通知では、大型連休の期間は、ふもとでは初夏のような気候でも、山では天気が変わりやすく、冬山に様変わりして猛吹雪となることがあるほか、登山道の周辺に雪が残っている場合があるとしています。
そのため、登山の前に最新の積雪や期間中の気象の情報を収集して、無理のない計画を立てることや、ビーコンやシャベルなど雪崩に備えた装備を持ち、防寒対策をすること、それに、登山中も天気や周囲の状況に気を配り、危険を感じたら速やかに下山することなどを呼びかけています。
スポーツ庁は「雪崩は冬山だけでなく大型連休の期間も起こるという認識を強く持って、安全に登山するようにしてほしい」と話しています。
長野県警が積雪状況の動画公開
長野県警は、本格的な春山シーズンを迎え、県外からも多くの登山者が訪れる大型連休を前に、北アルプスや八ヶ岳連峰など山の積雪の状況をヘリコプターで撮影した動画をホームページなどで公開し、雪崩などに十分注意するよう呼びかけています。
長野県警察本部によりますと、去年4月から6月末までの春山シーズン中に県内で起きた山岳遭難は59件で、このうち15件は大型連休中に発生し、死者・行方不明者は合わせて4人に上りました。
本格的な春山シーズンを迎え、県外からも多くの登山者が訪れる大型連休を前に、長野県警はホームページなどで山の積雪の状況を撮影した動画を公開し、注意を呼びかけています。
動画は、今月中旬、北アルプスや八ヶ岳連峰など登山者に人気の山を上空からヘリコプターで撮影したもので、それぞれの山の特徴や登山の際の注意点なども紹介しています。
長野県警山岳安全対策課は「ことしの積雪は例年並みだが、雪が少なかった去年よりも多く天候によっては雪崩の危険もある。事前に山の情報を集め、入念に準備して登山にのぞんでほしい」と話しています。
一方、先月、長野県松本市で起きた墜落事故で、唯一の防災ヘリコプターを失った長野県も、全国各地の山岳協会などに文書を出して遭難防止への協力を求めています。
文書では「防災ヘリの墜落事故を受け遭難発生時の救助対応の不足が見込まれる」として、登山者に対し、登山道や積雪などの状況を確認してから山に入ることや、登山計画書を事前に提出することなど指導を徹底するよう呼びかけています。
登山用品の専門店では
東京・千代田区にある登山用品の専門店では、雪山の装備や防寒対策の衣類などを年間を通じて販売していて、大型連休に山を訪れる登山客に装備の充実を呼びかけています。
社員の東秀訓さんは登山に関する客の相談に応じています。東さんは、この時期の山は、気温が氷点下に下がることがあるため、山道が凍って滑落のおそれが高まるほか、風がある場合、低体温症に陥るおそれがあることなどを説明しているということです。
このため、雪の斜面で滑らないためのピッケルやアイゼンといった装備に加え、手袋や靴下など、体を温かく保つための衣類を身につけることが欠かせないとしています。
さらに、この時期は雪崩の危険性もあるとして、雪に埋もれた場合に居場所を発信するビーコンや、雪を掘るためのシャベルを用意するなど、雪山の装備を充実させる重要性を伝えているということです。
ICI石井スポーツの東さんは「春山といえども、冬山に逆戻りすることを考えて装備を用意しています。自分の経験だけで春の山を捉えるのではなく、最悪の条件になると考えて装備をそろえてほしい」と話していました。
店を訪れた64歳の男性は、春山の登山について、「この時期は天候が悪くなったときに雪か雨かという判断が非常に難しいので、やはり冬山の装備が必要だと思います。気をつけて山にのぞみたいと思います」と話していました。
専門家「全層雪崩の危険も 冬山装備を」
山の事故に詳しい専門家は、大型連休の期間中はこれまでに積もった雪全体が崩れる全層雪崩が起きるおそれもあるとして、冬山の装備を忘れないよう呼びかけています。
日本山岳・スポーツクライミング協会の尾形好雄専務理事は、大型連休の時期は、新たに降った雪の表面付近が崩れる表層雪崩に加え、気温が上昇するため雪どけが進んで、これまでに積もった雪全体が崩れる全層雪崩が起きる危険性があるとしています。
全層雪崩は、斜面の土砂などを巻き込みながら崩れることも多く、巨大な木を押し倒すような大きな破壊力があるということで、尾形専務理事は「3000メートル級の高い山は夏と冬が同居しているため、必ず冬山装備を持っていくとともに、登山中は左右の沢筋などに常に注意を張り巡らせて、雪崩に遭遇しないようにすることが大切だ」と話しています。
また、ことしは雪が少なかった去年より、多い積雪があるということで、「去年は雪がなかったから大丈夫だという思い込みで山に登らないでほしい。事前にインターネットなどで最新の積雪情報を収集してほしい」と話していました。