JLPT N1 – Reading Exercise 49

#276



子どもの昆虫採集について、生命尊重や希少種保護の観点からの批判的な意見が聞かれる。これに対しては、子どもが採集する数など微々たるものなのだから、自然と触れ合うことのメリットを重視すべきだという反論もある。

確かに幼少期の自然体験は自然観の形成に必要ではあるが、実際に子どもの昆虫採集の様子を見ると、子どもが魅力を感じているのは捕獲の瞬間だけだ。子どもの興味に任せるだけではただの遊びにしかならない。そのため、昆虫採集をより有意義な体験にするには、大人からの働きかけが必要だ。昆虫の体や生態を見て知る姿勢を教え、子どもが種の多様性に気づくようにすることが大切だ。



虫取りに夢中になって時間を忘れてしまう子や自分のつかまえたバッタに見入ってしまう子は、もうその活動の中にその子どものよさや可能性が秘められている。「どこがおもしろいの」と訊ねれば、彼らは根拠を持って今自分が価値を持って見つめているものについて答えてくれるだろう。彼らの学びは、もうすでに始まっているのだ。

学びを通して、自然に対し自分なりの意味を構築していく中で「生命観」も「自然観」も進化していく。それに伴って、「生命愛護」「自然環境との共存」という心情も深化していくものだろう。(中略)そのように考えるとき、自然に対して自分なりの意味を見いだせるかということ、実感を伴った理解が行われるかということを抜きにして、「生命愛護」も「自然環境との共生」も語ることはできないだろう。

(角屋重樹・森本信也編著『小学校理科教育はこう変わる――ニューサイエンスを求めて』による)

バッタ:昆虫の一種

Try It Out!
1
子どもが昆虫をつかまえることについて、AとBはどのように考えているか。
1. Aは観察する姿勢を身につけさせれば有益になると考え、Bは実感を伴った自然の理解に役立つと考えている。
2. Aは子どもの興味に任せるだけでは十分ではないと考え、Bは興味を持った子どもには積極的に勧めたほうがいいと考えている。
3. Aは自然を知るきっかけにはならないと考え、Bは子どものよさや可能性を伸ばすきっかけになると考えている。
4. Aは種の多様性を知る上で重要だと考え、Bは成長過程において欠かせない経験だと考えている。
2
AとBの認識で共通していることは何か。
1. 子どもの成長過程で、自然保護に対する心情が深められていく。
2. 子ども時代の自然との触れ合いを通した学びが自然観の基礎になる。
3. 子どもの自発的な体験や学びだけでは自然観の形成には十分ではない。
4. 自然体験が多い子どものほうが、自然保護の精神が強くなるわけではない。