長田区のJR新長田駅の南側の地区では、阪神・淡路大震災で建物のおよそ4分の3が全壊、または全焼となりました。
震災発生の2か月後から44棟の建物などを整備する再開発事業が行われてきましたが、土地の買収が難航したことなどから計画が遅れ、30年近くたった10月末、最後の1棟が完成しました。
これを記念して11月30日、地域の公園で式典が開かれ、神戸市の久元市長は「思ったとおりに再開発が進んでこなかったことは事実なので、きょうの日を迎えられたのは感慨深く思う。これからも新長田の活性化に全力で取り組んでいく」とあいさつしました。
そして、地元で活動するダンスグループが岩手など三陸地域に伝わり、災いを避ける願いが込められているとされる、民俗芸能の「虎舞」を披露しました。
再開発した地区にある商店街でお茶の販売店を経営する伊東正和さんは、「新たに移り住んだ人も、かつて被災した商店街の人たちもともに笑顔になれるような街づくりをこれからも進めていってもらいたい」と話していました。
新長田地区再開発とは
大震災で長田区では921人が亡くなり、全焼した建物はおよそ4800棟に上りました。
このうち、ケミカルシューズの工場や木造住宅が多く建ち並んでいた新長田地区では、街の中心となっていた商店街が全焼するなど、7割余りの建物が失われました。
神戸市はこの地区の復興を最重点に掲げ、行政主導で大規模な再開発に乗り出します。
総事業費はおよそ2277億円で、当初2003年度に完了する計画でしたが、土地の買収が難航したことなどから、終了のめどが立たない状況が続きました。
神戸市は4年前の2020年に事業の検証報告書をまとめ、震災前の商店街の地権者のうち戻ってきた人が半数にとどまったことや、事業の収支が全体で300億円余りの赤字になったことなどをあげ、大規模な計画に行政内部でブレーキをかける動きはなかったと総括しています。
神戸市は地区に公的な施設を移転させることで、人を呼び込みにぎわいを取り戻そうとしていて、およそ1000人が働く市と兵庫県との合同庁舎を5年前に完成させたほか、年間2万人が利用してきた外国人支援の拠点「神戸国際コミュニティセンター」を3年前に移転オープンさせました。
再開発が長期化する中で地域を離れる人も相次ぎましたが、神戸市内の市街地への利便性が高いことなどから最近ではベッドタウン化が進み、2024年8月時点の居住人口は6131人で、震災前のおよそ1.4倍になりました。
昼間の人口も震災前の水準に戻りつつありますが、これまでに整備されたビルでは売れ残って空いている商業スペースもあり、引き続き地区の活性化に向けた取り組みが課題となっています。