この法案は、イギリスのイングランドとウェールズで、余命6か月未満と診断された成人が医師2人と裁判官の承認を得た上で、薬物の投与などによって死を選ぶ権利を認めるとするもので、議員立法の形で提出されました。
29日、議会下院で行われた採決の結果、賛成が330、反対が275の賛成多数で法案は可決され、成立に向けて前進しました。
成立には、2回目の採決を経て上院での審議を通過する必要があります。
イギリスでは、2015年に同じような法案が議会で否決されましたが、今回、世論調査で法案を支持すると回答した人は7割以上に上っています。
欧米では、終末期の患者は苦痛に耐え続けるのではなく、尊厳を保ったまま最期を迎える権利があるとして、アメリカの一部の州やカナダ、それにスイスやスペインなどでこうした「死を選ぶ権利」が法律で定められ、法制化を議論している国も相次いでいます。
一方、こうした動きに対しては、高齢者や障害者などが周りに介護や経済面の負担をかけないようにと死を選ぶことにつながるおそれがあるなどとして、反対の声も上がっています。
議会前 賛成派と反対派 それぞれの立場で訴え
ロンドン中心部のイギリス議会の前では、議員たちにみずからの声を直接届けようと、法案に賛成と反対、それぞれの立場をとる合わせて数百人が集まりました。
賛成派が掲げたプラカードには「幸福な人生には、幸福な死を」などという主張が、反対派のプラカードには「死ぬためではなく、生きるための支援を」などという訴えがそれぞれ書かれていました。
法案に賛成している33歳の男性は、母親が闘病の末にことし自殺し、みずからも同じ遺伝性の病気と診断されているとした上で「私はこの病気のせいで、いつか自分自身でなくなってしまうと思う。そのとき私はみずからの命を絶つことに恥じらいも恐れもない。壊れた人間になってしまうよりありのままの私として、自分の意志でこの世を去りたい」と話していました。
一方、法案に反対する、車いすに乗った20代の女性は「多くの人は、障害者の人生には価値がなく私たちは苦しんでいるに違いない、死なせてあげるのは親切なことだと考えているようだが、私たちは死にたくない。ほしいのは、生きるための支援だ」と訴えていました。