旅客機のトイレでたばこを
吸う
行為が、
去年1年間に
国内の
航空会社で
確認されただけでも
105件に
上っていることが
国土交通省への
取材でわかりました。
国土交通省と
航空各社は、
火災や
重大な
事故につながるおそれがあるとして
絶対にやめるよう
呼びかけています。
国内の
航空各社は、
18年前の
平成11年から
国内線と
国際線の
機内を
禁煙にし、
平成16年からはトイレでの
喫煙を
安全を
阻害する
行為として
法律で
禁止されています。
喫煙行為が
発覚した
場合、
客室乗務員が
警告し、さらに
機長が
禁止命令を
出してそれでも
従わない
場合には
50万円以下の
罰金が
科されます。
国土交通省が国内の航空会社10社を対象に調べたところ、去年1年間に機内のトイレで確認された喫煙行為は、国内線と国際線を合わせて105件に上っていることがわかりました。
トイレで確認された喫煙行為は、法律で禁じられた平成16年の291件から平成24年には95件まで減りましたが、平成25年以降は毎年100件を超え、横ばい傾向が続いています。
国土交通省によりますと、これまでに罰金が科された乗客はいませんが、客室乗務員の目を避けてトイレ内でたばこを吸い、中のゴミ箱などに吸い殻を捨てるケースが目立つということです。
国土交通省と航空各社は、機内のトイレでたばこを吸う行為は火災や重大な事故につながるおそれがあるとして絶対にやめるよう呼びかけています。
旅客機のトイレでの喫煙行為が後を絶たない状況について、羽田空港の利用者からは「ルールを守ってほしい」といった声が聞かれました。
このうち、北海道から家族3人で東京に遊びに来たという女性は「きちんと喫煙のルールを守ってほしいし、安全のためにもやめてほしい」と話していました。
また、家族で沖縄に向かうという女子高校生は「飛行機の中でたばこを吸う人がいると聞いて衝撃を受けました。火災になったら怖いので絶対にやめてほしい」と話していました。
札幌に出張するという喫煙者の男性は「機内で吸いたいと思ったことはありません。限られた時間ですし、吸ってはいけないのだから出発前に吸って我慢すべきだ」と話していました。
喫煙による旅客機火災も
過去にも旅客機内での喫煙行為が重大なトラブルや事故につながったケースが報告されています。
1973年にはフランスの上空でブラジルの航空会社の旅客機がトイレ付近から火が出たため不時着し、乗客乗員合わせて100人以上が死亡しました。出火原因の一つとして、乗客のたばこの不始末が指摘されています。
また、平成14年には韓国のインチョン発、関西空港行きの日本航空機で飛行中に客室後部のトイレから煙が出て緊急着陸しました。乗客乗員にけがはありませんでしたが、トイレのゴミ箱からたばこの吸い殻が見つかったことから、乗客の喫煙が原因と見られています。
このほか平成22年には、アメリカの国内線の旅客機でトイレで喫煙していたと見られる男性が航空保安官にとがめられ、「靴に火をつけようとした」と冗談交じりに話したため、戦闘機2機が緊急発進する騒ぎになりました。
航空会社の対策は
日本航空は29年前の昭和63年に国内線の一部の路線で初めて機内の禁煙を決め、平成10年からは国内線で、平成11年からは国際線でもすべての路線で禁煙にしました。このため、離陸前に機内で放映するVTRでも、乗客に対して機内での禁煙を呼びかけています。
また、トイレ内には熱や煙を感知する装置が設置されているほか、客室乗務員が乗客がトイレを利用したあと、ゴミ箱や物入れの中などをチェックし、喫煙が行われていないか確認しています。
その結果、トイレで確認された喫煙行為は、喫煙者を特定したケースだけで毎年40件ほどあり、トイレ内に残った臭いや吸い殻などから喫煙が疑われるケースを合わせると、昨年度はおよそ150件に上っています。
トイレ内の感知器が作動すると客室内に警報音が鳴り、緊急着陸や空港に引き返したりするなど大きなトラブルになるおそれがあるということです。
国土交通省と警察庁、航空各社では、機内での喫煙の危険性を訴えるポスターを空港などに貼り、トイレでの喫煙をやめるよう呼びかけています。
日本航空客室安全推進部の井澤慶子さんは「トイレ内で喫煙すると火災が発生する可能性があり、安全運航に支障を来すので絶対にやめてほしい。喫煙者は搭乗前に空港内で喫煙したり、ニコチンが入ったガムを利用したりして対応してほしい」と話していました。