける
少し
毎日
思いっきり
もう夏休み3日ぐらいしかないところで
日
ぐらい
ところ
夏休み
そんなところに僕の大好きだった 叔父さんが電話をかけてきて
かける
そんな
僕
叔父さん
大好き
電話
ところ
「これから海に行って釣りに行くけど 一緒に行くか」って言われて
これから
釣り
言う
行く
一緒
海
「ああ行きます!」って言ったんだけど
言う
行く
当然うちの母親は「だめでしょう」と
母親
当然
「漢字の書き取り それだけ残っているのに」
残る
漢字
それだけ
書き取る
で 行かせてくれなかったんですよ
くれる
行く
それはもうトラウマのように 僕の心に残って
心
残る
僕
トラウマ
でね 冗談みたいな話ですけど 小学校4年からは夏休みの宿題は
小学校
宿題
年
夏休み
話
みたい
冗談
7月中に終わらせるって決めて 僕やってました
7月
決める
僕
中
終わる
ちょっと日記だけは 難しかったんですけど
日記
ちょっと
難しい
他のものは本当に
他
本当に
ずっと小学校、中学校って 夏休みの宿題は7月に終わらせるって
7月
小学校
中学校
ずっと
終わる
宿題
夏休み
だからその後どんな誘いが来ても 行けるっていう風にするって決めて
決める
だから
どんな
来る
風
行ける
誘い
その後
っていう
多分その経験で 今みたいな働き方を するようになったのかもしれないけど
経験
方
多分
今
働く
みたい
しれる
で 働くようになってからも
働く
ひとつスタートダッシュで働くから いい思いをしたことがあって
スタート
働く
ひとつ
思い
ダッシュ
それがマイクロソフトに行った時で ちょうど私 1989年にシアトルに渡って
時
ちょうど
行く
年
私
渡る
シアトル
マイクロソフト
シアトルのマイクロソフトの本社で 働くようになったんですよ
働く
シアトル
本社
マイクロソフト
その時に配属された部隊が 「次世代OS」—
時
次世代
配属
部隊
あんまり専門用語を 使うなって言われてたんですけど
あんまり
用語
言う
使う
専門
要はパソコンの基本ソフトですよね
ソフト
パソコン
基本
要は
それの次世代版を 作るってグループに配属されて
グループ
作る
版
次世代
配属
その時 マイクロソフトはIBMと OS/2 というOSを開発していて
でも僕らのグループはその一歩先
グループ
一
先
僕ら
歩
まぁ OS/3 って 呼んでたりしましたけど 中では
それを作るグループだったんですよ
グループ
作る
そこに配属されて 僕としてはものすごくはりきってね
僕
はりきる
ものすごい
として
配属
初めてアメリカに来て働けるかと思って 頑張って働こうとしたら
働ける
アメリカ
思う
来る
初めて
働く
頑張る
実はみんな のんびりしているんですよ
のんびり
みんな
実は
次世代ですから 締め切りないわけですよ
次世代
締め切り
僕から見ると机上の空論を しているんですよ
僕
見る
机上
空論
その画面に出てくるアイコンは いったい何を表すのか?みたいなね
何
表す
いったい
出る
みたい
画面
すごく哲学的な理論を延々として
すごい
哲学
的
として
理論
延々
で やっぱりその「もの」がないから 何も決まらないんですよ
何
やっぱり
決まる
その状況は僕は耐えられなくて で 上司にかけあって
僕
状況
耐える
上司
られる
かけあう
「僕は手を動かさないと 考えられないタイプなんで」
考える
タイプ
僕
動かす
手
られる
今もそうですけど
今
「だから何か作らせてくれ」って言ったら
くれる
だから
何
言う
作る
「じゃあ君そのプロトタイプを 作りなよ」と
君
じゃあ
作り
プロトタイプ
そのOSの議論はしているけど
議論
やっぱり目に見えるカタチがあった方が いいからということで
見える
方
やっぱり
目
プロトタイプを1人で3ヶ月くらいで 作らせてもらいましたけど
もらう
くらい
人
ヶ月
作る
プロトタイプ
それはもうほんっとに楽しかったですよ
楽しい
今までの長いエンジニア人生の中でも 最も楽しかった時期のひとつかな
最も
時期
人生
中
今
楽しい
長い
ひとつ
エンジニア
ていうのも そのマイクロソフトっていう でっかい会社が
ていう
会社
でっかい
マイクロソフト
っていう
次世代のOSを開発するときの
開発
次世代
プロトタイプですけど
プロトタイプ
どんなカタチになったらいいよ —
どんな
将来のパソコンは どう動くべきかっていうのを
動く
将来
パソコン
僕ひとりが運転席に座って 全部図面を描いて
運転
席
僕
ひとり
描く
座る
全部
図面
全部作るっていうチャンスを 与えられたわけですよ
与える
チャンス
全部
作る
られる
っていう
もう それは嬉しくて 本当に毎日夜遅くまで働いて
夜
嬉しい
遅い
働く
毎日
本当に
土日も出て 24時間そのこと考えてましたよ
考える
時間
出る
土日
そんな僕を見て みんなが不思議がるわけですよ
そんな
僕
不思議
みんな
見る
せっかくこんなのんびりした
のんびり
せっかく
こんな
次世代OSを作るっていうチームにいるのに
チーム
作る
次世代
っていう
お前なんで こんな一所懸命 働いているんだ?って
こんな
働く
お前
一所懸命
僕にとっては楽しくてしょうがないから
僕
楽しい
にとって
しょうが
そういう時にモチベーションが ものすごくあがるタイプなんですよ
あがる
タイプ
時
ものすごい
そういう
で そうやっているうちに 段々みんな分かってきてくれてね
くれる
みんな
段々
分かる
っていうのは その 今まで机上の空論だったものが
今
机上
空論
っていう
手にとってさわっていじってと できることになると
さわる
できる
いじる
手
にとって
だいぶ色んなことが 見えてくるわけですよ
だいぶ
見える
色んな
あ こうやった方が使い難い 使いやすいなとか
方
難い
使う
やすい
この方が分かりやすいなとか
方
やすい
分かる
で そうこうしているうちに僕の上司が
僕
上司
マイクロソフトの ひとり えらい人を連れてきて —
連れる
ひとり
えらい
人
マイクロソフト
副社長だったんですけど —
社長
副
デモを見せてほしいって言うので 見せたところ
言う
ところ
ほしい
見せる
「これはなかなか面白いな」と
なかなか
面白い
「今度 是非プレゼンして欲しい」って 頼まれたんですよ
今度
是非
頼む
欲しい
プレゼン
それは嬉しかったですよ
嬉しい
僕もまだぺーぺーのエンジニアで
僕
エンジニア
日本からアメリカに来たばっかりで
アメリカ
日本
来る
ばっかり
プレゼンするなんて 大チャンスじゃないですか
チャンス
なんて
大
プレゼン
だからもう すごい頑張ったんですけど
すごい
だから
頑張る
あんまりその時は 英語がしゃべれなかったんで
しゃべれる
あんまり
時
英語
僕がしゃべらなくてもデモ自身がその
僕
自身
しゃべる
僕の考えていることを全部 表現するようにしようということで
考える
僕
表現
全部
という
またその後すっごく夜遅くまで働いて
夜
遅い
働く
その後
すっごい
そのデモを完璧なものに していったわけですよ
完璧
そのデモさえ見れば
見る
僕が思う「将来のパソコンは こう動くべきだ」みたいな
動く
思う
将来
パソコン
僕
みたい
アイデアが全部含まれていて
含む
全部
アイデア
で その中にちゃんと ジョークも入れたんですよ
ちゃんと
中
入れる
ジョーク
僕の上司がイタリア人で ひげもじゃだったんですけど
僕
上司
人
イタリア
そのユーザ登録の時に わざわざ顔アイコンを選べるようにして
ユーザ
時
登録
顔
アイコ
わざわざ
そこにひげもじゃなイタリア人が 出てくるみたいなシナリオまで入れて
人
入れる
出る
みたい
シナリオ
イタリア
完璧に準備して行ったんですよ
準備
完璧
行く
で プレゼン会場に行って ひとつ驚いたんですよ
驚く
会場
行く
ひとつ
プレゼン
っていうのは僕は頭っから 社内向けのプレゼンだと思っていたら
思う
僕
頭
向け
社内
プレゼン
っていう
実はそれはマイクロソフトが年に1度だけ
実は
度
年
マイクロソフト
パソコンメーカーとか ソフトウェアベンダー向けにやる
パソコン
向け
メーカー
大きなイベントで 2千人ぐらい お客さんいるんです
お客
人
ぐらい
大きな
千
イベント
後から聞いたら最前列には
後
聞く
最
前列
なぜか そのコンファレンスで プレゼンすることになってしまって
しまう
プレゼン
その上 司会の人が 僕の発表の前に
僕
発表
上
司会
前
人
「マイクロソフトは今 IBMと OS/2というOSを開発してますけど
実は将来のことも考えています
考える
将来
実は
今回その将来のOS 本邦初公開です!」 みたいなことでアナウンスされちゃって
将来
今回
公開
みたい
ちゃう
初
アナウンス
本邦
もうなんか典型的なね —
典型
的
なんか
まぁ後から聞いたんですけど これはベーパーウェアと呼ぶ
後
聞く
呼ぶ
要はマイクロソフトの 誇大広告のひとつなんですけど
広告
ひとつ
要は
マイクロソフト
誇大
それにもうのせられてしまって で プレゼンすることになったんですけど
それに
のせる
しまう
プレゼン
られる
まぁしょうがないですよね
しょうが
幸いなことにデモは 完璧なものを用意していたんで
用意
幸い
完璧
デモをしたら 笑いを取るところでは ちゃんと笑いを取れたし
取れる
笑い
ちゃんと
ところ
取る
終わった時には満場の拍手でしたよ
拍手
時
終わる
満場
その話は結構 色んな人から 後から言われましたよ
後
人
言う
結構
話
色んな
Compaq のえらい人から 「君のプレゼンは良かったよ」みたいなこと
君
えらい
人
良い
みたい
プレゼン
それは僕にとっては すごい良い成功体験でしたね
すごい
僕
成功
体験
良い
にとって
会社 特にマイクロソフトや ものを作る会社において
特に
会社
作る
において
マイクロソフト
みんながのんびりしている時に 思いきり働くことの有意義さとか
思いきり
のんびり
みんな
時
働く
有意義
それからなるたけ早いうちに
それから
早い
なるたけ
目に見えるカタチ さわれるカタチに することの重要さみたいなことは
見える
われる
重要
目
みたい
すごく学びましたよね
すごい
学ぶ
その後もその方法を使って ずっと働くようにしました
方法
ずっと
使う
働く
その後
結果から言うと その時つくった プロトタイプがベースになって
結果
時
つくる
言う
ベース
プロトタイプ
Windows95 っていうのが出来たし
出来る
っていう
僕自身も Windows95 の開発に 深くかかわることが出来たのは
深い
僕
自身
出来る
かかわる
開発
やっぱりそういうことを したためかなと思います
思う
やっぱり
そういう
ちなみにスライドがなかったので
スライド
ちなみに
ひとつ ふたつだけ 今日はスライドがあります
今日
スライド
ひとつ
ふたつ
作ってきたのは左側が ラストスパート型で働く人の働き方ですね
方
型
人
作る
働く
左側
ラストスパート
横軸が時間で 縦軸が完成度
完成
縦
度
軸
時間
横
最初はのんびりとやっていて 途中で締め切りが迫ってきて
最初
途中
のんびり
迫る
締め切り
パニックモンスターが やって来ると頑張るっていう
頑張る
パニック
やって来る
モンスター
っていう
わたしのやり方は ロケットスタートとか呼びますけど
ロケット
スタート
呼ぶ
わたし
やり方
最初の2割の時間で 8割仕上げるようになっているんです
最初
割
時間
仕上げる
で その後は流す それがわたしの働き方です
流す
方
働く
わたし
その後
そうは言っても 結局この話を色んな人にしても
結局
人
言う
話
色んな
みんな理解してくれないし できないんです
くれる
みんな
理解
できる
本当に8割方の人が ラストスパート型で働きますよね
方
型
人
割
働く
本当に
ラストスパート
なぜそうなるのかというのを 考えてきたんですけど
考える
という
ひとつは学校の勉強が あるんじゃないかと思うんですよ
思う
勉強
学校
ひとつ
学校っていうのは 一学期のある決まった期間に
学期
期間
決まる
一
学校
っていう
あるものを勉強しなきゃいけなくて
勉強
いける
で その最後に 試験とかレポートを書いてる
最後
試験
レポート
書く
で それを勉強したことを 証明するのですから
勉強
証明
その環境におけると実はラストスパート型で なんとかなっちゃうんです
なんとか
型
環境
実は
ちゃう
ラストスパート
おける
もしくはラストスパート型の方が 効率が良かったりするし
方
型
良い
効率
ラストスパート
もしくは
あと学校っていうその社会の中では
社会
中
学校
っていう
みんなが遊んでいる時に勉強すると 変な奴じゃないですか
変
勉強
みんな
時
遊ぶ
奴
そうすると みんなが 遊んでいるときは一緒に遊んで
みんな
遊ぶ
一緒
そうすると
試験前になると勉強をするっていう方が
試験
勉強
方
前
っていう
社会的に効率がいいということもあって
社会
的
効率
という
結局みんなで引き摺られて 試験前だけ勉強するっていうことを
試験
勉強
みんな
結局
前
っていう
引き摺る
高校、大学と繰り返すわけですよ
高校
繰り返す
大学
それが何か勉強のリズムとして 身についてしまって
何
勉強
身
しまう
リズム
として
社会人になっても 同じことをするんじゃないかなと
社会
人
同じ
わたしは思っている
思う
わたし
社会に出たときのプロジェクトと 学校の勉強とは全然違うんですよ
社会
勉強
全然
学校
違う
出る
プロジェクト
やられた方は分かると思うんですけど
思う
方
分かる
3ヶ月でこのプロジェクトは できそうだなって始めてみたら
始める
できる
ヶ月
プロジェクト
実は6ヶ月かかる1年かかるってことが しばしばあるんですよ
かかる
実は
しばしば
ヶ月
年
もしくはソフトウェアの場合だと こういう設計で作ろうって言って
ソフトウェア
場合
設計
言う
作る
こういう
もしくは
作ってみて8割方できてみたら 性能がでないなと
方
できる
性能
割
作る
で 何が悪いかっていうと あぁ設計が悪いんじゃないかと
何
設計
悪い
じゃ一回ゼロから作り直しだな みたいなことは しばしばあるんです
回
しばしば
一
みたい
作り直す
想定外の状況って呼んでもいいけど
外
状況
呼ぶ
想定
そういう状況に ラストスパート型は弱いんです
型
状況
弱い
そういう
ラストスパート
なぜ弱いかって言うと 色んなことが見えてくる —
見える
言う
弱い
色んな
例えば使い勝手がいいのかとか 本当に性能がでるのかっていうのは
例えば
性能
本当に
使い勝手
やっぱり8割方作ったところなので
方
やっぱり
割
作る
ところ
その8割方作ったって言うのが
方
割
言う
作る
どの時点で見えるかっていうのが 矢印で示してあるんですけど
見える
示す
矢印
時点
このラストスパート型だと
型
ラストスパート
本当に締め切りギリギリに 8割出来るわけです
出来る
割
本当に
ギリギリ
締め切り
その時点で使い勝手悪かったから 直そうって言っても
直す
言う
悪い
時点
使い勝手
時間ないじゃないですか
時間
だから延びちゃうんですよ 間に合わないんですよ
だから
間に合う
延びる
ちゃう
特に最悪なのが
特に
最悪
例えば「性能が出ない」 その原因が設計にある時なんかです
原因
例えば
設計
時
性能
出る
なんか
本当だったらね 設計が悪いんだから
設計
本当
悪い
ゼロから作り直さなきゃ ならないんですけど
作り直す
もうこの時点になったら そんなことしてられないですよね
そんな
時点
られる
もうこ
わたしよく見てますけど
見る
わたし
そういう状況に陥ったエンジニアが 何をするかって言うと
何
状況
言う
陥る
そういう
エンジニア
設計が悪かったっていうことを 認めないんですよ
認める
設計
悪い
本人は心の中で知っているんだけど 今さらそんなこと言えないじゃないですか
心
そんな
本人
中
知る
今さら
言える
締め切りまでもう3日しかないのに
日
締め切り
「設計間違ってました
設計
間違う
ゼロから作り直すしかありません」 とは言えないので
言える
作り直す
結局 対症療法だけで しのごうとするんですよ
結局
対症療法
しのぐ
それをすると何がおこるかと言うと
おこる
何
言う
結局 根本設計が悪いから
結局
設計
根本
悪い
パフォーマンスが出ない バグだらけになる 使い勝手悪い
だらけ
出る
悪い
パフォーマンス
使い勝手
どうしようもないことに 陥っていくんですよ
しよう
陥る
だからいつまでたっても 徹夜しようが 残業しようが 週末働こうが
だから
徹夜
働く
残業
週末
いつまでたっても 終わらないっていう状況に陥る
状況
終わる
陥る
っていう
ソフトウェア業界では 「デスマーチ」って呼んでるんですけど
ソフトウェア
呼ぶ
業界
その一番の原因は 実は設計にあり
原因
一番
実は
設計
なぜその設計が悪いことが ここまで分からなかったかというと
設計
分かる
悪い
ラストスパート型だからですよ
型
ラストスパート
これをスタートダッシュ型で作ると
型
スタート
作る
ダッシュ
だいたい最初の2割の時間で 8割作る
最初
だいたい
割
時間
作る
そこで見えてくるわけです
見える
そこで
そこで例えば使い勝手が 悪かったなって言ったら
例えば
そこで
言う
悪い
使い勝手
直す時間は十分あるし
十分
直す
時間
万が一 その設計が 根本的に悪かったって
設計
的
根本
悪い
万が一
この時点だったら一回ゼロから 作りなおすこともできるわけですよ
なおす
回
できる
一
作る
時点
そういう意味で圧倒的に
意味
そういう
圧倒的
このスタートダッシュ型のほうが 有利なんですよ
有利
型
スタート
ダッシュ
で 今日はこの話をして
今日
話
基本的には このメッセージなんですけど
基本
的
メッセージ
こういう話を聞いてもね なんか「いい話だなー」って言って
言う
聞く
話
こういう
そのままこう…
そのまま
結局「自分には関係ない」とか
関係
結局
自分
「できない」とか言う人が 多いと思うんだけど
思う
できる
人
言う
多い
働いている量は 実際 変わらないじゃないですか トータルの
変わる
量
実際
働く
トータル
いつ頑張るかの違いでしかないんですよ
違い
頑張る
だから できるできないの話じゃなくて やるかやらないかの話なんですよ
だから
できる
話
例えばマラソンランナーで 一流の人たちっていうのは
例えば
一流
マラソン
人
ランナー
っていう
ペース配分を知ってるじゃないですか
知る
ペース
配分
それと同じように こういうプロジェクトに関わる —
同じ
こういう
関わる
プロジェクト
別にエンジニアじゃなくて
別に
エンジニア
デザイナだったり 企画の人でもいいんだけど
デザイナ
人
企画
こういうプロジェクトに 仕事として関わるんであれば
仕事
こういう
として
関わる
プロジェクト
やっぱりペース配分ぐらいは ちゃんとやりましょうよと そういう話です
ちゃんと
やっぱり
ぐらい
話
ペース
そういう
配分
ありがとうございます
ありがとう
ござる
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