JLPT N1 – Reading Exercise 95

#322



現在の若者世代は、「車離れ」などの言葉に象徴されるように消費に対して消極的な世代だととらえられることが多い。高級車やブランド品などかつて若者が憧れたものに見向きもしない若者が増加しているという。要因の一つとしては、収入が少なく未来に希望が持てないために節約志向の若者が増えていることがあると言われているが、生まれたときから多くのものに囲まれて育ったおかげで、ものそのものに対する欲求が低いことも挙げられよう。

とはいえ、そのような若者たちも全く消費をしないわけではない。彼らは、単なるものだけではなく、人とのつながりや体験を共有するためにお金を使うのだ。



若者の消費実態を俯瞰すると、今の若者は、デフレや流通環境の進化による消費社会の成熟化、情報通信をはじめとする技術進化の恩恵を受けて、バブル期の若者よりもお金をかけずに多様な商品・サービスを楽しめる環境にある。安価で高品質な商品・サービスがあふれ、娯楽も多様化していることで、選択できる対象も増えている。こういった変化によって、今の若者では消費に対するモノサシが変わり、「クルマ」や「高級ブランド品」といったバブル期の若者の欲していたものへの興味関心が相対的に薄れているのだろう。

つまり、「若者はお金を使わない」わけでなく、お金を使わなくて済むようになり、価値観の変化により欲するものが変わってきている。

(久我尚子『若者は本当にお金がないのか?-統計データが語る意外な真実』による)

Try It Out!
1
現在の若者の商品傾向について、AとBはどのように述べているか。
1. AもBも、消費の対象が変化していると述べている。
2. AもBも、ものそのものに対する興味関心が低くなったと述べている。
3. Aはものを買わなくなったと述べ、Bは品質にこだわらなくなったと述べている。
4. Aは消費の対象がものではなくなったと述べ、Bは自身のために消費するようになったと述べている。
2
若者の消費傾向の変化の要因について、AとBが共通して指摘している点は何か。
1. 若者の購買力が下がったこと。
2. 若者が節約を好むようになったこと。
3. 若者がものに恵まれた環境にあること。
4. 若者にとって魅力的なものが少ないこと。