能登のと半島はんとう地震じしん 住宅じゅうたくの被害ひがい認定にんてい 能登のと地方ちほう6市町しちょう 全体ぜんたい28％余よ再さい調査ちょうさ

住宅じゅうたくの被害ひがい認定にんてい調査ちょうさは被災ひさい者しゃからの申請しんせいを受うけて自治体じちたいが行おこなうことになっていて、被害ひがいを「全壊ぜんかい」や「半壊はんかい」「一部いちぶ損壊そんかい」など6つの段階だんかいに分わけて認定にんていしたうえで、公的こうてきな支援しえん金きんなどを受うけるために必要ひつような「り災りさい証明しょうめい書しょ」を発行はっこうします。

ただ、被災ひさい者しゃが1次じ調査ちょうさの結果けっかに納得なっとくできないと申請しんせいした場合ばあいは2次じ調査ちょうさ、さらに不服ふふくの場合ばあいは3次じ調査ちょうさと再さい調査ちょうさが行おこなわれていきます。

地震じしんから11か月かげつとなる中なか、調査ちょうさの現状げんじょうはどうなっているのか。

NHKは石川いしかわ県けん輪島わじま市しや珠洲すず市し、能登のと町まちなど能登のと地方ちほうの6つの市しと町まちを取材しゅざいしました。

それによりますと6つの市しと町まちでは、11月つき26日にちまでに、合あわせて5万まん1356件けんで認定にんてい調査ちょうさの結果けっかをもとにした「り災りさい証明しょうめい書しょ」が発行はっこうされていました。

しかし、このうち28.7％にあたる1万まん4789件けんでは再さい調査ちょうさが行おこなわれていることが分わかりました。

自治体じちたい別べつの再さい調査ちょうさの件数けんすうは、

▽輪島わじま市しが4479件けんで「り災りさい証明しょうめい書しょ」を発行はっこうした件数けんすうのうちの42.6％、

▽珠洲すず市しは2134件けんで37.9％、

▽能登のと町まちは2451件けんで27.8％、

▽七尾ななお市しは3798件けんで23.2％、

▽志賀しか町まちは1387件けんで20.5％、

▽穴水あなみず町まちは540件けんで16.2％に上のぼっています。

中なかには5次じ調査ちょうさまで行おこなわれたケースもあり、件数けんすうは珠洲すず市しで4件けん、能登のと町まちで5件けんの合あわせて9件けんとなっています。

「り災りさい証明しょうめい書しょ」をもとに自治体じちたいから支給しきゅうされる支援しえん金きんや配分はいぶんされる義援金ぎえんきんは認定にんてい調査ちょうさの結果けっかによって大おおきく変かわり、生活せいかつの再建さいけんなどに影響えいきょうが出でる可能かのう性せいがあります。

被災ひさい者しゃからは結果けっかと被害ひがいの実態じったいにかい離かいりがあるという声こえも聞きかれ、納得なっとくできる形かたちで速すみやかな支援しえんをどう進すすめていくのかが課題かだいとなっています。

再さい調査ちょうさで認定にんていが見直みなおされたケースも

自治体じちたいが行おこなう被害ひがい認定にんてい調査ちょうさについて、内閣ないかくの指針ししんでは1次じ調査ちょうさは建物たてものの外側そとがわから見みえる範囲はんいで被害ひがいを確認かくにんしたうえで建物たてものの傾かたむきを計測けいそくするなどして認定にんていし、2次じ調査ちょうさ以降いこうの再さい調査ちょうさは建物たてものの外側そとがわのほか原則げんそくとして住民じゅうみんの立ち会たちあいのもと建物たてものの内部ないぶに入はいって調査ちょうさして認定にんていするとしています。

能登のと半島はんとう地震じしんで被災ひさいした住民じゅうみんの中なかには、自治体じちたいに被害ひがい認定にんていの2次じ調査ちょうさを申請しんせいした結果けっか、1次じ調査ちょうさよりも被害ひがいの程度ていどが大おおきいと認定にんていされるケースもありました。

石川いしかわ県けん能登のと町まちで娘むすめと2人にんで暮くらす梶原かじはら征ただし一郎いちろうさん（82）は、1月つきの地震じしんで自宅じたくが被害ひがいを受うけたため町まちに被害ひがい認定にんてい調査ちょうさを申請しんせいしました。

町まちが1次じ調査ちょうさを行おこなった結果けっか、ことし3月つき、住宅じゅうたくの被害ひがいの割合わりあいが10％未満みまんだとして「一部いちぶ損壊そんかい」と認定にんていされた「り災りさい証明しょうめい書しょ」が郵送ゆうそうで届とどきました。

しかし自宅じたくの内部ないぶでは、床ゆかが傾かたむいたり壁かべに亀裂きれつができたりする被害ひがいがあったため、結果けっかには納得なっとくできなかったといいます。

り災りさい証明しょうめい書しょには「不服ふふくがあれば再さい調査ちょうさを申請しんせいしてください」と記載きさいされていましたが、再さい調査ちょうさがどのような制度せいどなのか町まちからの説明せつめいはなく、申請しんせいを諦あきらめていたと話はなします。

こうした中なか、ことし5月つきに行おこなわれた弁護士べんごし会かいの相談そうだん会かいで再さい調査ちょうさについて知しり、能登のと町まちに2次じ調査ちょうさの申請しんせいを行おこないました。

そしてことし7月つき、住宅じゅうたくの被害ひがいの割合わりあいが20％以上いじょう40％未満みまんである「半壊はんかい」と認定にんていされ、改あらためて「り災りさい証明しょうめい書しょ」の交付こうふを受うけました。

町まちからは「一部いちぶ損壊そんかい」と比くらべて35万まん円えん多おおい45万まん円えんの義援金ぎえんきんを受け取うけとることができたといいます。

梶原かじはらさんは「役所やくしょから再さい調査ちょうさできると説明せつめいを受うけていれば申請しんせいしていたと思おもいます。住宅じゅうたく被害ひがいについての判定はんていが見直みなおされてよかったです」と話はなしていました。

石川いしかわ 能登のと町まち 27.8％にあたる2451件けんで再さい調査ちょうさ行おこなわれる

被災ひさい地ちの自治体じちたいは、速すみやかに「り災りさい証明しょうめい書しょ」を発行はっこうするために人員じんいんが限かぎられる中なかでも地震じしんの発生はっせい直後ちょくごから住宅じゅうたくの被害ひがい認定にんてい調査ちょうさを進すすめたとしています。

能登のと半島はんとう地震じしんで震度しんど6強きょうを観測かんそくした石川いしかわ県けん能登のと町まちでは、11月つき25日にちまでに8800件けんの「り災りさい証明しょうめい書しょ」が発行はっこうされました。

このうちの27.8％にあたる2451件けんで再さい調査ちょうさが行おこなわれ、このうち※5件けんは5次じ調査ちょうさまで行おこなわれました。

町まちによりますと税務ぜいむ課かの職員しょくいん2人にんが被害ひがい認定にんてい調査ちょうさを担当たんとうしていますが、建築けんちく士しなどの資格しかくはなく、内閣ないかく府ふが作成さくせいした指針ししんを頼たよりに調査ちょうさを行おこなっているということです。

能登のと町まちでは11月つき22日にちにも2次じ調査ちょうさが行おこなわれていて、木造もくぞう2階かい建だての住宅じゅうたくでは職員しょくいん2人にんが外観がいかんの調査ちょうさを数すう分ふんで終おえたあと、2時間じかんほどかけて内部ないぶを調査ちょうさしていました。

能登のと町まちによりますと、ことし1月つきの地震じしんのあと各地かくちの自治体じちたいから職員しょくいんの応援おうえんがあり、職員しょくいんだけでも一いち日にち当あたり最大さいだい44人にんで住宅じゅうたくの被害ひがい認定にんてい調査ちょうさを行おこなったということです。

さらに多おおくの職員しょくいんの派遣はけんを受うけたいと思おもったものの地震じしんによる断水だんすいなどの影響えいきょうもあり、受け入うけいれは難むずかしかったといいます。

能登のと町まちは、り災りさい証明しょうめい書しょを原則げんそく、郵送ゆうそうしていますが、窓口まどぐちを訪おとずれた住民じゅうみんには再さい調査ちょうさが申請しんせいできると説明せつめいを行おこなっているということです。

※この記事きじの公開こうかい当初とうしょ、5次じ調査ちょうさまで行おこなわれたのは4件けんと記載きさいしていましたが、正まさしくは5件けんでした。失礼しつれいしました。

能登のと町まち税務ぜいむ課かの修おさむ田た明あきら延のべ主事しゅじは「地震じしん発生はっせいからずっとり災りさい証明しょうめい書しょを発行はっこうするための住宅じゅうたくの調査ちょうさにあたってきましたが、まだ途上とじょうにあるため振り返ふりかえる余裕よゆうはないのが現状げんじょうです。今後こんごの災害さいがいに備そなえるためにもより改善かいぜんできるように取り組とりくんでいきたい」と話はなしています。

専門せんもん家か「自治体じちたいどうしでの連携れんけいが重要じゅうよう」

住宅じゅうたくの被害ひがい認定にんていの再さい調査ちょうさは過去かこの災害さいがいでも課題かだいになっています。熊本くまもと県けんによりますと2016年ねんの熊本くまもと地震じしんでも全体ぜんたいの28.3％で行おこなわれていて、専門せんもん家かは「自治体じちたいどうしで連携れんけいし調査ちょうさの難むずかしさなどを共有きょうゆうすることが重要じゅうようで、職員しょくいんの日頃ひごろの研修けんしゅうも必要ひつようだ」と指摘してきしています。

住宅じゅうたくの被害ひがい認定にんてい調査ちょうさについて、日本にっぽん弁護士べんごし連合れんごう会かいで災害さいがい復興ふっこう支援しえん委員いいん会かいの副ふく委員いいん長ちょうを務つとめる永野ながの海うみ弁護士べんごしは「住宅じゅうたくの専門せんもん家かではない自治体じちたいの職員しょくいんが行おこなうにはあまりにも複雑ふくざつかつ高度こうどで課題かだいがある」と指摘してきします。

永野ながの弁護士べんごしによりますと、再さい調査ちょうさに建築けんちく士しが関かかわっている自治体じちたいもあるということで「被害ひがいについてマニュアルにとらわれずに判断はんだんができるので、被害ひがいの実態じったいにあった判定はんていにかなり修正しゅうせいされている」と話はなしています。

永野ながの弁護士べんごしは、被災ひさい者しゃが納得なっとくできる適正てきせいな認定にんていが増ふえれば被災ひさい者しゃにいろいろな支援しえんがもたらされるだけでなく、繰り返くりかえし調査ちょうさする必要ひつようが無なくなることで自治体じちたいの負担ふたんも減へらすことができるとしています。

そのうえで「住民じゅうみんと自治体じちたいが一緒いっしょになって適切てきせつな判定はんていに変かえていくという姿勢しせいが必要ひつようだ」と話はなしています。

認定にんてい調査ちょうさの今後こんごについて永野ながの弁護士べんごしは「災害さいがいが起おきると自治体じちたいはどうしても混乱こんらん状態じょうたいとなり、職員しょくいんも心身しんしんが限界げんかいの状態じょうたいの中なかで進すすめた作業さぎょうを軌道きどう修正しゅうせいすることは難むずかしい。自治体じちたいどうしで連携れんけいをしながら調査ちょうさの難むずかしさやうまくいった点てんを共有きょうゆうすることが重要じゅうようで、職員しょくいんの日頃ひごろの研修けんしゅうも必要ひつようだ」と話はなしていました。

内閣ないかく府ふ “再さい調査ちょうさが可能かのう 被災ひさい者しゃに周知しゅうちを”

一方いっぽう、被害ひがい認定にんていの再さい調査ちょうさについて被災ひさい者しゃが詳くわしく知しらないケースがあり、行政ぎょうせい機関きかんからの周知しゅうちや説明せつめいのあり方ありかたも課題かだいになっています。

住宅じゅうたくの被害ひがい認定にんてい調査ちょうさの指針ししんを策定さくていしている内閣ないかく府ふは、被災ひさい者しゃの迅速じんそくな生活せいかつ再建さいけんを行おこなうための制度せいどだが認定にんていによって支援しえん内容ないようが大おおきく変かわるため、再さい調査ちょうさが可能かのうであることを被災ひさい者しゃに十分じゅうぶんに周知しゅうちすべきだとしています。

また、被災ひさい者しゃから認定にんていへの理解りかいを得えることが重要じゅうようであり、調査ちょうさ結果けっかの資料しりょうや写真しゃしんなども活用かつようし丁寧ていねいに説明せつめいするよう自治体じちたいに通知つうちしているとしたうえで、「国くにとしても被災ひさい者しゃに制度せいどの内容ないようがきちんと伝つたわるよう工夫くふうしていきたい」としています。