JLPT N1 – Reading Exercise 52

#279

以下は、ある日本企業の経営者が書いた文章です。

現状維持でいい。そう思ったとたん、進歩は止まる。外の世界では、絶え間ない進化と発展が続いている。何もせずに同じところにとどまっているのは、じつは最大のリスクなのである。この国にもう、安全、安心、安定はない。自分は人生をどうしたいのか、会社をどう変えたいのか、この国をどうすべきか…一人ひとりが日本の置かれた現実を直視しながら、志高く毎日を真剣に生きない限り、未来も変わらない。

そう言うと多くの日本人は反射的に、次のように思うかもしれない。

「どうすればいいか、もっと具体的に教えてほしい」

とりあえず「見本」のようなものがないと、何をやったらよいのか、見当がつかないのだろう。

しかし、それぞれが置かれた状況によって、すべきことが異なるのは当然。ある人にとってはプラスなことが、別の人にとってはマイナスにつながることもあるかもしれない。そもそも私は、ノウハウ本なるものをまったく信用していない。そこに書いてあるのは、過去の成功法則でしかない。それをもとに時代に合致した新しい法則を考えるというのであればまだよいが、過去の成功例をそっくり踏襲して、うまくいくはずがない。いずれにせよ、情報が瞬時に世界を駆け巡るグローバル時代では、そうした成功法則は、あっという間に陳腐化してしまう。

ただし、時代が変化しても普通的に通用する「考え方」というものなら、あるかもしれない。もちろんそれにしても、世の趨勢に影響されないことはない。しかし自らの視点があるかないかで、目の前の風景はまったく変わってくる。

(柳井正『現実を視よ』による)

Try It Out!
1
何もせずに同じところにとどまっているのがリスクなのは、なぜか。
1. 安定や安心を失うから
2. 未来を考えられなくなるから
3. 社会の進歩を止めてしまうから
4. 周囲の進歩から取り残されるから
2
ノウハウ本あるものをまったく信用していないとあるが、なぜか。
1. 過去の成功例から、新しい法則は導き出せないから
2. 過去の成功例から、成功した本人にしか再現できないから
3. 変化の速い現代においては、過去の成功例は役に立たないから
4. グローバル時代においては、個人の成功例はささいなものだから。
3
筆者によると、変化する時代を生きていくうえで必要なことは何か。
1. 社会の動きを敏感に察知できること
2. 自身で主体的に世の中をとらえること
3. 世の中の変化を広い視野でとらえること
4. 他者と自身の視点の違いを見つけること