JLPT N1 – Reading Exercise 63

#290

以下は、ある映画監督が書いた文章である。

勝負を続けている限りは、負けは確定しない。勝ったり負けたりしながら、人生は続いていく。ただ、勝負を続けていくうちにだんだん勝負勘はついてくるし、くだらない失敗はしなくなってくる。スキルが上がってくるからだ。

映画の話で言えば、僕は映画制作のシステムそのものに、大負けをしない仕掛けを組み込んだ。それは、「1」「他人と仕事する」ということだ。他人という客観性を映画制作の現場に持ち込めば、独りよがりな作品に突っ走ることを彼らが防いでくれる。それに僕は優秀なやっとしか組まないから、僕一人で何も考えるずっと映画の質は高くなるのだ。

勝負を続けていると、思わぬ成果が飛び込んでくることがある。かって負けたと思い込んでいた勝負に、後になって勝ってしまうことがあるのだ。僕の例で言えば、愚直に映画を撮り続けて、ある程度の評価を得るうちに、かってボロクソに言われた作品に光が当たり、再評価されるようなこともある。

(中略)

だから「2」絶対に勝負を諦めてはいけない。ただし、常勝を狙うのは禁物だ。勝負をしなければ勝つことはできないが、必ず勝とう、絶対に失敗しないようにしようと意気込んだら、緊張感や気負いや、そんな余計なものを背負い込んで結果的に負けてします。

(押井守『凡人として生きるということ』による)

Try It Out!
1
「1」「他人と仕事する」ことの利点について、筆者はどのように述べているか。
1. 負けた責任を一人で背負わなくて済むため、楽な気持ちで作品が作れる。
2. 思い込みによる失敗がなくなり、誰にでも受け入れられる作品が作れる。
3. 仕事の負担が減り、作品の質を高めることに集中できる。
4. 作品の客観性が保たれる上に、質も上がられる。
2
「2」絶対に勝負を謙めてはいけないとあるが、なぜか。
1. 後で作品の価値が認められることがあるから。
2. よい作品は必ず評価されるものだから。
3. どんな勝負にも得るものがあるから。
4. 勝負に慣れて緊張しなくなるから。
3
筆者によると、勝負を続ける上で気を付けるべき点は何か。
1. 勝負以外のことは考えてはいけない。
2. 勝ち負けにこだわってはいけない。
3. いつも勝とうと思ってはいけない。
4. 負ける自分を想像してはいけない。