トランプ次期大統領は今月23日、15ある連邦政府の省のトップのうち最後まで決まっていなかった農務長官の起用を発表し、ホワイトハウスの補佐官などとあわせて次期政権の主要ポストの発表をほぼ終えました。
シンクタンクのブルッキングス研究所の研究員でアメリカの政権移行について長年、研究してきたキャサリン・テンパス氏によりますと、大統領選挙から18日間で主要ポストをほぼ固めた今回は、8年前のトランプ氏の1期目と比べると格段に早いペースだということです。
この背景についてテンパス氏は、1期目は選挙の直後にトランプ氏が政権移行チームの責任者を解任するなどして混乱が続いたことに加え、今回は、トランプ氏の側近が多く所属するアメリカ第一政策研究所と、ヘリテージ財団という2つの保守系シンクタンクが、返り咲きを念頭に主要ポストの候補者を調査するなど、3年前から準備を進めてきたことがあると指摘しました。
そのうえでテンパス氏は、2期目の人選について「最も際立った特徴は、トランプ氏に対する忠誠心の強さだ。トランプ氏は1期目の際、思うように政権移行ができなかったことに気付いたのだろう。今回はすでに一度、大統領を務めた経験があり、特に信頼を置いている人たちからの助言により進んで耳を傾けるはずだ」と分析しました。
米専門家「次期政権の優先事項 おそらく5つ」
ブルッキングス研究所のキャサリン・テンパス氏はNHKのインタビューに対し、トランプ氏の人選から読み取れる次期政権の優先事項について「おそらく5つあり、移民、貿易、関税、減税、そして環境規制の撤廃だ」と指摘しました。
また、トランプ氏の政権移行チームが、連邦政府の一般調達局から施設や通信などの技術の提供を受けないとしている背景についてテンパス氏は、提供を受けるには5000ドル以上の寄付をすべて報告する規定となっていることを挙げ、「イーロン・マスク氏などトランプ氏を支えている人たちの多くは億万長者であり、一般調達局が政権移行のために提供する700万ドル相当の支援は、トランプ陣営にとってさしたる額ではない。彼らは、誰がどれだけの寄付をしたのかを知られたくないのでむしろ合意に署名しないことを選んだようだ」と分析しました。
このほか、1期目のトランプ政権で閣僚や補佐官の辞任が相次いだことについてテンパス氏は「1期目にスタッフの入れ代わりが激しかったのは、トランプ氏のリーダーシップと性格によるもので、それは今も変わっていない。2期目の政権の初期はより協力的なものになるとみられるが、ある時点から、意見の相違によって協力関係は崩れるだろう」と述べ、主要ポストの交代が相次ぐ事態は2期目にも起こりえるという見方を示しました。
バイデン大統領「メキシコとカナダに関税は逆効果」
アメリカのバイデン大統領は、トランプ次期大統領がメキシコとカナダに新たな関税を課すと発表したことについて、28日、記者団に対し、メキシコとカナダという2つの同盟国との関係を損なうべきではなく「逆効果」だとしてトランプ次期大統領に再考するよう求めました。
トランプ次期大統領は、メキシコやカナダからかつてない水準で犯罪や薬物がアメリカに流入しているとして、来年1月20日の大統領就任日に、最初に出す多くの大統領令の1つとして、両国からのすべての製品に25%の関税を課すために必要な文書に署名する意向を明らかにしています。
トランプ氏とメキシコのシェインバウム大統領は27日、直接話をしたとそれぞれSNSに投稿し、双方、すばらしい会話をしたとして建設的な会談だったとアピールしています。
ただ、アメリカメディアは関税や国境をめぐる言及について食い違いがあると報じていて、今後の交渉が焦点となります。