大人のことばと子どものことばの場合も、大人のことばが「中心」で、子どものことばは「中心」ではありません。だから、普通は、私たちは、「中心」であるところの大人のことばを維持しなければならないと思っており、子どもが何か変わった言い方をしますと、(___1___)。
しかし、その反面、子どものことばというのは、必ずしも全部大人のことばに合わせて直されてしまうわけではありません。それは、ことばというのが、時代とともに変わるということをみればすぐわかることです。「ことばが変わる」という場合、それは世
代から世代への移り変わりで、(2)ずれが起こっているということですし、そのずれというのは、子どものことばに始まったものが、それを直そうとする試みにも関わらず、しきれなくて、それが大人のことばの中に入り込み、言語を変えるのだと考えることができます。こんなふうに考えてきますと、(3)「中心」でないものも、最近のことばを使いますと、文化というものを「活性化」する、つまり、それに活力を与える。そういう意味を持っているものとしてとらえなおすことができるわけです。
(池上嘉彦「ふしぎなことばことばのふしぎ」筑摩書房による)